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新春座談会「国産材時代」元年 価格上昇は本物か?(上)

新しい年が明けた。昨年は、「国産材時代」の幕開けを感じさせる1年であった。今年の課題は、それを受けて、「国産材時代」元年を実現する具体的な仕組みづくりに邁進することである。時代は、「国産材需要の拡大」という総論から、「自ら何をするか」が問われる各論の段階に入った。その中で、昨年中盤以降注目を集めているのが、国産材価格の上昇である。とりわけ、九州では、「材が足りない」という悲鳴にも近い声が聞かれる。そこで、国産材業界を牽引するトップリーダー4氏に、今後の課題と将来ビジョンを語り合ってもらった。


堀川保幸・中国木材(株)代表取締役社長
林雅文・(株)伊万里木材市場代表取締役社長(西九州木材事業協同組合代表理事)
山田壽夫・林野庁九州森林管理局長   
遠藤日雄・鹿児島大学農学部教授(司会進行)

集荷難続く、システム販売価格引き上げは画期的

遠藤教授
  この座談会では、日本を代表する国産材供給拠点となった中国木材伊万里事業所及び西九州木材事業協同組合(佐賀県伊万里市、第300・301号参照)と、同事業所の原木集荷機能を担う伊万里木材市場、さらに国産材の大口供給者である九州森林管理局の取り組みを踏まえて、将来に向けた現実的な戦略を考えたい。
  まず、昨年半ばから強含みで推移している国産材価格をどう見るか。これは一時的な動きなのか、あるいは長続きするものなのか。現場では、とくにスギ丸太が入手しづらくなっていると聞くが。
 
林社長
  製材事業を行っている西九州木材事業協組では、毎月2万㎥くらいのスギ丸太を必要としているが、伊万里木材市場の集荷実績は月1万2000㎥くらいだ。目標量までなかなか到達できないところに問題がある。

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遠藤日雄氏

堀川社長
  2シフト体制の西九州木材事業協組がフル稼働できれば、製材などの加工コストを㎥当たり3000円以下に抑えられる計算でやってきた。だが、値上がりで材が少し他に流れたために、まだこのコストダウンが達成できていない。これは昨年の反省点だ。
 
遠藤
  九州森林管理局は、昨年11月にシステム販売によるスギ間伐材の売り渡し価格(山土場渡し)を㎥当たり500〜600円引き上げた(前号参照)。画期的な見直しだったと思うが。
 
山田局長
  昨年10月に堀川社長から製品価格を2000円上げるという話があった。そこで、システム販売の流通過程を分析したところ、原木で600円は上げられるという結論になり、林社長と交渉して売り渡し価格を引き上げた。このように、川下で得られた成果を山元まで具体的な金額で戻す交渉をしたのは初めてだ。是非このシステムをオープンにして、全国のモデルにしたい。 

切り捨て間伐ストップへ小径丸太の活用急げ

遠藤
  堀川社長は、九州内の伐採現場をつぶさに見られているそうだが、実態をどうとらえているか。
 
堀川
  山元に切り捨てられたままの間伐材を見ると、本当に情けなくなる。あれは小社で製造しているハイブリッドビーム(米マツとスギの集成平角)の材料に使える。何とか、全部引き受けられるようにしたい。切り捨て間伐は、二酸化炭素を放出するので地球環境の面からも問題が多い。スギの小径木を使いこなせるシステムをつくらなければならない。
 
山田
  システム販売の作業現場でも、径14㎝以上のスギしか搬出していない。径13㎝以下の丸太は山に残したままだ。これを活用できるようになれば、出材量が1割は増えるだろう。
 
遠藤
  林社長は山元の現状をどう見ているか。

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林 雅文氏

林 
   個々の事業体と協定を結んで安定的な集荷に努めているが、時々の相場の上げ下げで材の流れが左右される。山元側が1円でも高く売りたい気持ちはよくわかる。一方で、大型の加工工場が整備されて、国産材の需要が高まっている。したがって、市場に材は出ているが、以前よりは手に入りにくくなった。新しい流通ルートを確立するためには、材がまだ不足している。

山林労働者の不足深刻、外国人研修生の活用を

遠藤
  森林資源は充実してきているのに、出材量が足りない原因の1つに、林業労働者の不足という深刻な問題がある。
 
 
  我々の集荷目標である月2万㎥を確保するには、市場から調達するだけでは足りない。そこで、山の立木を直接買い付けて伐り出そうとしても、その作業をやってくれる人がいない。
  林材業界にとって困難な時代が長く続き、後継者の育成ができていないという問題がここで噴出してきた。明日から頼む、と言える作業集団がないと、国産材の安定供給体制づくりは難しい。
 
遠藤 
  堀川社長は、外国人労働者の活用を提言されているが。

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堀川保幸氏

堀川
  今は、外国人労働者の研修期間が1年しか認められていない。これを3年に延長してもらいたいと要望している。研修期間が3年になれば、受け入れ企業にとってはかなりの戦力になる。
  受け入れの対象国には、中国、フィリピン、ベトナムなどが考えられる。これらの国は、森林資源が不足している。だから、外国の技術者に日本に来てもらって、木を植えるところから、間伐、伐採までを研修してもらう。さらに、製材・木材乾燥・集成材などの加工技術も習得してもらう。これにも3年程度は必要だ。
  日本で植林から木材加工に至る最新の技術を勉強してもらい、それぞれの国で活かしてもらいたい。とくに、世界レベルのコストダウンを実現した日本の木材加工システムをマスターして、自国の山に収益を還元させる仕組みをつくってもらいたい。これが、地球環境を守る上でも、一番大切なことではないかと思っている。

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山田寿夫氏

山田
  日本が地球温暖化防止など環境問題の解決に向けて世界をリードする。そのためには、森林の循環システム、とくに人工林をきちんと利用して管理できるモデルを示さなければならない。石油エネルギーに依存しない、木質バイオマスを十分に活かした日本型循環システムをつくって、世界に広げていく。外国人研修生を安い労働力として期待するのではなく、日本型循環システムを世界に普及できる人材として育成するという視点での取組みが重要だろう。

日本型森林循環システムを世界に普及していく 

遠藤
  林業労働力も材価の問題も、日本国内だけを見て答えを探す時代ではなくなったと感じる。
 
堀川
  今の日本では、山なんてとか、製材工場なんてと敬遠する若者が多い。この分野の門戸を広げて、外国と日本の若者が一緒に山林作業や木材加工業に携わってもらい、環境にもいいし夢のある仕事だと理解してもらいたい。そのことが、日本の山の再生につながる。先ほども言ったように、切り捨て間伐材を利用すると同時に、それを受け入れる体制を整備することが大切だ。ようやく国産の丸太から、国際競争力のあるコストで製材品なり集成材なりをつくれるようになってきた。だが、「原木なくして製材なし」。原木が安定的に集荷できるシステムを急いでつくらなければならない。
 
山田
  システム販売の売り渡し価格を改定したのは、川上と川下が対等の立場で商取引できるようになったからだ。これは、林野庁が進めている「新生産システム」の目標でもある。今、全国各地で「新生産システム」が実行段階に入っているが、誰がどういう工夫をすればいいかがようやく見えるようになってきたのではないか。
  山に利益を戻すという「新生産システム」の仕組みは、世界の森林経営にも応用できる。まず、日本型森林循環のモデルシステムをつくり、それを他国にも広げて、世界の環境問題の解決に貢献するべきだ。
                      
(つづく)

『林政ニュース』第308号(2007(平成19)年1月10日発行)より)

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