2022年、日本の難民認定202人。前年よりも128人増!? 注目したい点について。
入管庁から「令和4年における難民認定者数等について」が出ました。
難民認定の申請者は3,772人で、前年から1,359人増えました。
コロナで一旦は入国ができなくなりましたが、入国制限が解かれてまた、人の移動が世界的に増えています。
2022年に、日本政府に難民として認定された人は202人。
特徴としては、そのうち7割以上がアフガニスタン国籍ということ。
記憶に新しいと思いますが、アフガニスタンでは2021年8月にイスラム主義勢力・タリバンが実権を掌握し、国内情勢が不安定になっています。首都カブールの日本大使館で勤務していたアフガン人職員らがタリバン復権によって日本に退避していますが、こういった人たちが難民認定されました。
難民として認定されたら「定住者」の在留資格で暮らしてゆくことができるようになります。
200人という数字、これ、多いと思いますか?少ないと思いますか?
難民に関わってきた人からすると、この過去最多の難民認定数は「これまでと比べたら非常に多い!」のです。前年より128人多いです。
残念ながら、難民認定数と難民認定率の低さが、先進諸国でぶっちぎり低い日本では、難民として認定される人の数はずっと以下のような推移でした。
この10年をみると、この2年、認定数が大きく増加したことがわかります。
不認定になった人の数は?
一方で、難民不認定とされた人の数は1万人を超えています。
3,772人しか申請していないのに、10000人を超える不認定者?と不思議かもしれませんが、それは申請した年に結果が出るのではなく、数年間待つ必要があるからです。
一次審査と不服申し立ての期間を合わせて処理期間は平均4年弱とされていますが、中には6-7年、入管からの面談にも呼ばれずに、今もひたすら待っている人たちがいます。
そして一度不認定になっても、身の危険を逃れて祖国からやってきた場合、簡単に帰国することができません。中には、何年も収容されたり、仮放免で収容所の外に出されたり・・・という状態を繰り返しながら、今も難民認定申請を続けている人も大勢います。
難民とは認めないけど、人道的な配慮をします?
難民とは認定しなかったものの人道的な配慮を理由に在留が認められた人は、1,760人でした。前年に比べて、こちらも1,180人の増加です。
これはどういうことかというと「日本政府の基準からすると難民とは認定できないけれど、祖国の情勢などを鑑みて帰国できないことを認めて、人道的な配慮によってビザをあげます」ということ。
26人が難民認定され、「人道配慮による在留許可」が1,682人だったミャンマー出身者ですが、その一方で2,000人程が不認定になっています。
ミャンマーは軍事クーデターから2年を迎えた今も、一般市民が殺戮される悲惨なニュースが日々流れています。
入管庁の資料に、難民審査参与員のこのような発言があります。
例えば、この2,000人のミャンマー不認定者も難民認定の審査を通っているわけですが、彼らがここでいう「ほとんど見つけることができません」に入ってしまうとしたら、ここは、保護されるべき人が適切に保護されるような制度に近づいてほしいと強く思います。
個人的に気になった点
シリア人が30人、ロシア人が21人、難民申請をしているけれど、難民認定も在留特別許可も得られていないということは気になりました。
シリアは内戦から12年ですが、今も、空爆等厳しい状況が続き、戻れる状態にない人たちがいます。また、兵役を拒否すると処罰されるため、兵士になることを拒んだ若者たちが外国に逃れたケースも多くありました。
2022年6月にUNHCRが公表した「グローバルトレンズ2021」では、世界で難民認定申請者を多く出している上位5か国にも入っています。
2020年までは、数名ずつシリア人に難民認定が出ていましたが、この2年は認定も人道配慮もゼロでした。
<国籍別難民認定者数の推移>
これまでは目立っていなかったロシア人の申請も21人ありました。ウクライナ侵攻のための動員から逃れるためにロシアを離れた人たちの存在や、ウクライナ侵攻に反対する人が逮捕される出来事は昨年世界で話題になっていました。
日本政府がどのように判断するのかは、2023年の結果で見えてくるかもしれません。
なお、「この国の人だから難民だろう」「この出身国の人は難民なわけがない」と出身国で判断されるのではなく、難民認定の審査は個別の状況も見ながら審査が行われるべきものです。
ウクライナ"避難民"は?
あれ、ウクライナの人たちは?と思うかもしれませんが、避難して日本に滞在しているウクライナ避難民2,000人以上は、ここでいう"難民認定申請者"ではありません。通常の難民認定申請プロセスではなく、「避難民」という枠組みで、日本政府から特別に在留資格を得ています。ウクライナ人の受け入れがあったから、難民としての認定が増えたわけではないということです。
短期の避難のつもりで来た人も、なかなか戻れない状況の中で長期化しています。今後、定住や就労がより必要になってきます。
改正入管法の論点で大切なこと
いま、政府が国会での成立を目指している入管法の改正案では「難民認定申請は2回まで」、つまり、3回以上の申請は、強制送還の対象者となりますよということです。
しかしこの2022年、3回目の難民認定審査で認定された人が3人もいたのです。1回目の難民申請の結果が不認定、2回目の再申請の結果も不認定、それでも、帰国すれば命の危険があるということで3回目の申請をした人が、ようやくきちんと認定をされたということです。
ここからわかるのは、難民申請の回数の制限は、難民をきちんと見つけて認定することがまだまだ十分でない今行うことではないということ。難民としての理由がある可能性のある人を審査する側の国が見過ごして、祖国に帰らせてしまったら?取り返しのつかない命のリスクが想定されます。
今回、難民認定の数が増えたことは、日本がグローバルスタンダードに近づく一歩とも言えるでしょう。しかし、どんな制度も完璧ではないからこそ、特に、難民申請の回数制限は致命的になってしまいます。保護すべき人を保護できるようになってから、それ以外の不適切な申請に対処するために、このような制限を設けるべきだと考えます。
キャリアを通じて未来を拓く方法も
NPO法人WELgeeは「難民申請中の人」「難民認定された人」「人道配慮の在留資格の人」「難民認定はしていないけれど、祖国に戻れない理由のある人」などを対象にしたキャリアプログラムを運営しています。
キャリアを通じ、活躍できる職場と安定した在留資格を得ることができた人の中には、数年間ただただ不安の中で結果を待ち続けたり、同時期に来た人たちが不認定になってゆくのを見ていたり、狭き門である難民認定の結果がダメだった人もいます。でも、自分の経験やスキルを活かして企業で活躍することで、また別の道を切り開ける可能性があります。
”難民認定”も、1つの大切なゴールではあるけれど、認定されて終わりではない。人生の再建には、様々な要素が絡みます。今もまだ、政府による難民認定の門が狭い中で、民間企業としての役割が、彼らの人生を変えるかもしれません。一旦は国に戻れなくなった人たちと、共に生きる方法を1つでも多く築いてゆけたらと感じます。
ここでいただいたサポートは、入国管理局に収容されている方々に面会で会いに行くときの交通費に使わせていただきます。ありがとうございます。