Riotの新作格闘ゲームに注目すべき理由

Riot Gamesの新作格闘ゲームProject Lの開発状況が公開されました。

Project Lは2019年10月のLeague of Legends10周年イベントで制作が発表されたLeague of Legendsのスピンオフ格闘ゲームです。このイベントでは同時に、VALORANTやLeague of Legends: Wild Rift、Legends of Runeterraなどのリリース済みタイトルも同時に発表されていました。

しかし、実は筆者はLeague of Legendsスピンオフの格闘ゲームがリリースされることや、ゲームの特徴を2016年の段階で予期していました。

筆者がこのように予測した理由は、格闘ゲームにおける問題・Riotの行動・League of Legendsの特徴が噛み合っていたためで、このことがProject Lに注目すべき理由にもそのまま当てはまります。

格闘ゲームは「eスポーツ」という単語ができる以前に誕生した、対人ゲームジャンルです。格闘ゲームとトレーディングカードゲームは海外においても国内においても、いち早く競技シーンを成立させていました。対人ゲーム市場が確立する中で、格闘ゲームの地位は相対的に低下していますが、ファンやコミュニティは非常に根強いです。

その中で格闘ゲームの問題点としてよく主張されるものが「敷居の高さ」です。特に複雑なコマンドやコンボは初心者に対する障壁になっており、大乱闘スマッシュブラザーズにはこの問題意識が色濃く反映されています。

また、筆者が思う類似の問題点として、デバイスの不一致があります。元来アーケードゲームとして始まった格闘ゲームは、業務用筐体での操作に最適化された操作体系を持っていますが、いまやゲームセンターでのプレイは少数派です。競技志向のプレイヤーはコントローラーを購入してプレイすることが多く、数千円のコントローラーを購入しないといけないことは、他のジャンルと比べて大きなハンデになっています。

これらの問題に取り組んだゲームがありました。2015年にアルファテストが始まったPC向け格闘ゲームRising Thunderです。キーボード操作に最適化され、ワンボタンで必殺技が出せる代わりにクールダウン制を採用しているRising Thunderは、革新的なタイトルとしてごく一部の注目を集めていました。

Rising Thunderがなぜ流行らなかったのか?それは、Rising Thunderの開発スタジオがRiot Gamesに買収され、アルファテストが打ち切られたためです。

ワンボタンで必殺技が出せ、クールダウンがあり、クールダウンのスロットが3枠 + 1枠ある、というのはまさにLeague of Legendsで、Rising Thunderのシステムは格闘ゲームの問題点を解消し、League of Legendsのキャラクターを活用できるものです。2016年の買収の段階で、2019年の発表は予測可能でした。

Riot Gamesは新規タイトルを開発するとき、全く新しいゲームを作るのではなく、既存のジャンルでよく聞かれる問題点を解消するアプローチを好みます。

Legends of Runterraでは「カードの入手方法」「インタラクティブさ」が、VALORANTでは「ゲームサーバーのスペック」「ネットコード」「アンチチート」などがリリース当初にアピールされていました。

一見、ゲームシステムとインフラという異なるアプローチですが、これらはどちらも既存のDCGやFPSのプレイヤーが不満に思いやすいことという共通点があります。Riot Gamesはゲーム開発において課題解決型のアプローチをとり続けています。

Project Lもこの方針を踏襲している可能性が高く、開発中の映像からもRising Thunderと類似のシステムを持っていることが分かります。

さて、このようなタイトルのリリースで連想するのがデジタルカードゲームのHearthstoneです。Hearthstone以前にもデジタルカードゲームは存在していましたが、比較的ニッチなジャンルでした。既存のデジタルカードゲームよりシンプルなシステムを持つHearthstoneは、スピンオフ元のWorld of WarcraftやBlizzardのブランドも相まって爆発的にヒット、Shadowverseなど後追いタイトルを大量に生み出しました。

Hearthstone以降のデジタルカードゲームは多くがHearthstoneに近いシステムを持っており、また、アナログトレーディングカードゲームも続々とデジタル版に進出。競技シーンがアナログ版とデジタル版で統合されたり、ゲームデザインの傾向がデジタル版と相性のよいものに変化するなど、従来のアナログトレーディングカードゲームにも重大な影響を与えています。HearthstoneはMagic: The Gatheringの登場によって誕生したTCGの歴史を二分するインパクトを持つ歴史的なタイトルと筆者は考えています。

Project Lがヒットするかは分かりませんが、もし大ヒットタイトルになった場合、Hearthstoneによる「革命」が再現される可能性が高く、格闘ゲームの操作体系が全面的に見直されたり、格闘ゲーム市場自体が急拡大する可能性があります。(Magic: The Gatheringは2020年度に過去最高の売上を記録しています

Project Lのリリースは2023年以降とのことですが、出来栄えが非常に楽しみです。格闘ゲームのファンのみならず、多くのゲームファンやゲーム業界関係者にとって要注目のタイトルと言えるでしょう。

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