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「(能登半島地震)政府の被災者への貸付はたった20万円」は不正確 支援策は他にもある【ファクトチェック】

能登半島地震について、政府の被災者への貸付がたった20万円だとして、政府の対応を批判する言説が拡散しましたが、不正確(ミスリード)です。20万円の貸付は被災者支援策の一部で、家屋の全半壊などには、ほかにも支援制度があります。


検証対象

能登半島地震をめぐって2024年1月11日、「政府が被災者に20万円の貸付をするって言ってるけど、家が崩壊したり、甚大な被害にあった人に、たった20万円じゃ足りない」などという投稿がX(旧Twitter)上で拡散した。2024年1月15日現在、この投稿は1400回以上リポストされ、表示回数は870万回を超えている。

検証過程

生活福祉資金貸付(福祉資金[緊急小口資金])の特例について

言説は、被災地で当面の生活費を必要とする世帯に対して貸し付ける「生活福祉資金貸付」の特例を指していると見られる。この特例は厚生労働省が各都道府県知事宛に出した通知だ(1月9日付)(厚労省)。貸付金額は原則10万円以内だが、世帯に死者がいたり、世帯員が4人以上いたりするなどの場合は最大で20万円だ。 

災害時の被災者支援制度について

内閣府の資料によれば、災害後は「応急救助」から「復旧・復興」へと段階が分けられ、それぞれ法律が整備されている。災害直後の「応急救助」のフェーズでは、災害救助法が根拠となり、適用された場合、家の被害状況に合わせて修理費用などが用意されている。

例えば、全壊の場合には、応急仮設住宅の供与対象となるのに加えて、住居の解体や建設・購入費などの支援金を受けられる。

内閣府「災害救助法の概要

今回の能登半島地震では、全壊や大規模半壊があったため、この被災者生活再建支援法を石川県全域で適用することがすでに決まっている。さらに、石川県は全壊と大規模半壊に次ぐ「半壊」の住宅にも県独自の支援を行うことを決めており、住宅を再建する際は支援金として最大100万円を支給する。

このほかにも、災害で亡くなった方の遺族や、災害によって障害を負った方へ支給する災害弔慰金・災害障害見舞金制度や、教科書の現物支給などの制度がある。これらについては内閣府が公表している資料に一覧となってまとめられている。

判定

最大20万円の生活福祉資金貸付のほかにも、住宅の被害状況に応じて様々な支援金や制度がある。よって、「家が崩壊したり、甚大な被害にあった人に、たった20万円じゃ足りない」という言説は不正確(ミスリード)と判定した。

あとがき

被災者支援には様々な支援金や制度があります。ネット上の情報や言説を真偽や根拠を確かめないまま拡散すれば被災した人々に一層の不安を与えてしまうことになります。国や県など行政の情報で確認することが大切です。

石川県をはじめ北陸三県と新潟県は相談窓口を設けています。

石川県:https://www.pref.ishikawa.lg.jp/saigai/documents/shienguide0113.pdf
富山県:https://www.pref.toyama.jp/1900/bousaianzen/noto_jishin_shien.html
新潟県:https://www.pref.niigata.lg.jp/uploaded/attachment/387494.pdf
福井県:https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/kikitaisaku/hisaijouhou.html

検証:鈴木刀磨、本橋瑞紀、宮本聖二
編集:古田大輔、野上英文、藤森かもめ

災害で拡散する偽情報の5類型


検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。

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