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手紙 〜拝啓 人生で一番血迷っていた二十六の君へ〜

拝啓 この手紙読んでいるあなたには

誰にも話せない悩みの種がありますね


こちら2020TOKYO、
満を持して未来の自分から今アンサーを送ります。



26歳と言えば、あなたが一番血迷い、自分で自分の視野をどんどん狭くしてしまっていた暗黒時代です。


そのきっかけとなった大きな出来事は、
親友2人が示し合わせたように同時期にトントン拍子で結婚を決めたことで、
あなたは急に焦りだすのです。



「女子ってやっぱりライフステージによって悩みも優先順位も変わってくるから、

既婚/未婚 でステータスが変わると共通の話題もなくなるのでは」

と、親友の結婚が自分たちの関係性を変えてしまうのではないか、
となぜかそんなことを心配し始めます。

落ち着け、大丈夫。
結婚の話題が高頻度に出てくるのは挙式当日までの結婚準備期間のみだよ。

それが過ぎると比較的早い段階で
そのうちの1人はK-POPアイドルに推しを見つけ出して、ヲタ活に勤しむ人妻と化してるよ。


そして独身のあなたと一緒に
独身時代と変わらぬペースで韓国に美容レーザーを浴びるツアーに出てるよ。


「カコもそう遠くはない将来結婚してさぁ、
一緒にマタニティヨガしたり、無駄にポーセラーツサロンに通ったりしよー」って言ってた親友は、


その優秀さに社内で白羽の矢が立ち、
いまや一大プロジェクトの初期メンバーに選ばれちゃったりなんかして、


結婚5年目の今でも敢えてのDINKS貫いていて、
何なら独身時代以上のハードさで働き続けている。

マタニティヨガの気配は一切ないどころか、仮に妊娠したとしても
きっとギリギリまで働き続けるタイプに様変わりしてるよ。

もう1人の親友は、旦那の海外駐在が決まって
今や地球の真裏にいるし、

あなたが心配しているような定期的な近況報告会が
残念ながらまずそう開催されない。

そして、あなたはこれまで自身の趣味嗜好をよく心得ており、
付き合う相手は一筋縄ではいかないような変わり種が多かったのに、

焦りから「結婚向きの相手」に目を向けようと
いきなりの方向転換を企てようとするけど、


少なくともあなたにその方法は向かない。
悪いことは言わないから、やめておきなさい。

確かにお見合い相手の、地元の優良企業の創業家3代目くんは
良い子には違いなかったけど、
なぜかお見合い写真がモノクロという斬新さだし、

後日占い師に彼との相性をみてもらおうとしたら、
「なぜ占う必要があるの?そもそもあなた、その人のこと好きじゃないじゃない!」
鑑定さえしてもらえないくらいだよ

(その占いにも婚約直前の親友に誘われて付き添いで行くんだけど、
占い師にはちゃんとあなたには本当に占ってほしいことや相手がいないことがお見通し。
「何も見えない」って言われて占い師に気を遣わせるのがオチだよ。)

その後、初めて同い年のいかにも結婚向きなサラリーマンやらと付き合ってみようと、

the三大商社マンとお付き合いしてみた挙げ句あなたはこう言うの。



「先行きが見えなくて不安で、
そんなときに彼が現れて付き合ってみたら、
今度は彼との将来が見えすぎていてつまらなくなった。その方が怖い

ほれ、みたことか!!!

突如ジャンルチェンジを図ったのは、
TOP ofコンサバ企業の優良サラリーマンとの婚約を着々と進める親友の一言が引き金よね。

「カコは知らないだろうけど、婚活市場では彼らのような優良リーマンが引く手あまたで、
その周りには捨て身女子が信じられないほどいっぱい控えている」

続けてどんな文脈で発せられたのか
記憶があやふやだけど、


「彼とスーパーに行ったときにトマト見ながら
"ほら、やっぱり腐ってる野菜は売れ残ってるやん。とびっきり上等じゃなくてもまず腐ってない野菜から売れていく"って言ってた」

この言葉に、あなたは少なからずショックを受け、
これまでの自分の恋愛におけるチョイスを悔いるのだけど

1つ今だからわかること。

この腐ったみかんならぬトマト話の真意は置いておいても、

あなたが親友から置いてけぼり感を食らっていると感じていたのと同じくして、

親友もまた彼女が望んでいたことではあれ、
初めてのことに1人で歩み出していかなきゃいけない不安もあったのだろうということ。
選択と決断をするということは、彼女にも何かしらそれを得るために選べなかったものがある訳で
それを振り切るのに彼女自身だって自分を奮い立たせ、その選択が正しいのだと信じ続ける必要がある訳で。

それから26歳のあなたは恋愛だけでなく仕事でも行き詰まっている。


史上最年少リーダーにうっかり抜擢されてしまい、

もう上のポジションは全て詰まっているし、
幸か不幸か今の年次で目指せるてっぺんまで随分早くに到達してしまった。



ほんとは営業ではなく編集サイドに回りたいと思う気持ちがむくむくと
おっきくなっているのに、


自分に求められているのはこのまま営業マネジメントを極めることなんだと早々に諦め、

上司に相談さえせずキャリアチェンジの機会はないと見切ってしまっている。

(因みに上司に相談する、希望を伝えるという選択肢さえ
はなから放棄してしまいがちなのは、いまだにあなたの良くないところだよ。)

あなたが退職した後に着任するリーダーも
同じような不満、願望を持っているんだけど、
ただ彼女があなたと決定的に違っていたのはそれをちゃんと上司に伝え続けたこと。
それが功を奏して新設の部署を立ち上げてもらうというミラクルを起こすのよ。

(彼女とあなたの社内での実績は変わらないから、
きっとあなただってはなから面倒を避けず要望を伝え続けていたら、
事態は違った可能性が高い。これ、教訓に生きていきたいね。)

年齢の割になかなかの年収を得ていたあなたは、
「年収を下げてまでやりたいことはない」と
また自分の本心と向き合いきらず
短絡的に目の前に吊るされたニンジンに飛びつく

これが悲劇の始まり。
新天地はとんでもないどブラック会社だから本当に覚悟しといて。


どれくらいやばいかっていうと、

まずあなたは社長に気に入られ、あれよあれよというまに部署を4つ兼務することになる。

その会社というより「社長帝国」では、
誰かが社長の地雷ポイントを踏んでしまうと

まさかの「集合!!」の号令がかかり、

社員という名の部員は全員メモを持参して小走りで
社長という名の鬼顧問の元に駆け寄らねばならない、という

謎ルール。

集合した先に待ち受けているのは、

「○○さんのコンマの書き方が間違ってるんだよ。
コンマは点とは違うんだよ!
わかる?点と違っておたまじゃくしなんだよ!!!
俺が桁を見間違えて発注しちゃったらどうなるんだよ??!!!」

という有難きお叱り。


因みにその後お叱りを受けた社員は、
コンマを100個練習させられてたよ,,,,,,,,,,,


大の大人が書くコンマに次ぐコンマの羅列が
あなたにこの帝国から足を洗う覚悟を強固なものにさせてくれる。

あ、そうだ。
打ち合わせ中、隣で社長の機嫌が良くなったら、
そっと彼のPC画面を覗いてみ。

4つ登録しているパパ活サイトのVIP会員で、
保護シートも貼られていないPC画面は丸見え、
女の子とのやり取りがまる透けだから。

この帝国から命からがら逃げ出したあなたは
なんとか今の会社とのご縁を得て、
theホワイト大手に亡命したわけだけど、

やっぱり見てみぬふりし続けた
「書きたい欲」は収まらず、まわりまわってライターも始めることになるよ。

そもそも26歳のあなたの最大の誤りは、
自分の仕事での行き詰まりを「結婚」というカードを切って相殺しようとしたこと。

根本解決にならない小手先の打開策は上手くいくはずなんてなく、
空回りばかりして周囲も巻き込み、
相手やあなた自身も傷つけ、疲弊しちゃうよ。



他力本願ってほんとに辛いよ。
自分でコントロールできないことに身を委ねるってことだから。


恋愛も途端に楽しめなくなっちゃうよ。
常にジャッジのし合いで、
自分の今の発言が「結婚候補」として正しかったのか、何点だったのか、
模範解答は何だったのかと、
そんなことばかり頭がよぎるようになってしまうから。


そもそもエネルギーを持て余しがちなあなたが
専業主婦になってしまったときにゃあ、
毎日毎食フルコース、デザート付メニューを用意しかねず、


「今日はあおさ入の味噌汁を飲みたいなぁ」なんていう食傷気味の旦那にとっては
too much以外の何物でもない

あなたの有り余る母性を旦那と子どもにだけ注ごうものなら
多分窒息死させちゃうから



つまり26歳のあなたへ、
あなたはあなたらしく、
そうしか生きられないのだから。

恋愛も仕事も綺麗になんかまとまろうとするな。
どうせ迷惑かけるならとことん、
誰かの座標軸ではなく
そしてまだ見ぬ将来の自分のためでもなく
紛れもない今の自身の心の違和感に素直に。
とにかくあなたがご機嫌で過ごせるように。
不機嫌なアラサーほど迷惑なものはないよ。


そして「経験がないから」だなんて律儀な真似はやめて、
現代の神器SNSを駆使して、しのごの言わずライター募集に応募して
さっさとnoteを書きなさい。

大丈夫。
2020TOKYOのあなたは、確かに悪くはない、”甘くて苦い今”を生きてるよ。

当時のあなたは手にしたものがどんどん零れ落ちていく感覚だっただろうけど、
たとえその中に残ったものが数少なくっても、またそこから始められるよ。

最初はスケールダウンしたように感じたとしても
少なくとも自分の人生が他の誰でもない自分の手の中に握れているって、
幸せなことだと思うのです。


#いま私にできること  
#最も血迷っていた頃の自分に言ってあげたいこと
#誰しもある黒歴史
#文を書くとは恥をかくということ

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