「ベランダの隣人」
僕の住んでいるマンションはベランダがある。
一人暮らしには似つかわしくないくらい、ベランダが大きい。
そして、日当たり抜群で
眺望も良い。遠くに色々な建造物が見える。
夕焼けなどの時には写真を撮ったりなんかもする。
そこが気に入った1つでもあった。
しかし、不思議なことに隣のベランダが透け透け。
どういうことかというと、通常はマンションのベランダは緊急事態に備えてぶち抜けるようになっていて、そこはグレーっぽいプラスチックのような壁になっているかと思うけど、私が住むマンションのそれは鉄のアミアミで透け透けの仕切りとなっている。
当初から気にはなっていた。
これ設計した人は何を思ってこうしたのだろうかと、
というのは、やっぱりベランダに出ていると、どうしたって隣人も出てきてバッティングしてしまう。
あるいは、私はやらないが、相手がバーベキューなどしていると煙も入ってきてしまう(過去一度だけあり)。
なんだかなあと思いながらも、ここ自体には気に入ってもう長いこと暮らしている。
私は一人なので、ベランダにチェアと小さなテーブル。あとはチンニングマシンを置いている。時々筋トレをしている。
あと、照明が好きなのでランタンを5つ並べている。夜が来ると自動的に明かりがつくようになっている。
正面もマンションなので、夜見たら綺麗なのではないかと思ってやっている。
隣にはさまざまな人が来る。
以前は、午前に必ず縄跳び、夕方にはゴルフクラブをスイングする学生?社会人?男性が住んでいた。
決まった時間に音がしてくるからすぐにわかる。
ピシピシとかビュンとか、そんな音。
そして、私の部屋は不整形になっていて、角の出っ張った部分にテレビがあり、その前にソファーが置いてあるから、テレビをみているとちょうど私の後頭部を向こうは見ているという感じ。
まあ広いから相手と距離はある。
でもなんとなくバツが悪くてカーテン閉めたり、別の場所へ行ったりする。
多分、向こうもそんな感じ。
洗濯物を干すときに完全にバッティングした時など、私は挨拶したいけど、今は昭和じゃないし、仮に話しかけて変なややこしい人だったら嫌だし、向こうもそう思っているかもしれないし、など考えていたら、挨拶することはなかった。
その後その人は引っ越し、次に来たのはカップル?あるいは夫婦?だった。
この二人が結構大変で、ベランダにテーブルを出して結構頻繁に日光浴や食事をしていた。
それ自体なんら問題はないんだけども、結構大きな声で話すもんだから、隣人としてはきつかった。上層階の人もすこし困っていたかもしれない。
でも、楽しそうにやっていた、そのカップル?夫婦?は半年程度で転居していった。
次に来たのは若い学生。
最初来た時は友達数人と来てたので、ああ、これから大変だなと思っていたのだが、引っ越しを手伝っただけのようでその後は来ない。
音も立てないし、タバコも吸わないようで安堵していたら
ある晩ふとベランダを見たら、キャンプ?テント?をしている。
小さいテントを張って、中からボやーっとあかりが見えている。
外はもう十一月下旬なので息が白いくらい。
モクモクと白い煙も出ていたから何か食べているのかなと思う。
良いなあと思った。
最近は流行っているらしいけど、その発想はなかった。
そうか、ベランダでキャンプかあ。
誰に迷惑をかけるわけでもなく、彼は夜を楽しんでいる。
これで私もやると、お隣さんがマネをしたなどと思われるのも厄介なのでやらないが、正直やってみたいなあとも思った。
楽しみ方はいろいろあるもんだなと思った。
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