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既存流通に頼らない営業力で躍進・外山木材

宮崎県都城地区は、丸太消費量が40万㎥に達する九州最大のスギ製材産地である。「御三家」の木脇産業(株)(約12万㎥)、外山木材(株)(約7万㎥)、持永木材(株)(約5万㎥)を筆頭に、4〜5万㎥クラスの量産工場が轡を並べるように稼働している。
都城産地は、1980年代に入って急速に浮上し始めた。大量に出材されるスギ間伐材製材で、まず地場市場から米材を駆逐。次いで、隣県鹿児島港の外材製材との競争に勝利、さらに沖縄市場に参入していた日田材を蹴散らした。この結果、「宮崎―鹿児島―沖縄ルート」の新たなマーケットを獲得。絵に描いたような国産材時代を実現した。その都城産地では、年々増加する中目丸太や尺上丸太を原料に、業界の再編が模索されている。その1つの方向を示唆しているのが外山木材(宮崎県都城市、外山正志・代表取締役社長)だ。同社が目指す製材業の未来形とは何か。遠藤日雄・鹿児島大学教授が、外山社長との「対論」を通じて明らかにする。

「足場板製材日本一」を10年で達成、新規顧客拡大

  外山木材は本社工場(足場板)と今町工場(柱角とラミナ)の2つに分かれており、両工場で年間7万5000㎥の丸太を製材している。

遠藤教授
  外山木材といえば「足場の外山、柱の外山」として市場で評価が高い。

外山社長
  足場板製材では、弊社は後発だった。宮崎、大分に力のある足場製材が数社あったが、「やるからには日本一になろう」と社員と誓い合った。10年で実現できた。それまでの足場板は問屋納めが主流だったが、弊社では新規開拓でリース会社やゼネコンに納めた。これが功を奏した。

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外山正志・外山木材(株)代表取締役社長

遠藤
  既存流通に依拠しない新販路開拓がカギというわけだ。国産材の販路拡大には大いに参考になる。

外山
  そのためには、高い商品力、納品力、品質力、提案力が求められる。

次は「KD柱角で日本一」が目標、直接販売が中心

  今町工場の柱製材用のノーマンツインバンドソーは、1秒で19本の柱角が挽けるというスグレもの。太鼓挽きされた丸太が、そのまま横の製材機に反転してバトンタッチし、さらにツインバンドソーで柱角に製材される。全国に2機あるのみ。ここで製材された柱角が1990年代前半、東京・首都圏市場へ大量に販売され、米ツガ柱角との競争で優位にたったことは業界の語り草になっている。

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19秒で1本の柱角を製材するノーマンツインバンドソー

遠藤
  現在、柱角はどれだけ製材しているのか。

外山
  径20㎝下の丸太で1日約1400本の柱角を製材している。人工乾燥機は12基。大部分がKD(人工乾燥)材だ。今後の弊社の目標は「KD柱角で日本一」になることだ。

遠藤
  外山木材は都城の製材工場には珍しく、九州外へ販売している量が多い。

外山
  東京・首都圏、東海、北陸、中国地方などへ販売している。ここでも既存流通には依拠せずに、プレカット工場と地域ビルダーへの直接販売が中心だ。

遠藤
  製品市売市場依存から脱却したというわけか。

外山
  そういうことだ。相手に価格をつけてもらわないというのが弊社の基本的な考え方。できるだけエンドユーザーに近いところへ営業することで、最新の情報や市場の変化が掴める。

遠藤
  そうした営業力はどこで磨きをかけるのか。

外山
  弊社が取引している地域ビルダーには共通点がある。第1は年間100棟以上の住宅建築実績をもっていること、第2は木材に対して限りない愛着をもっていること、第3は経営内容が良好なことだ。逆にいえば、それだけ製材メーカーに対する要求は厳しい。プレカット工場も同じだ。これをクリアしながら磨きをかけてきた。

新生産システムに参画、大径材製材に挑む

  九州の丸太市場では、ここ数年、中目丸太や尺上丸太が急速に増加している。径40㎝以上の大径丸太も珍しくない。この丸太を効率よく、しかも時代のニーズに見合ったかたちで製材していくためにはどうすればいいのか。全国の国産材製材の課題を先取りしたかたちで、都城産地の製材が展開している。

遠藤
  外山木材は「新生産システム」に参画している。

外山
  5、6年前から製材経営が安定してきたし、今町工場は一応償却が終わったので、もう一踏ん張りしようということで独自の製材規模拡大計画を練っていた。プランの概略ができた頃、「新生産システム」の話があった。タイミングがよかったので乗ったというのが実状だ。来春には、新工場建設に着手する。

遠藤
  計画の内容を披露してほしい。

外山
  弊社は足場板製材をやっているので径24㎝上と尺上丸太の製材力ではダントツだと自負している。この大径丸太から、足場板とラミナを製材し、背板(「側」)からは間柱や垂木などの小割や2階の間柱、筋違い、根太などの平割を挽くつもりだ。

遠藤
  大径材製材で悩ましいのは「側」から何を挽くのかだが、スギの小割や平割の需要はあるのか。

外山
  九州ではかなり多く使われている。九州の内外市場の違いを見極める必要がある。

遠藤
  ラミナの売り先は。

外山
  2、3年前から銘建工業(株)(第323号参照)へ販売している。今後の大径材製材の中心はラミナになるのではないか。末口径24㎝、長さ3mの丸太は市場に流通していないだけに、その獲得競争は熾烈を極めるだろう。

4万㎥規模の新工場建設、販路なき量産はダメ

遠藤
  新工場の規模はどの程度か。

外山
  1日140㎥の丸太消費計画だから、月23日稼働として年間約3万8000㎥。近いうちに4万㎥は十分いけると思う。都城市郊外に土地を取得したので将来は2シフトも可能だ。

遠藤
  2シフトでかりに8万㎥になったとして、既存工場分を合わせると15万㎥を超すことになる。いったいどこまで増産するつもりか。

外山
  年間丸太消費量25万㎥、売上げ50億円達成が弊社の大目標だ。

遠藤
  南九州や北関東を中心にスギ製材の規模拡大が進んでいるが、スギ(とくにスギKD柱角)はプライスリーダーになりきれない。むしろプライステーカーだ。

外山
  たしかにKD柱角の供給量は増えているが、今はグリーン(未乾燥)柱角がKD柱角に置き換わっている過程だと思う。ホワイトウッド集成管柱との直接対決には未だ至っていないとみたほうがいいのではないか。

遠藤
  なるほど。一種の市場の棲み分けというわけか。でも、「新生産システム」の最終的な狙いは、製材規模の拡大によって国際競争力をつけ、外材との競争に勝つことだ。そのためには何が必要か。

外山
  繰り返しになるが、高い商品力、納品力、品質力、提案力をつけることだ。その上で、山側に対し、これだけの丸太の増産が必要だからこの価格で買うと説明すべきだ。何よりも、山側との信頼関係構築が不可欠だ。
 また、丸太の安定供給ができれば外材に勝てるというのは必要条件ではあっても十分条件ではない。販売力がなければ、量産しても在庫のヤマができるだけだ。徹底したマーケティングを行い、「売る力」を高めないと企業は永続しない。この点を十分に踏まえた戦略が必要だ。

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今町工場の稼働状況を説明する益留満正・外山木材専務(左)

『林政ニュース』第326号(2007(平成19)年10月10日発行)より)

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