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変動する市場に即応する!木脇産業の成長戦略・下

前回からつづく)木脇産業(株)(宮崎県都城市、木脇義貴・代表取締役社長)の成長力の源泉は、変動するマーケットへの即応力にある。同社は、「需要は変わる」(木脇社長)ことを大前提に、従来の延長線上ではない新機軸を打ち出し続けることで、業容を広げてきた。今年もまた、新たな変貌を遂げようとしている。

原木市場の“未来形”、月7千m3のストックヤード

「木材のデパート」である木脇産業の強味は、顧客からの注文にきめ細かく対応できること。その根幹となるのは、原木(丸太)の確保。木脇社長が口を酸っぱくして言い続けている、製材経営の要諦だ。
そこで遠藤教授は、同社の心臓部ともいえる原木のストックヤード(土場)を、山下史洋・同社山林部長とともに訪れた。最新の自動選別機を擁するストックヤードでは、月間約7000m3の原木が捌かれるという。

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ストックヤードに集荷された原木(丸太)には伐採箇所などが表示されている

遠藤教授
木口に伐出業者名などが貼ってあるが。

山下部長
誰がどこで伐り、いつ運んできたかが一目でわかるようになっている。原木のトレーサビリティ(生産履歴)に対応し、在庫管理も効率化できる。
ここに入荷した原木の検収や選別は、すべてその日のうちにやる。100%弊社グループのトラックで集めているので、伐出現場の状況も常に把握できる。集荷範囲は、片道100㎞圏内だ。

遠藤教授
これだけの原木をすべて自社で製材しているのか。

山下部長
弊社から原木を仕入れる製材業者や住宅メーカーもある。在庫情報が整備されているので、わざわざストックヤードまで足を運ばなくても、注文1本で希望の原木を届けられる。現品熟覧の取引は過去の話だ。

遠藤教授
原木市場の〝未来形〞を示しているようなストックヤードだ。その基盤として、専属の素材生産業者の存在は大きい。原木の買取価格はどのようにして決めているのか。

山下部長
原木市場の価格を参考にしているが、それほど上げたり下げたりはしない。安定供給ができる信頼関係をつくることが第一だ。決済については、月2回締めの現金2回払いとし、山床からあらゆる原木を直送してもらっている。弊社の製材ラインにはまだまだ余力があり、2シフト、3シフトにすれば、もっと多くの顧客ニーズに応えられる。そのためにも、原木の確保は生命線であり、今年中にストックヤードを拡張する。

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原木の集荷状況を説明する山下山林部長(右)、後ろは自動選別機

20年ぶりにチッパーを新調、D材まで使い切る

木脇産業の製材工場は、一見すると雑多な印象を受ける。多種多様な製材品を人手をかけて生産するラインになっているからだ。だがこれが、同社の強味である多品種大量生産を可能し、集荷した原木をあますところなく使いきる秘訣となっている。

遠藤教授
年間約15万m3もの原木を扱うと、相当量のB材・C材が出る。どうしているのか。

山下部長
自社で消費するほかに、新栄合板工業(株)(熊本県水俣市)や(株)伊万里木材市場(佐賀県伊万里市)などともつきあいがあるので、利用先には困らない。C材以下のD材なども山から持ってきている。昨年、20年ぶりにチッパーを新調した。もちろんこの工場も、製材廃材は乾燥機の熱源や自社発電の燃料にするなど、ゼロエミッションを目指している。チップもバークもすべて使えるようになっている。

遠藤教授
自慢の重量選別による乾燥システムは〝完成形〞になったとみていいか。

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タイプ別に23基の乾燥機があり、今年さらに2基を導入する

山下部長
高品質のスギKD(人工乾燥)材を安定的に生産するノウハウは身につけた。今年は、増産ニーズに対応するため、新たに2基の乾燥機(容量100m3)を入れる計画だ。回りの製材工場などからスギの乾燥を頼まれることも多いので、受け入れ体制を強化していかなければならない。

中小工場のレベルアップは3万m3がボーダーライン

ここまでみてきたように、木脇産業は、単なる優良製材工場という存在に止まらず、「木材の集出荷センター」であり、「高付加価値化センター」としての機能を果たし始めている。したがって、木脇社長と後継者の木脇桂太郎専務には、自社の将来だけでなく、国産材業界全体の今後を見通した経営手腕の発揮が求められる。2人の目に、現状はどのように映っているのか――。

遠藤教授
毎年500〜600の製材工場が廃業している。中小工場のレベルアップを図ることが急務だ。

木脇社長
経営が苦しいから、「乾燥材」と謳いながら安売りしている。原価意識が余りにも薄い。日本にはまだ8000くらいの製材工場があり、国際的にみても多い。もっと納入先との連携を図り、高品質で安定供給できる体制をつくっていかなければ、国産材価格の上昇は望めないだろう。

木脇専務
大工・工務店のシェアを奪っているハウスメーカーと取引するためには、一定の量をこなさなければならない。具体的には、年間3万m3以上の製材量があり、売り先をしっかり確保していることが必要になる。このレベルの工場は生き残っていけるだろうし、山元への利益還元も可能になる。

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木脇専務「スギのよさを全国に伝えたい」

スギの販路開拓に好機到来、首都圏に再挑戦する

遠藤教授
営業力に欠ける中小工場が、新しい売り先を見つけるにはどうしたらいいか。

木脇専務
今は、スギという素材を売り込むには非常にいい時期だ。住宅を建てるには100種類くらいの木材が必要だが、外材で手当てすることは難しくなっている。柱だけでなく、胴縁でも垂木でも品質の高いスギ商品ならば受け入れてもらえる。弊社も、今年は東京を中心とした首都圏に出ていきたいと考えている。かつては東京に柱だけしか出荷できなかったが、ようやく羽柄材とセットで供給できる体制ができた。運賃コストなどの負担はあるが、新しい営業戦略が立てられると思う。

木脇社長
いつも社員に言うのだが、我々ほど恵まれた業種は少ない。原木でも製材品でも、雨ざらし日ざらしで6か月置いておいても使ってもらえる。生鮮食料品など2〜3日でダメになる商品とは全く違う。需要はどんどん変化していくので、それに対応できる国産材工場を目指さなければならない。製材業が地域企業として成り立つようにならないと、いい人材も集まってこない。そこを目標に、弊社ももう一段のレベルアップを追求していきたい。

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木脇社長「製材業は地域企業として成り立たなくてはならない」

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ここ数年の国産材製材大手の規模拡大には目を見張るものがある。年間丸太消費量が10万m3を超す大型製材工場は10社前後に達する。90年代初め、3万m3(10万石)が大型工場といわれていた時期から比べると隔世の感がある。木脇桂太郎専務が指摘するように3万m3が今後の生き残りの1つの目安になるだろう。名実ともに国産材製材のトップを維持している木脇産業で、特に異彩を放っているのが丸太の集荷・選別だ。年間丸太集荷量は15万m3に達する。このうち自社製材分が12万m3。つまり3万m3の丸太は同業者や構造用集成材ラミナ挽きの工場へ販売している。森林組合系統のちょっとした共販所と十分に肩を並べる規模であり、今後の国産丸太の流通をリードする存在となってきている。

(『林政ニュース』第357号(2009(平成21)年1月28日発行)より)

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