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心震わす芸術は、霊界があってこそ

美しい絵画や彫刻に心を奪われることがあります。吸い込まれるような色彩の豊かさ、思わず触れたくなるような質感。時を忘れ、いつまでも眺めていたくなるような力を持つ作品に出会うことがあります。そのたびに、「芸術家たちは何を見、何に感動したのだろうか?」――そう思わずにはいられません。

以前、彫刻家の方から聞いた印象的な話があります。リンゴを前に、その方は次のようなことを話してくれました。

「リンゴを描こうとするときは、まずリンゴをしっかりと見なくてはいけません。リンゴを真上から見ると、円ではなく緩やかな五角形をしています。その理由は、リンゴを水平に輪切りにしてみるとわかります。種が、中心から放射線状の5角形に並んでいるからです。リンゴの実は、その種を守るようにして5方向へと膨らみます。子孫を残すため、鳥が“食べたい”と思うように、種の方向に実を膨らませるのです」

輪切りしたリンゴ


その話を聞いた時、目の前のリンゴがまったく別の形に見えてきました。ただの球体にしか見えていなかったリンゴが、意志を持って、リンゴとしての“在るべき形”を保っているように見えてきたのです。そして、種という我が子を抱き抱える母親のようにも感じられました。自信に満ちたどっしりとした重みや、体温さえも伝わってくるようでした。「リンゴに限らず、すべてのモノは理由があって“在るべき形”をしているのだ。芸術家は世界をこう見ているのか…」と驚き、感動しました。

「考える人」で知られるフランスの彫刻家、オーギュスト・ロダンは、あらゆる存在物を創り出した“未知の力”を崇拝していました。草花、動物、人間の肉体、それらの形を保っている“力”に畏敬の念を抱いていたのです。「自然は美の源であり、唯一の創造者である。私は何も創造しない」――ロダンは、こうした言葉を残しています。芸術家は自然に秘められた“生命の法則”を通訳しているに過ぎない、と説いたのです。ロダンが残した数々の言葉は、自然や生命への賛美であふれています。

シルバーバーチは、地上を豊かにする芸術作品は、みな霊界が始原となっていると述べています。「高級霊界からのインスピレーションを地上の芸術家が受け取っている」と言うのです。おそらく、ロダンも高級霊界から多大なインスピレーションを受け取っていたのでしょう。彼には光り輝く霊界の美しさが見えていたのかもしれません。神々しい高級霊界の美しさを、何とかして彫刻で表現しようとしていたのかもしれません。彼の作品を見ても、言葉を読んでも、凡人には見えない“何か”が見えていた、としか思えないからです。霊性の高い芸術家たちにとって、神の創造の御業を人々へ伝えることは、霊界から託された使命だったと思われます。

今後、私たち地上人の努力次第で、霊界と地上の距離はどんどんと縮まっていきます。数百年後の地上世界では、霊界との交流が身近なものとなり、霊界からのインスピレーションもふんだんに受け取れるようになるとのことです。それにともない、地上の芸術も霊界に近いものへと変化していきます。地上の芸術家と霊界の芸術家が手を取り合い、地球上の芸術は大きく飛躍していくことでしょう。それは、どれほど美しく、人の心を打つことでしょうか。

「ああ、数百年も待ちきれない!早く見てみたい!」――霊界の方々の苦労も知らずに、そんなことを考えてしまいます。