【400字の独りごと】 最期の狂気
最期の狂気
ゴミ処理班の男たちは陽気だ。
捨てられてゆくものたちをつぎつぎに運びながら、野太い声で冗談を交わし、それにつられて皆、がははと笑う。それはまるで、見捨てられたものたちの最期の狂気に満ちたエネルギーが、男たちに乗り移ったかのごとく。
傍らで、エンジンを唸らせて待機している処分車は戦闘モード全開だ。息をつく間もなく送り込まれる机やら食器棚やらを、ばりばりと飲み込んでゆく。
崇高な、容赦ない姿に、目を奪われる。
買っては捨て、買っては捨て。
地球環境がどうこうなどというお手軽なセンチメンタルではなく、もっと底知れぬ虚しさが、からだにひたひたと押し寄せてくる。
あっというまに家はからっぽになり、取り残されたのは、ひどく腐臭漂う自分の身ひとつだけだった。
(2004年11月4日)
23年間過ごした生家との別れの日に
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