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出版業界の行く末が心配。でもそれは作家の仕事だろうか

出版不況と言われて久しい。私は先行きが心配だ。
本が売れなくなると困る。めちゃくちゃ困る。

私は本屋さんに自分の本が並ぶ作家になりたいし、直木賞が欲しいし、この人生のどこかでノーベル文学賞をもらいたいから。


そもそもは給料が上がるとか、減税されるとかして個人が自由に使えるお金が増えるのが根本的解決なのだろうけれど、それより手前で「何かできないか」と暗闇を手探りで進んで色々な試みがなされているのが現状……と認識している。

SNSの普及なども手伝って、作家が作品を通さない形で日常や創作論を発信、そこから作家を知って本を手に取るーーという流れも目につくようになってきた。「作家のタレント化」とでも言おうか。

私もTwitterをきっかけに知った作家さんや、名前だけは知っていたけど作品を読んだことはないという作家さんが何人もいるので、ちゃんと作家のファンになっているのだろうなと思う。

作家さんや編集者さんをフォローしておくと、出版社を横断して新刊情報がわかるので、作家個人を応援しやすい感じがする。
書物に携わる人々の日常ツイートが目に入ると、その人個人への親近感も増す。
「この人が面白いと言っている作品なら、読んでみようかな」という気にもなる。おお、出版経済が回りそうだ。


……と思う一方で、「これは本当に出版不況の打開策か?」という疑問もわだかまりつづける。

「作家」という仕事は読んで字のごとく「作る専門家」なのであり、日常を切り売りして公開するのは作家の本分ではない。

情報技術の変遷によって作家/タレント/インフルエンサーの垣根の行き来がより簡単になっていくことと、作家個人の人気だけを当てにして本を売ろうとするのとは質の違うことがらな気がする。

書籍の流通の仕組みのメリットデメリットが論じられるようになったのは決して最近のことではないだろう。

大型書店がたくさん閉店するのに、個人書店の中にはどんどん人気になっているお店もあるという現象には出版不況を打開する手がかりがあるのではないか。


構造の中に改善可能なデメリットが潜んでいるのに改善せず、そのほかの対処法でなんとかしようとするのは、エッセンシャルワーカーの給与を上げれば人手不足が解消するだろうに、給与は変えずになんとか人手を集めようとする施作と似た「違う、そうじゃない感」を覚える。


現行の書籍流通の仕組みが守ってきたものは何か、今の時代にそぐわないもの/合わせて変えていけるものは何か、良作を生み出せるよう作家と共にできることはないかどうか。仕組みそのものの変革を起点に考えるべきだと思う。


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