動画作成の手法変更と結果

概要

 2022年12月末から開始していた実況動画シリーズが、2023年3月末で完結しました。

 このシリーズでは従来の投稿作品と作成手法を変えたので、その結果についてまとめていこうと思います。これは振り返りを行うことによって利点や改善点を出し、次の作品につなげることが目的です。


従来の手法

 今までは以下のやり方で動画を作成していました。

  • 動画でやることを事前に決める

 次の動画でやることを箇条書きで整理してから、ゲーム側で必要な準備をしていました。この時点では動画内で何を実況させるかは全く決めていません。今の状況からできそうなことや、やっておきたいことを書き出して、動画一本分のネタが並んだら形にするという塩梅でした。

  • ゲーム部分を先に録画する

 事前に決めた「やること」を元に、ゲーム内容を録画していきます。この時、ゲーム内での録画時間短縮などは無理に考えていません。間延びしない程度であればいいという考えのもと、録画をしていきます。これはこの時点で話す内容が完全に固まっていないため、バッファを取るための安全策でもありました。
 事前に決めた「やること」をそれぞれ録画し終えたら、それをAviutlに読み込ませて動画の体裁を整えていきます。

  • ゲーム内容と予定を元に、実況部分を作成する

 動画の体裁が整ったら、読み上げを入れていきます。ここで初めて、具体的に何を喋らせるかを考えていきます。勿論、最初にやることや抑えることは決めているので、それを組み込みつつ、そこまでどうやって繋げるかをアドリブで書いていきます。
 私の動画は登場人物が2~3人居る形式の実況動画となっているため、それぞれの人物の性格や動画内での役割(メイン実況や解説、ボケやツッコミの割当)などを考慮しながら決めていきます。

従来の手法での問題点

 従来の手法で6年以上続けていましたが、問題点は色々ありました。

  • シリーズ単位での動画計画を立てることができない

 その場その場でやることを毎回考えているので、計画というもの自体が作れません。また、製作速度もネタの出方に依存するので、安定した投稿を行うことが困難です。以前やったことも記録に残していないため、記憶頼りとなって整理しにくいのも難点です。事前検証を行わずにネタとして採用することもあったので、失敗して同じことを次の動画でやり直すということもありました。

  • 動画が間延びしやすい

 実況内容のバッファを取るため、それぞれの「やること」の内容が冗長になります。当然、動画時間も長くなりやすく、締まりがない動画が仕上がりやすくなります。これが影響を及ぼすのが実況内容です。

  • 話す内容が安定しない

 実況内容がアドリブになるので、話す内容がその時の気分で決まります。何が問題かというと、「何を言わせるか」「言わせるとして、どういう台詞にするとその人物に合うか」「話したい内容までどう繋げるか」というのが決まらないと動画の作成が進みません。
 これが動画部分に影響されるため、間延びした部分を埋めるために動画と直接関係ない掛け合いを作り、それに作成時間を取られてしまうということが度々ありました。

  • 話した内容、話していない内容が整理できない

 こんな計画性のない場当たりな動画作成をしていれば、何を実況させたかは当然把握できません。そのため、毎回「これ前に話さなかったっけ?」というのが起きて、その都度筆が止まります。
 逆に、話さないといけない内容も管理していないため、実況内容の漏れも起きやすくなります。

  • 作成時間が長くなる

 既に他の項目で触れてはいますが、作成手順が効率化されていないため、計画から投稿までの時間が長くなりがちです。投稿速度を早めるには質が犠牲になるため、プライベートの時間を大量に消費して動画をなんとか仕上げるということが多かったです。趣味なのだから時間を使うのはいいのですが、動画を作るために他のことができないというのは生活に影響が出やすくて、困ることが何度かありました。

新しい手法

 友人から「事前に台本作って動画作ると早くて楽だよ」と教えてもらったので、今回のシリーズでは以下のようなやり方で動画を作ってみました。

  • シリーズ全体でやることを整理する

 今回の動画シリーズは制限プレイだったので、動画を作る前に大まかな攻略チャートを作成しました。このチャートを元に、「攻略完了までにやらないといけないイベント」を書き出しておきます。これらは全て紙媒体で記録、整理しています。

  • 動画別にやることを分割する

 前述した「攻略完了までにやらないといけないイベント」を時系列に分けて、各話でやることに分割していきます。大体イベント1個で30~60秒の尺になるので、5~6個ほどのイベントを組み込めば最低限の尺が確保できるという計算で作っていました。

  • 事前に実況台本を作成する

 各話でやることが決まっているため、それに合わせて実況内容の台本を作ります。これはテキストエディタで作っており、「誰が何を話すか」だけを書いたシンプルなものです。話す内容が事前整理出来る上に、keepなどの外部ツールを使えば出先でもスマホ一つで作成出来るのでとても楽になりました。
 台詞枠に収まらなくなると画面が汚くなるため、ワンセンテンスは長くならないように意識して文面を作っていきます。場合によっては、台詞を区切ってやることも検討します。但し、説明を他のキャラが引き継ぐと会話としてはあまりよいとはいえないので、こういった形での台詞分割は避けています。

  • 動画のテンプレートを作成する

 AviutlではAUPファイルという編集ファイルで動画内容を管理しています。これは複製すれば流用できるため、事前に最低限の素材を入れたテンプレートファイルを作成しました。
 具体的には背景、動画配置枠用背景、字幕表示枠、実況人物の立ち絵、PSDToolKitによる字幕表示オブジェクトを組み込んでいます。また、「かんしくん」というツールでVOICEROIDとVOICEVOXを連携するように設定したので、読み上げファイルを保存すると勝手に音声と字幕がAviutlへ反映されるようにしました。
 AUPファイル以外にも、Aviutlには「エイリアス」という、オブジェクトを記録する機能があります。よく使うオブジェクトをエイリアスに登録して、一発出し出来るようにしました。これで必要なオブジェクトを作り直す手間が無くなったため、動画の編集が楽になりました。

  • ゲーム部分の録画より先に、実況台本を元に実況部分を作成する

 既に実況台本ができているため、テキストエディタから貼り付けるだけで実況部分が作成できます。一番面倒な部分が30分程度で終わるうえ、事前に推敲をした内容なので破綻も起きにくくなりました。
 修正が必要な状況は2つで、ひとつは文面が台詞枠に収まらなかった場合。これは分割するか文を短くします。もうひとつは読み上げソフトが上手く読み上げてくれない場合。無理に音声を調整するぐらいなら、スッと読んでくれる形に文面を調整したほうが早いです。

  • 実況台本の尺に合わせて、ゲーム部分を録画する

 後はゲームの録画をして、Aviutlに読みこませたらほぼ完成です。この時、可能な限り実況台本に合わせるように尺や内容を調整してプレイします。こうすることによって、字幕オブジェクト位置調整を最小限で済ませることができます。
 elonaはセーブファイルを圧縮しておけば即席のバックアップになるので、毎回録画前、録画中の区切り、録画終了後のセーブファイルをバックアップしています。録画が終わったら、録画中の区切りのファイルは処分する形で管理しています。

  • 解説しきれないことは、おまけパートに任せる

 ゲーム内でやっていることを細かく説明すると、ゲーム部分が冗長になるうえ、尺の調整が難しくなります。そのため、詳細な説明が必要になる箇所は、動画の最後におまけパートを作ってやることにしました。
 おまけパートはテキストによる説明と動画による実演を組み合わせて、尺に気にせず作ることができました。このおかげで、ゲーム部分の間延びを回避できるようになっています。
 おまけパートも実況台本に組み込まれているので、読み上げを入れるときはゲーム部分とおまけパートを一気に入れる形になります。

  • サムネイル画像を作る

 これは効率化とは別ですが、今回のシリーズからサムネイル画像を別作成することにしました。ゲーム画面のスクリーンショットに立ち絵とタイトルを書き込むだけのシンプルなものでしたが、見栄えが良くなりました。
 前回のシリーズから念のためYouTubeへもアップロードしているのですが、いちいちサムネイルにする箇所を考えなくていいので楽です。
 あと、サムネイルにもテンプレートを作ってあって、パーツを組み替えるだけで仕上がるようにしています。

  • コメント返し専用の回を作る

 これも効率化とは別ですが、便利になった要素ではあります。従来では毎回動画の最後に直近の動画コメントと広告者紹介をしていたのですが、あとになって追加されたコメントは回収できませんでした。
 そのため、3話区切りでコメント返し専用の回を作ることで、コメントと広告者紹介の漏れが回避できるようになりました。

新しい手法の利点

 何と言っても、早くて楽です。ゲーム部分の準備さえできれば、2日3日で一本完成します。一番手間がかかるのが立ち絵の調整ですが、これも1時間2時間あれば終わるような作業です。今回のシリーズは隔週で投稿することができましたが、効率化の賜と言えます。
 また、動画別に内容を管理するようにしたので、やっている内容の確認が楽になりました。事前に計画を建てているので内容の被りも避けられますし、推敲しているので漏れや変な箇所も抑えられます。
 動画の作成が自宅以外でも出来るようになったのも、大きなメリットです。外食をしているときの待ち時間や移動中の時間が、動画の作成時間に当てられるようになりました。私は頻繁に献血をするのですが、成分献血は一時間以上かかるので、この時間が動画作成に当てられるので暇しなくなりました。

新しい手法の改善点

 新しい手法はとても良いので気に入っているのですが、気になる点もあります。

  • 動画の尺が短くなりがち

 実況台本を実際に読み上げてみると、ゲーム部分が5分ギリギリということが度々ありました。必要最小限の内容しか台本に書いていないので、こういうことが起こります。このあたりは、動画のテンポのために話す速度を1.1~1.2倍にしているのも影響しているとは思います。
 ゲーム部分を普通に録画してそれに台本を合わせると、実況に隙間が開くのでやりづらくなります。では逆に台本を長くすると、今度はゲーム部分の合わせが難しくなり、実況とゲーム内容が噛み合わない…ということが起こります。実際にこういう箇所は何度かありました。

  • 実況者同士の掛け合いを挟む余地がない

 前述のように、実況を間延びさせるとゲーム内容が実況に噛み合わなくなるという問題があります。そのせいで、実況をしているキャラ同士の掛け合いを挟むことが難しくなりました。
 各動画シリーズでは本編に絡まないバックストーリーを一応用意していて、そのあたりを掛け合いのネタとして利用していました。前シリーズの「巾着切り道中記」から実況担当者が変わりましたが、東北プロジェクトの設定を土台に、動画シリーズ独自のバックストーリーを簡単ながら組んであります。
 実況台本で必要最小限の内容だけ話すという都合上、こういったネタを挟むのは難しくなるため、「動画としては内容が理解しやすいが、お話が簡素」という状態になってしまったと感じています。
 ただ、そういう茶番のような部分は邪魔という人も居ると思うので、良し悪しだと思います。このあたりは動画投稿者の好みに合わせたほうが良いとは思ってはいます。

  • 事前の計画が崩れたときのリカバリーが必要

 動画としては6話の時点で準備が完了し、7話以降から攻略して短期間で締めという計画を立てていました。それはいいのですが、4話の時点でおまけパートのネタを前倒しで使ってしまい、6話時点で7話以降の内容をいくらか前倒しして組み込んでいます。
 これは6話までの動画尺が短すぎて前倒ししたのが原因なのですが、そのせいで7話以降はいくらか組み替えることになりました。大枠は変わっていないのですが、隙間に挟むネタが調整されている形です。こういった事情があり、第7話のサムネイルにする場面が無くて悩みました。サムネイルにする箇所が決まらないということは、その動画のメインとなる箇所が無いということなので、避けなければいけない問題となります。
 ただ、このあたりは各話を順次作成して投稿するというスタイル自体に問題があると思っています。事前に全て完成させてしまえば、不慮の事故によるリカバリーは不要になるはずです。

  • サムネイルの体裁を変えたい

 今回は試験的な導入だったので、シンプルな形で作ってみました。しかし、なんとなくで入れてみたサブタイトルが画面に干渉したり、文字数がメインタイトルに縛られてうまい具合に収まらないといった問題がありました。
 一応今のサムネイルでもそれっぽくは見えるのですが、次にやるときはデザインをもう少し変えたほうがいいかなあとは考えています。

今後やりたいこと、試したいこと

 新しい手法自体は良い感触を得られたので、改善点への対応をしていきたいと考えています。

  • 投稿前に動画を全て完成させておく

 締切に追われながら動画作成することを避けるため、投稿前に最後まで作ってしまうことを検討しています。追加で作るのは、コメント返し回のみにします。これは完走後でもいいですし、話数が多いなら合間合間に返していく形にします。
 これなら製作期間に余裕が持てるので、余暇時間をうまいこと配分しながら動画作成が進められます。締切が無いと緊迫感が生まれなくて動画が進まないというのもありそうですが、今年から年単位月単位の目標を作ってやるという方針を取り始めたので、なんとかなるかと。駄目ならやり方を考えます。

  • 実況者同士の掛け合いを挟む余地を作る

 実況動画としては無理にやらなくていいのですが、コントを入れるのは作っていて楽しいので入れたいです。どちらかというとこれは、「ゲーム部分のバッファをどのようにして許容するか?」という話になります。
 このnoteを書いている時点では、「おまけパートに押し込んでいた部分を、合間合間に差し込む形に変更してやる」というのがいいかなと考えています。これなら今からやることの説明が順序よく入りますし、ゲーム部分から切り離せるのでコントを差し込む余地も作りやすいです。これによってテンポがどうなるかは予測できないので、実際に動画が作れる段階になったら改めて検討します。

  • 解像度を変更する

 動画の解像度を長らく1024×768にしていたのですが、これをもう少しデカくしたいです。何故かというと、elonaのゲーム部分を入れるのにはサイズが小さくて、今まで大きさを7割程度にして組み込んでいます。そのため、ゲーム部分が見難いという問題があります。後は、elonaの画面サイズ自体も800×600の最小サイズで作っているので、枠が被って見れない部分もありました。これは第5話で話していたやつです。
 できればelona側の解像度を800×696か1024×768に変えて、それをそのまま組み込める解像度にしたい…というのが理想です。そうなると編集に使っているノートパソコンの画面サイズに収まらないので、Aviutlの表示サイズを調整してなんとかならないかと考えています。

  • サムネイルの新しいレイアウトを考える

 まず、タイトルがうまい具合に収まらないのをどうにかしたい。これはゲーム画面の解像度が上がれば、使える空間が広くなるのでなんとかなりそうです。
 できればセンスあるデザインにしたいので、そのへんもどうにかしたいです。サムネイルのデザインに関しては目処が全く経っていないので、ふわっとした感想になってます。動画の看板になるので、しっかり考えねばいかんので参考書でも探してみます。

終わりに

 プレイ方針も含めて、新しいことを試したシリーズでしたが上手いこといったと思っています。それでも気になる点は出てくるもので、一つずつ改善しながら動画の質を上げていきたいところです。

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