「脅迫や暴行を受けた上,自宅を襲撃され,両親が脅迫され」ても、「あなた迫害を受ける恐れはないので大丈夫!」なのだろうか。
ふと電車の中で読んでいた法務省の資料の中に、どんな人のどんなケースが日本で難民としての認定を受けられて、どんな人が認定されないかの具体例が並べられているものがありました。
日本の難民認定の門戸が狭いことは有名ですが、厳しいと言われるその基準に、改めて驚きました。
ここで紹介する事例は、認定されなかった人の事例です。
私もこの人の顔は浮かばないし、どこの地域のどの国なのかも、具体的な状況もわからないけれど、少し想像をしながら読んでみてほしいです。
(出典:法務省「難民と認定した事例等について」)
***【事例11】*****
(概要)
申請者は,政党Aの党員として活動していたところ,政党Aと政党Bとの間で起こった争いで,政党Bの関係者が殺害され,その犯人が申請者のいとことされたため,政党Bの関係者から,申請者が上記殺害を計画したと疑われて,脅迫や暴行を受けた上,自宅を襲撃され,両親が脅迫されたことから,帰国した場合,政党Bの関係者から迫害を受けるおそれがあるとして難民認定申請を行ったものである。
(判断のポイント)
申請者の主張する迫害主体は,政党Bの関係者であって,出身国情報によれば,本国政府当局が政党関係者の違法行為を放置,助長するような特別な事情があるとは認められないこと,申請者の申立てによれば,申請者が政党Bの関係者から暴行を加えられた後,入院先の医師が警察に報告し,警察が政党Bの関係者を逮捕しており,実際に,本国政府当局が政党Bの関係者による違法行為を取り締まっている状況が認められることなどから,条約難民の要件である迫害を受けるおそれがあるとは認められないとして「不認定」とされた。
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これによると
「あなたは脅迫や暴行を受けた上,自宅を襲撃され,両親が脅迫されたけれど、あなたの国の政府当局が政党Bの違法行為を取り締まっているらしいから、もう帰って大丈夫だよ!」ということになってしまいます。
この答えをもらった彼/彼女は、どんな気持ちだっただろう。
今日も「今、もうここにはいられない」という判断をした人たちが故郷を逃れ、国を離れ、安全を求めて日本にやってきています。
思い出の故郷を捨て、大好きな家族にお別れし、積んできたキャリアを手放し、なかには子どもと離れる決断をする人もいます。
再び襲撃される恐怖で国には戻れないこの事例の人や、難民条約で定められた理由には入っていない(ex. 紛争と空爆から逃れてきたとか、LGBTを理由に脅迫されたされたとか、壊滅的な自然災害で村に暮らせなくなったとか)から、難民申請したってどうしようもない人たちや、認められる証拠を全部自力で集められない人たちは、途方に暮れます。
昨年、日本で難民として認められた人は42人でした。
命からがらたどり着いた先のココ(日本)にいる。
でも
「強制送還はされないけれど、未来もない」
人が、人と人の間に切れ目を入れることの意味を考えさせられます。
難民としてやってくる人たちは、私と同世代の20-30代の若者が多いです。
そして彼らは、医者の卵だったり、デザイナーだったり、貿易の会社で働いていたり、国際政治を修士課程で勉強していたり、職人だったり、NGOの職員だったり、銀行員だったり、ジャーナリストだったり。
ついこないだまで、好きなことを学び、仕事にしていた、普通の若者たち。
こういった若者たちが、やることが何もない中で精神的な不安に陥り、手持ち無沙汰になり、安心できる家がないまま数年過ごしたり、朝までマクドナルドでただ時間を潰したり、山手線ぐるぐる乗りながら明日はどうやって過ごそうってため息をつく中で、日本で頑張ろうと思っていた気持ちがどんどんしぼんでいってしまう。
表紙に使った写真は、民族間の争いが激しくなっているカメルーンから逃れてきた女性が、家の近くの集落が焼かれたと見せてくれたニュースの写真。
(「渋谷の24時間のマックがありがたいよ」と教えてくれた人がいました)
もちろん、認定されるに越したことはありません。
本当に国に帰れない人ほど、それをみんな切望します。
しかし、難民条約でも守れないなら、難民認定が難しすぎるなら、彼らに他の道があってもいいはず。
例えば、地域や会社の中で共に生きる。
いずれ母国が平和になって帰国できる日まで、会社で自分の経験を活かして日本の社員さんたちと働いたり、労働人口が減ってゆく日本の経済にも利益をもたらしたり、大学のクラスメイトになって授業がもっと多様になったり!
世界ではそんな取り組みが始まっています。また紹介します。
ここでいただいたサポートは、入国管理局に収容されている方々に面会で会いに行くときの交通費に使わせていただきます。ありがとうございます。