見出し画像

大企業の障害者雇用施策に「なんか違うなぁ」と思ってしまう理由

去る6月1日、ついにJPTが通算対象としているグループ各社と算出した障害者雇用率が、法的要件である2.3%を超えました。

これまで障害者雇用に関するアレコレを発信してきましたが、「んなこといっても法定雇用率超えてないじゃん」と自分で自分を卑下しながら、それでも正しい方向に努力している!と自分に言い聞かせてやってきました。

そんな日々とはもうおさらば!ということで、今日は日本の障害者雇用について、思うことがあるのでそれを書いていこうと思います。

(文責:成川)

今日本の障害者雇用で起きていること

僕が持っている、日本における障害者雇用のイメージは、大企業頑張りなさい、です。
そして大企業は、ルールに則って、大企業らしく障害者雇用をしています。
その結果、なんか違うなあ、という状況になっています。

大企業頑張りなさい

民間企業の責任は、障害者雇用促進法にて定められているのですが、その適用対象は、従業員数が43.5人以上の会社に限られています。

これはどうやって求められるのかというと、100/2.3でして、つまり法定雇用率を従業員数に掛けても「1未満」にしかならない会社は雇用義務はありませんよ、ということです。まあ、わかります。

次に、法的要件を下回った場合のペナルティですが、不足する障害者数に応じて支払う1人につき月額5万円の障害者雇用納付金があります。これは採用や雇用コストを考えると、誤解を恐れずいうと安いもんです。ただし、次の条件を満たしてしまうと行政指導、改善がなされない場合は企業名が公表されてしまいます。

  1. 障害者の実雇用率が全国平均実雇用率未満であり、かつ、不足数が5人以上である企業

  2. 法定雇用障害者数が3~4人の企業であって、障害者を1人も雇用していない(0人雇用=実雇用率0%)のもの

  3. 不足数が10人以上の企業

    ※厚生労働省「雇用率達成指導」から引用

そうなってくると話は別で、企業イメージを損ねてしまうため、痛くも痒くもないとは言ってられません。

つまり、2.の条件に当てはまるためには最低でも従業員数130人が必要ですし、それだけ従業員がいたらこのご時世誰か一人は障害を持っていてもおかしくはないので恒常的に一人も雇用できない、という状況はあんまり考えにくいわけです。

ということで、最も障害者雇用に真剣にならざるを得ないのは、従業員数が多くて、企業イメージが大事(損ねたときのインパクトが大)で、1.の条件に当てはまるような大企業、という訳です。

大企業がやっていること

次に、大企業らしい障害者雇用について、過去の私たち(JPTではなく本体)の経験を元に、どんな力学が働いているのかを解説します。

皆さんが大企業の人事採用担当なら、どんな障害者雇用をするでしょうか。

大企業は、その企業ブランド・知名度によって大量に入社希望者をかき集められます。一度求人を出すと、どこからともなく応募通知メールがわんさか飛んでくる。人材紹介会社の営業さんから「良い人いますよ!是非紹介させてください!」と飛び込みの営業が入る、などなど。ボケーっとしていても応募は集まります。

上司からは、会社の社会的責任を果たすため早急に採用するようプレッシャーを受けながら(当然上司はそのまた上司に同じように圧をかけられながら)、履歴書や職務経歴書に目を通します。

ポイントは、今の会社でどんな仕事をしているのか、どんな障害を持っているのか。つまり、ウチの会社に入ったときにこの部署でこの仕事を任せたらいいんだな、というのが明らかであるかどうか、です。

そういう思考で採用活動をしていくうちに、「今他社で戦力として働けている人しか採用しない」という大前提が出来上がります。だってそれで採用できるんですもの。当然ですよね。

なんか違うなあ、の意味

障害者雇用に積極的にならざるを得ない大企業たちが、今他社で戦力として働けている人しか採用しないことで、何が起きるのか。

それは、「転職斡旋業者が儲かるだけの、就職つよつよ障害者の会社間移動」です。

これ、日本全体における障害者雇用率を見ると、今働いている障害者が転職をしたところで、なにも変わっていないんです。

転職してもらった企業がプラス、転職された企業がマイナス、で、トントン。もちろん、相当長期で考えたときには、転職を活性化させることで障害者雇用のベストプラクティスを明らかにし、消極的な企業を淘汰する作用をもたらすかもしれませんが、かなり遠回りな気がします。

なので、本当に社会課題である障害者雇用を解決したいのであれば、アプローチは2つしかなく、①今働いていない障害者を採用するか、②今雇用している障害者社員に長く働いてもらう、しかないのです。

そのどちらもしていない会社に「我が社は障害者雇用に積極的です!」って言われても、いや、ただ採用競争力があるだけでしょ、って思ってしまう。これが、「なんか違うなあ」の理由です。

最後に、宣言!

で、JPTはどうなのかというと、今まで3期、24人の障害者を採用してきましたが、全員「働いていない人」でした。

そして、今まで本社がやってきた方法では活躍どころか採用すら出来なかったかもしれない人材が、本社のDXを推進するパワーになってしっかり貢献出来ています。

通算対象各社での障害者雇用率が法定を超えたことで、ようやく胸を張って言えるようになりました。

我々は日本一の特例子会社を目指し、これからも「障害の有無に関わらず、誰もが対等に働ける社会の実現」に向けて歩みを進めます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?