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【400字の独りごと】 夢

 夢


 ひどく長い夢を見た。
 ずいぶん前に出ていったはずの家の中で、私は追い立てられるように荷物をまとめていた。
 ここを立ち退くのは明日だから、と暗い顔で男が言う。部屋にはそこらじゅうにまだ大切なものが残っていて、それらを手当たり次第に袋に入れていく。ガラスのペンギン、古びた写真立て、昔集めていた四つ葉のクローバーの押し花。どれもうっすらと埃をかぶっていて、けれどひとつひとつを拭いている暇はなく、次々に袋へ放り込んでいく。
 ふと顔を上げると、死んだはずの懐かしい人が横に立っていて、耳元にそっと囁きかけてくる。
 大丈夫よ、この土地はまた買い戻すから、と。
 紙袋がいくつも満杯になっていく。焦りと哀しみで胸が押しつぶされそうになる。
 涙がこぼれかけたところで目が覚めた。どれだけの時間、夢の中にいたのだろう。てっきり昼下がりまで寝過ごしてしまったのかと思った。
 目を細めて時計を見ると、まだ朝の八時だった。

(2007年5月9日)

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