『DNA解析と「アイヌ民族否定論」―歴史修正主義者による先住民族史への干渉』という論文を『解放社会学研究』35 (2022) pp.7-32に発表したところ、予想外の反響をいただき、その多くが肯定的なものでした。もちろん、すべてが肯定的というわけではなく、特に問題とした小野寺元道議が以下のようなツイートをしたので紹介します。
せっかく「北海道議会での北海道の答弁」とありますので、議事録を見てみるのが一番わかりやすいですね。以下に引用します。
これは論文でも引用しましたが、北海道の答弁は、アイヌが縄文人の末裔であることを前提にして、「単純な子孫ではない」と述べています。つまり、オホーツク文化の担い手であった人々の遺伝子「も」アイヌにみられるということを意味します。しかし、それに対して「アイヌの祖先が縄文人の祖先ではないというのが最近の一般的な学説」と小野寺元道議が主張しているわけです。論文では、実際にはそのような「最近の一般的な学説」は存在せず、的場光昭医師によって引用を一部省略することにで、本来の学説とは反対の主張になるように改竄されたものであることを、引用文と被引用文を比較することで示しています。
省略部分をよく見ると、本土日本人の影響として表れるハプログループはDであり、同書には「Dという日本人に一番多いタイプは、渡来系弥生人にさらにたくさん出てきます。(p. 41)」 「このM7aとN9bは日本では非常に古い、縄文時代から日本にあるタイプだったという予想がつきます。(p. 39)」という説明とも符合します。
また、「ウポポイは改修されて」云々というくだりについては、国立アイヌ民族博物館の公式サイトにお問い合わせ・よくある質問のQ4に答えが書いてあります。
「あんなクソ論文」呼ばわりされていますが、具体的にどこが「クソ」なのかといえば、小野寺元道議の詭弁が白日の下にさらされたからなんでしょう。論文は大学リポジトリからダウンロードできますので、ぜひ一度お読みください。
2022年7月 旭川医科大学物理学教室 准教授 稲垣克彦