秋風と心の所在

2023.10.13


今日はゆっくり出かける日だったから、十一時頃に起きた。朝ご飯を食べ、珈琲を淹れて味わっていると、正午に母が帰ってきた。何やら上機嫌で、どうやらいい買い物をしたらしかった。早く帰ってきたものだから近場で買い物をしたのかと思ったが、そうではなかった。朝から電車に乗って街の中心地まで出かけていた。そこは私の職場の近くで、これから私が向かう場所であり、何とも不思議な感覚になった。私は今、珈琲を淹れて一日を始めたところだったが、母はすでに半日を終えたらしい。私が珈琲を母の分も淹れると、喜んでくれた。

何を買ったのかを聞かずとも、母は「見て!」と新しい植木を持ってきた。林檎の木だった。林檎飴にするような小ぶりの品種だった。子どもの手でつくる握り拳ほどの、小さな林檎が一つなっていた。鉢に植っていて、背丈の小さい木ながら幹は太くて貫禄があった。街の花屋さんの安売りで店の外に置いてあった商品だったから、お得に買えて嬉しかったみたいだった。そこの花屋さんは私も知っていて、葉の色が良く元気な商品が多いお店で、店の外に置いている商品はお得なのも知っていたから、容易に想像がついた。先日、ラベンダーの事もあったから、母が明るい表情になっていてなによりだった。

もう少し出掛けるまで時間があるので、今度は違う種類の珈琲を淹れて飲んだ。普段は朝に飲まないこともあるけれど、淹れられる時はなるべく淹れて、ハンドドリップの練習をしている。練習といえど、正解が分からないから試行錯誤している。



好きな楽器店の動画を見るのが好きで、たまに楽器屋さんで働けたら、と考える。楽器屋さんの苦労を知らないからそう思うんだろうけれど、一つの憧れの仕事だった。楽器や音楽が常に身の回りにあるというのは、本当に憧れる幸せだった。

電車に乗って、今の仕事に向かいながら、電車に乗りながら、そのお店の求人のページがあるのを少し見ていた。風が出ていて、停車駅の向こう側に見える木が揺らいでいた。



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