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アルゼンチンでリバタリアン大統領が誕生するかも!?

こんにちは。自由主義研究所の藤丸です。

南米のアルゼンチンの大統領選は、今月19日に決選投票が行われます。
この選挙では、与党連合候補であるセルヒオ・マサ経済相(51)と、野党のハビエル・ミレイ下院議員(53)による接戦となる見通しで、世界中の自由主義者から注目を集めています。


南米大陸の図。ピンク色がアルゼンチン

今回はこの件について、日本在住アメリカ人の自由主義者の仲間からの寄稿です。

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アルゼンチンでリバタリアン大統領が誕生するかも!?


1,ハビエル・ミレイって誰?

今年、アルゼンチンの大統領選へ立候補することで、リバタリアンのハビエル・ミレイは世界の自由主義者から注目を浴びるようになりました。
ミレイ氏はオーストリア学派の経済学者、著者、評論家として活躍してきたアルゼンチン人です。「自由前進」(La Libertad Avanza)という政党に所属し2021年からアルゼンチンの下院議員を務めています。
ミレイ氏の面白いところは、自由主義よりの政治家というよりは、ミレイ氏自身が徹底した自由主義者だという点です。
ミレイ氏は、アルゼンチンでは非常に人気があります。

ミレイは現代史初のリバタリアン大統領になる可能性があります。

ハビエル・ミレイ

“Liberalism is defending the right to life, liberty, and property. The institutions of liberalism support private property, labor mobility, the division of labor, social cooperation, and free markets with limited state intervention. It is serving your fellow neighbor by offering better goods and services. This is what we believe.”
「自由主義とは、生命、自由、財産に対する権利を擁護することです。自由主義の機関は、私有財産、労働の流動性、分業、社会的協力、限定的な国家介入のみによる自由市場を支持します。より良い商品やサービスを提供することで、隣人に奉仕することです。これが私たちの信念です。」

ハビエル・ミレイ(FEE.orgから引用)


2,資本主義で豊かになり、社会主義で貧しくなる

ミレイ氏の政策などを触れる前に、一旦アルゼンチンの現状を簡単に紹介します。

20世紀初頭、アルゼンチンは世界で最も裕福な国のひとつでした。

ハーバード・ビジネス・スクールの記事を引用すると、

“In 1913, it was richer than France or Germany, almost twice as prosperous as Spain, and its per capita GDP was almost as high as that of Canada.”
「1913年には、アルゼンチンはフランスやドイツよりも豊かで、スペインの2倍近く繁栄していた、 一人当たりのGDPはカナダとほぼ同じだった。」

しかし、1946年にフアン・ペロン氏が大統領に就任してから、アルゼンチンはどんどん社会主義や計画経済の政策を活用しました。
ペロンの政治思想である「ペロニズム」は国家社会主義に非常に似ています。
ペロンが退任した後でも、社会主義の政策が続きました。
その結果、アルゼンチンは豊かで独立性のある国から今のアルゼンチンになりました。2022年にアルゼンチンの名目一人当たりGDPは僅か13,686ドルだけでした。


ヘリテージ財団の経済自由ランキングによると、アルゼンチンの経済的自由度は非常に低くて、176カ国中144位です。
特に低く評価されている分野は「財産権」です。
政府は失業や物価を安定させるために色々な介入をしたり、中央計画をしています。また、国債の破綻、140%インフレ率、そして40%に近い貧困率を抱えています。政府支出や国債を賄うために紙幣を発行しています。

自由主義者にとって、アルゼンチンがこうなったのは当たり前のことです。政府の経済介入の増加は必ず自由を減らし、富を破壊するからです。


3,アルゼンチンの選挙について


アルゼンチンの大統領選挙の仕組みを簡単に説明します。

今年の8月13日に予備選がありました。
10月22日の総合選挙に出るために予備選で最低1.5%の票を獲得する必要があります。そして総合選挙では、候補者は、45%以上の得票率を獲得するか、40%の得票率を獲得しながら2位の候補者に10%以上の差をつけることで、大統領選に勝利することができます。

予備選で、ミレイは30%の得票率で1位となりました。2位は21%でした。
10月の総合選挙では、ミレイは2位でしたが、1位の候補は勝利をすることができなかったので11月19日に決戦投票があります。
決選投票は、ミレイとセルヒオ・マサの接戦になる見込みです。

4,自由主義のヒーロー


ハビエル・ミレイの成功に興奮すべき理由はいくつかありますが、簡潔にいうと、ミレイは本格的なリバタリアン自由主義者だ、ということです。
政府の規模を少し減らし、僅かな減税を行い、自由主義のセリフをたまに発言するような人ではないのです。

ミレイはあらゆる国家主義(statism)を嫌い、政治家を「寄生虫」と呼び、「課税は盗みである」「政府は泥棒よりひどい」と主張しています。
「アルゼンチンの政府がアルゼンチンの貧困の原因だ」「国債は将来の課税だ」などの真実を発言しています。

減税と規制緩和はもちろん、政府の規模を大幅に減らして、政府が国民をコントロールするための最も強力な手段のひとつを放棄させたいのです。最も強力な手段のひとつとは、「通貨膨張(紙幣の発行)」です。

CATO研究所の記事からミレイの公約からいくつかの政策を以下に取り上げます。

● 連邦政府機関25のうち17を廃止
● すべての国営企業を民営化に
● 貿易障壁(関税や貿易規制)を廃止
● 政府支出の15%削減(対GDP比)
● 補助金や価格統制を撤廃

ミレイは、アルゼンチンの中央銀行を廃止し、ペソに代わりアメリカドルを使用する「ドル化」を考えています。そうすれば、アルゼンチンのインフレ率は140%から4%以下(アメリカのインフレ率)まで即座に低下します。

なお、ミレイはただの理想主義者ではありません。上記の政策を段階的に実現していくつもりです。例えば、廃止する政府機関の官僚がいきなり失業の状態にならないように、先に減税や規制緩和で経済が繁栄できるようにしてから不要な機関を撤廃すると発言しています。

マスコミはよくミレイのことを「右派」「極右」「右派ポピュリスト」とレッテル貼りをしています。
しかし、ミレイは明らかに自由主義者で、右でも左でもないといえるでしょう。ミレイは個人的にユダヤ・キリスト教の価値観を持っていますので、保守のリバタリアンと言えるかもしれませんが、欧米の保守よりも明らかに自由主義者です。日本の「保守」と比較すらできないほど、自由主義よりです。

ミレイは完全に自由主義を理解し、一般大衆に自由主義を支持させる能力に長けています。
我々自由主義者はミレイの今までの成功から見習うべきことがたくさんあります。
政策を通す前に当選しなければならない。当選するために、国民を納得させなければならない。ミレイは多くのアルゼンチン人が自由主義と自由経済を支持するようにしました。
大統領選で勝てば、自由主義の大勝利だと言えるでしょう。
しかし、落選しても、ミレイが率いている運動はまだ終わりません。
世界の自由主義者の力になり、インスピレーションを与えることになるでしょう。

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