見出し画像

傘に仕返しされるかも?

 「あ、傘忘れた!」と思ったのは、スーパー前で待ち合わせたパートナーの傘を「持ってあげる」と手にして数歩足を踏み出した時だった。

 仕事場を出る時、確かに私も傘を手にしていた。その時は止んでいたけれど、道路は雨で濡れていて、またいつ降り出してもおかしくないような雲行きだったから。以前に雨が降った時に持ってきて、帰りには止んでいた日に仕事場に置いて帰ったビニール傘を持ち帰るのにいい機会だと思った。

 待ち合わせの前にATMに寄った。鞄の中のキャッシュカードを取り出すのに、傘を持っているとうまくいかず、傘を置ける場所を探して、機械と壁の間にちょうど傘が一本立てかけられそうなスペースを見つけた。

 こういう場所に置くと忘れるんだよなという言葉が一瞬頭をよぎったけれど、とりあえずそこに置き、機械を操作する。

 終わってカードとお財布をしまうのにまたもたついてしまい、後の人が来るといけないからとそそくさと機械の前を離れる。案の定、傘のことなどすっかり忘れて。

 それから、パートナーと待ち合わせのためスーパー前に移動。なかなかこないパートナーを待つ間も傘のことなどすっかり忘れて、30分後に合流。荷物が多く、持ちづらそうだったパートナーの傘を「持ってあげるよ」と持って、「あれ?」と思う。

 ここまでは、誰でもありがちなこと。でも、「仕返しされるかも」と思ってしまうのは、そこから傘を取りに行かなかったこと。

 歩いて戻っても行ける場所に忘れたことがわかっていて、30分以上経っていたとはいえ、ビニール傘の忘れ物など誰も持っていかず、まだそこにあったかもしれないのに。パートナーと行く先をちょっと横にそれれば行けたのに、その地点に行く頃にはそれも忘れて次の場所に移動してしまった。

 しかも思い返すと2ヶ月ぐらい前にも似たようなシチュエーションで傘を忘れた。

 移動の途中で休憩に入った駅ナカのカフェで、傘を置く場所がなく、椅子と壁の間の隙間に立てかけた。この時も「こういう場所に置くと必ず忘れるんだよな」と思ったのに、やっぱり忘れた。

 その時は電車に乗ってから思い出したのだが、先を急いでいたとはいえ、電話一本かければ見つかったかもしれないのに、その努力をしなかった。

 1週間後に同じカフェを利用した時も、やっぱりお店の人に聞いてみることもしなかった。

 その傘はビニール傘ではなかったが、やはり以前にコンビニで買った安い傘。

 この時も、今回も、どこかで「安い傘だからまた買えばいいや」という気持ちがあったのは否めない。私は傘を見捨ててしまったのだ。どちらの傘も何度も使って雨から私を守ってくれていたのに。

 一度ならず二度までも同じようなことをしてしまった私は今、傘たちの仕返しを結構本気で恐れています。


 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?