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【音楽雑記】初期のデヴィッド・ボウイを丹念に綴ったドキュメンタリーを見た。

 BBCが昨年公開したドキュメンタリー、「デヴィッド・ボウイ 最初の5年間」を拝見。

 時期的に今度公開される映画「スターダスト」とどれほどの重複があるかは不明だが、十代の終わり頃からアルバムでいうと「世界を売った男」あたりまでのボウイを、当時のバンドメンバー、友人、元恋人、スタッフ、そしてボウイ本人の証言によって丹念に浮き彫りにしていく。これがとんでもなく丁寧な作りで見ていて唸ることしきり。バンドやってる、やってた人、もしくは青臭い十代を過ごした人にはなかなか刺さるものが多いかもしれない。

 移り気で、十代の頃から既にスタイルやバンドメンバーを頻繁に変えながら音楽的な成功を求めて七転八倒していた。その姿はジギー以降の活動と全く変わらなくて、ボウイは最初からボウイだったんだとよくわかる。目の前の新しいものにいちいち飛びつく習性も変わらないが、さすがに若い頃となると「やるべきことに集中しなさい!」と説教したくなる笑。リンゼイ・ケンプに弟子入りするも、ドヤ顔で披露したパフォーマンスは師匠にボロクソ言われてしまうあたりなぜか自分のことのように恥ずかしくなる。バックバンドのメンバーも「彼は他人の歌詞や曲想を拝借することに躊躇のないヤツだった」とやや辛口に回想したりする。だが、時に自らを過信し、時に傲慢になりながらも自身への信頼を失わなかったことで、やがてジギー・スターダストという確信に至ったのだろう。必要な過程だったのだ。

 蛇足だが、ボウイの人生に暗い影響を与えたとされる異父兄テリーについても触れられていた。テリーは若くして狂ってしまい、精神病院で人生の大半を過ごした。テリーの存在はボウイの楽曲にも影を落とし、俺の大好きなアルバム「世界を売った男」は彼に捧げられたと言っても過言ではない。ところがである。ファンの間での定説、「ボウイの母方には精神を病み自殺した者が多く、ボウイ自身も、自分が狂ってしまうのではないかという恐怖を抱えて生きていた」という話についての従姉妹の証言にひっくり返った。「私から見ればテリーは明らかに薬物の影響下にあった。知る限り私達の家系で精神を病んだのはテリーだけ。デヴィッドはなんであんな嘘を話したのだろう…

 ボウイが作り上げた彼自身のストーリーに我々はしっかりのせられていたんである。

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