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2024/06/11 SAKANAQUARIUM 2024 “turn”!

 サカナクション2年ぶりの全国ツアーSAKANAQUARIUM 2024 “turn” の大阪公演に参加してきた!単純に多忙だったり、絶望して身体が動かなかったりするんだけど、そういう日々の合間を縫って自分の言葉で感想を綴る。結局半月ぐらいかかってしまったけど、今更なんて言わないでね。

 3ヶ月ちょっと前、何となく応募したチケットが当たってすごく驚いたのを覚えている。その時点では「サカナクション?新宝島のバンドだよね」みたいな認識で、知ってる曲は5, 6曲。本当に全然知らなかったんだけど、当選を機に本格的に漁り始めた。そこからハマって今では新参のファンになっている。ファン歴3ヶ月。
 なので、参加するに当たって一抹の不安があった。サカナクション復活が高らかに掲げられた今回のツアーは、およそ2年前からはファンだった人をターゲットにしてるのかな?と。でもそんなのは豪雨で洗い流されたかのように、ライブ後には「あ〜楽しかった!」と言えるくらい、新参者の私も、復活を待ち望んでいたファンも、一緒に楽しめるライブだった。

豪雨のグッズ販売

 私は大阪公演Day1@大阪城ホールに行ってきたんだけど、当日はまさかの豪雨。濡れまいとする努力も虚しく、会場(=大阪城ホール=城ホ)に着く頃にはズボンの裾がビショビショだった。ショートパンツで来れば良かったのかもしれないけど、さすがに寒いし……。
 たくさんの傘が見えたので近づいてみると、どうやらみんなも同じ理由で近づいてきた人達みたい。グッズの販売はまだ始まったばかりで、呼び出しはそんなにされてない。私は近くに屋根が無いかと歩き回って、フォトブースの前に辿り着いた。同じように雨宿りしに来た人もいれば、フォトブースの呼び出しを待っている人も、もちろんいた。
 雨宿りしている間、雨は強くなったり弱くなったりを繰り返している。それを見ながら「これなら大丈夫かな」と思った。山口一郎が鬱と共存していくまでのドキュメンタリーの中で、メンバーは「雨が降ったら山口一郎は来る」と語っていたから。それが本当なら、多分今日は来てくれるだろう、と思った。

 それから1時間ほど経ち、そろそろ暇に耐えかねていた頃。スマホを見やると、急速に呼び出しが進んでいた。私も急いで噴水のあった広場に移動する。とはいえ用心深すぎて暇を持て余すのが私。まだ100人弱はいるっぽいので、マンホールの上(水溜まりになりにくい)で待っていた。
 雨が強くなる。風もかなりある。前の人が後ずさって来て、私の傘の下から自分の傘を入れ込んでくる。その傘からの雨垂れで靴の先が濡れた。何か無いかと辺りを見ると、城壁っぽい大きな壁がある。あの近くなら少なくとも壁側は気にしなくていいな!と思って慎重に移動した。意味があったのかは分からないけど。

 それから間も無くして、私の番号が呼ばれた。最初は遅れてるかな〜と思ってたけど、13:30の枠はそこそこ順調に呼ばれてるっぽい。半分滝みたいになっている階段を、前の人と間隔を空けつつ登る(詰めるとさっきみたいな雨垂れをくらうし、私も前の人の服を濡らしてしまう)。
 列は滞りなく進み、私はお目当てのキューブカレンダーとマフラータオルを買った。浮かれていて判断力が落ちていた私は「900円か!安いな!」と、ランダムキーホルダーも1つ買った。後悔は全く無いけど、900円は決して安くないよ……?

 天蓋のような簡易テント(名前何あれ?)の下でみんな戦利品を整理していたので私もそっちへ。屋根の下の割には空いているな……と思っていたけど、移動してみてわかった。空いているスペースはそのまま深い水たまりの場所だ。これまで慎重に歩いて来た私は、それに気づかないまま靴底を水に沈めてしまった。
 慌てて飛び退いて、傘を開く。靴下を二重で履いていたことが幸いして、足が濡れている感覚やそれによる不快感はない。しかし、雨足も風もさらに強くなる。戦利品を整理するのは建物の中に移動してからにしよう。

道中が暇でしてた(というかずっと続いてる)LINE。
相手は院試で手を差し伸べてくれた人。
ようやく冗談を言えるくらいの仲にはなれました。


レーエンデ国物語

 とりあえずGoogle Mapsに「近くのカフェ」と打ち込む。スタバがヒットしたけど、近すぎて多分もう満席だ。なので少し歩いたところにあるカフェを目指した。
 読売テレビの建物の下、少年探偵団の銅像の横を足早に通り過ぎて、目的のビルに入る。そこで目的地を変えた。ミスタードーナツが見えたから。お昼ご飯を今食べなきゃ、夜は相当遅くなるので途中で空腹になるかも。かといって普通のご飯屋さんは3時間も居座ったら大迷惑。それならギリギリカフェとしての機能もあるミスドを利用しよう!(宣伝)

 朝食からかなり時間が空いていたので、ドーナツを3つとアールグレイティーを注文して窓際の席を選択。背もたれが無かったのは失敗だったけど、やっぱり私は外の景色が見える席が好き。大学の図書館で自習する時も、最上階の山の稜線が見える席を探しているしね。
 すぐに食べ尽くしてしまわないよう気をつけつつ、持って来た本を開く。タイトルは「レーエンデ国物語」。

 久々に本格的なファンタジーが読みたい、1冊で終わるんじゃなくて、できれば1年ぐらい追いかけられるような冊数が既に出ているものがいい、という2つのわがままを叶えてくれたのがこのシリーズ。
 まだ1冊目、それも第四章までしか読んでないけど、なかなか面白そう。個人的に政争や地理的な話をちゃんとするあたりが信頼できる。久しぶりにしっかりしたファンタジーに触れられそうだ。

 細かい気になる点があるとすれば2つ。両方とも「知らないから全然想像できない」という部分が気になる。ただ本当に些細なことで、むしろ逆に「今まで読んできたファンタジーは良くできてたんだなぁ」とその技巧が初めて目に入ったという感じ。

 1つは序盤から地名を知ってる前提で話が進むこと。もちろんファンタジー小説お決まりの地図は付属してるんだけど、それでも「〇〇州の△△近郊では××という種族と◻︎◻︎という種族が争っていて〜」みたいなのが最初から大量に出てくると、その度に地図を見なければならない。出てくるのは全然良いんだけど、さすがに多い。そのため、個人的に没入するまでの手間がかかり、ここで辞める人もいるだろうなと感じてしまった。
 また、その地名が地図に載ってるならいいんだけど、地図にない街がかなり序盤から、しかも無くても話はわかる段階で出てくる。そうなると次の展開にはその街の情報は必要ないので、それがどこなのかが覚えられない。私は話が脱線したような感覚になってしまった。説得性が増すから大歓迎なんだけど、街を出すならもう少し描写を厚く細かくして欲しかったな〜、それぞれを本格的に訪れた時に知りたかったな〜というのがわがまま。
 もう1つは距離の単位。知らない。これに関してはパッとイメージできないので、せめて「歩いて何日」とか言っておいてほしい。お金の単位は前後の描写や買っているものからある程度想像できることもあるけど、距離は補足がないと本当に分からない。今登っている崖がどれくらいの高さなのかが想像できず、ちょっとしたクライミングなのか、それとも迂回したいレベルなのかが分からない。これも世界観を裏打ちしてくれてるんだけど……そうなんだけど…………。

 ただ「知らない」は「知っている」になれば問題はない。つまりこれらは慣れていけばどうってことはないはずなので、このまま読み進めることにした(さすがに気温や湿度、重さや体積まで知らない単位が出て来たら折れるかも)。なにせかなり評判の高い作品だ。ここで辞めてしまうのは勿体無い。そうで無かったとしても、昔読んでいたファンタジーがいかに凄かったのか、分析しなおす機会にもなるし。
 実際私はドーナツを齧りながら3時間以上、夢中で読んでいた。これからどう物語が転がっていくのか、すごく楽しみ。


開演

 3時間ほど経ち、さすがに目も腰も疲れて来て、アールグレイティーについた結露がお盆を水浸しにしていた。そろそろ会場に移動したほうが良いかということで、また雨の中城ホ前の噴水に戻る。
 雨は少しマシにはなっていたけど風は衰えていなくて、何度か傘がまともに風を受けて危なかった。噴水前には開場を待つ傘がたくさんあった。程なくして開場時刻となり、中に人が吸い込まれていく。

 私はスタンドA席、それも相当後ろの方で、ステージを右側に見る形になった。まぁ「復活」と銘打ったツアーにおいて、ファン歴3ヶ月にあてがわれる席にしては相当いいものをいただけたんだろう。
 開演を待つ間は恒例のファン層チェック。やはりと言うべきか、他のどのアーティストよりも年齢層は高め。託児サービスや子供用イヤーマフが貸し出されているのも、お子様連れのお客さんに対する配慮だろう (これ結構私感動したんですがどうですか)。私の隣にも、仕事を何とか終わらせて駆け込んできたサラリーマンがやって来た。もちろん若い人もいる。
 大人が多いからか、グッズで全身固めた人の割合が他のライブより低い気がした。なんなら見る限りはグッズを身につけていない人も結構いる。Tシャツやタオルをライブの度に買っていると、タンスがあっという間に閉まらなくなることを知っているんだろうな。

 そういえば水を買ってないな……と思い、傘以外の全てを持って一度席から離れる。城ホに入ってからの水資源は限られている。それを見越した値段設定なので、どれも高かった。外の自販機に思いを馳せる。「あんまり飲みたいもの無いな〜」とか言って素通りするんじゃなかったなぁ。仕方ないので1番安い350mlの水を買って戻った。
 大体この時間は興奮を抑える以外やる事なんてないんだけど、今回は開演直前のアナウンスが面白かったのでその話を。よくあるのは「本日は、(ツアー名)にお越しいただき、ありがとうございます。開演に先立ち〜」みたいなやつ。今回もそれが流れると思っていたらいきなり「以上を持ちまして、全ての公演が終了〜」と言い始めたので、みんなビックリ。一拍おいて大爆笑。そして拍手。この流れがなんか大阪っぽい。大阪だからと言ってなんでもそういうことにするの良くないんだろうけど、今回は許してよ。

 そんなことがあってから暗転。既にちょっとだけ幸せな私たちは、いよいよサカナクション復活を刮目する時を迎えた。


SAKANAQUARIUM 2024 “turn”

 独特な形の紗幕に映し出されたのは雷雨。どこと無く不穏な気配。なんなら外よりも荒天だ。雨が似合いそうなバンドではあるから良いんだけど(こんなこと言うと怒られる?)。雷鳴がなっていたかと思えば、いつの間にかそこには「復活」「turn」の文字が踊っていた。バックで流れているのは、(この時はSEだと思っていたけど)Ame(B)という曲。この焦らされ方、私好きです。
 徐々にボルテージが上がってウズウズし始め、それを察して紗幕が袖に消えていった。代わりにサカナクションの面々が姿を現し、陽炎で幕を開けた。バックには「サカナクション復活」の文字が大きく映し出されている。
 ナメていた。1曲目からめちゃくちゃ盛り上がるじゃん。みんなで手を左右に振る動き(ワイパーみたいなやつ)、地味にやったことなかった。なんか「大人見」みたいな人がたくさんいるかもしれないから、最初は様子見ようかな……って考えてたけど、そんなの全然必要なかった。

 畳み掛けるようにアイデンティティ。サカナクションのライブはこんな感じです、というような名刺を受け取ったみたい。「そう!」とか、サビのラララで振る腕とか、誰からともなくその場で生まれる一体感に、自然と混ざりたくなってしまう。音源を聴いてる時には意識してなかったけど、サカナクションの曲にはきっと随所にそんな種が蒔かれている。それがライブで一斉に花開く瞬間は圧巻そのものだった。
 知ってる曲が続いてルーキー!とにかくレーザーが美しい。それと「見えない夜の月の代わりに引っ張ってきた青い君」の合唱。こちらの心を引き込むものがある。
 青い君といったらAoi。ここまでベストアルバムで言うところの深度浅めの曲で、歴浅めの私はちょっと安心している。「痛いほど本能で踊って」なんて、言われなくても!こと踊りやすいナンバーが続いているしね。ギリギリ絶高の世代では無さそうだけど、良いよね。この辺りで肩から下げていたタオルを外した気がする。踊るのに邪魔だったんだよ。
 「踊りたくなる」という意味において、これまで行って来たどのアーティストのライブよりも、強い力を持っているというのがここまででの印象。脚が勝手にステップを踏む。体は勝手に左右に揺れる。腕と頭は勝手にリズムを刻む。それはユニゾンとは別種の素晴らしい魔法だと思えた。
 少し彩度が落ちた会場で演奏されたのはプラトー。私この曲アダプトの中で1番好きなので嬉しい。何となく月の腕が選ばれるかなという気がしていたので、驚きもあった。2番に入る時から主張してくるベースラインが特に好きで、今回はspeaker+の助けもあって、それがよく聞こえた。濡れたズボンの裾がその低音で揺れていた様な気がする。
 あと結構落ち着いて聞ける部類の曲なんだこれ。ライブになると違った顔を見せる曲が、なんだか多い気がするサカナクション。常にサプライズがあって良いね。

 ちょっと水を飲む時間があって、次は何?と期待感が膨らんでいく。そしてイントロが鳴った瞬間、私は息を呑んだ。ユリイカだ!最近私の感情をグチャグチャにしてるユリイカだ!背後に映るビルの映像と良く合う。「ここは大阪だよね」という雑念が過ったおかげで泣きはしなかったけど、かなり危なかった。大音量で浴びせられるユリイカに、私は目を閉じて浸かっていた。
 ライブはこれを皮切りにしっとりパートに入った。ユリイカで完全に消耗し尽くして、このままだと倒れるのいう確信があった私は、このパートはしっかり聴くことに専念した。
 ここまで全曲知っていたけど、これは知らない曲。さすがにファン歴3ヶ月の限界が来たか。流線。疲労と酸欠でボーッとして来ていた私には、心地良すぎるメロディ。ユリイカに続いてまるで柔らかく暖かい、Yogiboみたいな何かに包まれているような気がしてきて、危うく体重を預けそうになる。
 次のナイロンの糸は知っている。流線でも思ったけど、ナイロンの糸の「甘えてる様」の部分の声の伸びが、真っ直ぐ耳に届いて気持ちがいい。子供の感覚を取り戻さんとする願望を歌うこの曲は、ちょっとずつ「大人の目線」を獲得しつつある私には重い。重いが故に心に響く。それが真っ直ぐ産地直送で届いてくるわけだから、騒いでいたさっきまでとは違う心で大事に受け止めなきゃ。いや、騒いでいる時の私の方が遥かに純粋だから、そっちで受け止めた方が良かったのかも。
 ネプトゥーネスは知らない曲だった。眠いけどまだ眠らない、でも超眠い。みたいな、0時頃に流して欲しくなる曲。というか疲れているところにここまで優しい曲が流れてくると、本当に身を預けたくなる。良いライブに来たなぁ……。普段の他のライブじゃ、こんな感覚になることはない。まあ、数十分後には吹き飛ばされることになるんだけど。
 ところでこのパート、曲間が繋がっていたりアウトロが長かったりで拍手のタイミングが難しく、ナイロンの糸辺りは拍手が無かった気がする。タイミングが無かっただけで全然拍手したかったよ!あまりに夢見心地だったというのもあるけどね。

 しっとりパートからまた盛り上がっていくその過渡期にピッタリな選曲。さよならはエモーション。ピッタリすぎるよね。この曲について深く考えたことはないけれど、さよなら=エモーション=感情ということなら、何となく今の時代とは相反すると思う。というのも、現代は常時接続の時代なので、意図的に断絶しない限り完全にさよならするのはそこそこ難しい。環境が変わっても、ぼんやり疎遠になるくらいで、必要に迫られればすぐ繋がれる。そんな時代だから「さよなら」に含まれる色んな感情が、どんどん希釈されている気がする。でも本来、さよならって悲しみや感謝など、色んな感情が込められる言葉じゃなかったっけ。そんなことを生演奏を聞きながら考えていた。
 そして次の、ホーリーダンスのイントロがかかり、しっとりパートの終了が正式に宣言される。個人的には意外な選曲だったので、あの独特な音を聞いた瞬間に面食らった。真っ直ぐ伸びたあと、横に揺れるようなイメージで踊っていた。

 そしてここからの3曲ぐらいが、このライブの私的大トロ部分!
 一旦紗幕が閉じ、メンバーはその裏に消える。しばし映像やレーザーの演出を楽しんだのち、菱形に紗幕に窓ができた。そこにはDJスタイルのメンバーがいた。もしかしなくても分かる。リミックスだ!そういうことやるんだ!
 ライブの醍醐味は「ここでしか聴けない音を聴ける」だと思っているんだけど、今まで私は生演奏らアレンジとしてのそれを楽しんできていた。リミックスという形で提示されるのは初めてで、気持ちが高揚するのを感じた。「これから非日常の中の非日常に連れて行かれるんだ!」高2の時に初めて行った、Alan Walkerのライブを思いだす。あの時の気持ちも鮮明に思い出せたし、そういう気持ちに5年くらい経ってもなれるのが嬉しかった。

 1曲目のリミックスは『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』この曲ってリミックスされるんだ!という(ファン歴3ヶ月から見た)意外性。菱形の紗幕と中央の窓から覗くメンバーにとても合ったレーザーや映像が、さらに絢爛すぎる華を添える。正直ここだけでも、もう1回ライブに来るに値するレベル。クラブみたい。ライブを通して1番トリップしていた瞬間だと思う。
 2曲目のリミックスはネイティブダンサー。バッハとは違う方向で魅せてきた。聴けたら良いなぐらいの気持ちだったのが、最高の形で流れてきて頭がおかしくなりそう。イメージ的に青→紫とリミックスパートが進行してきていて、本当に現実感が無かった。流線やナイロンの時とは違う意味で。
 DJパートのラストを飾るのはミュージック。これもリミックスといえばリミックスだけど。私がサカナクションで初めて知った曲。一気にカラフルな映像になって、盛り上がりも最高潮。もう脚が震えてしょうがなかったはずなんだけど、全然覚えていない。反対に紗幕が袖に消えていくと同時に、バンドスタイルに戻ったサカナクションの姿がすごく鮮明に焼き付いている。

 さて、現実に戻ってライブも最終盤。ショック!私がサカナクションをディグるキッカケになった曲。あのワキワキダンスを実際のライブでできたのが嬉しい。意外と周りにやってる人いなかったから、次のライブではみんなでやりたい。各々が自由にやるのも良いけど、その上でサカナクションは一体感を結構大切にしてるタイプな気がしたし。
 終わりに向けて盛り上がりを加速させるモス。「マイノリティ〜」って歌うのがマジョリティになる不思議な感覚。ノリ方が少し私には難しかった分好きに踊っていたら、あのニョキニョキダンスが始まってそこに混ざったり、私が色んな楽しみ方をしていた曲だと思う。

 加速した盛り上がりを最高速にしたのが、言わずと知れた新宝島。やっぱりあのイントロが鳴った瞬間の、客席の盛り上がりが他とは一段違う。私も瞳孔が開かれるのが分かった。ダンサーの人たちも出てきて、いよいよ最後にブチ上げて来ているのも分かる。個人的には間奏のギターに痺れました……。ずっと涼しい顔で弾いてるのよね。寡黙なギターソロはカッコいい。大人の余裕!って感じ。
 「忘れられない日になったら良いなと思います」というMCで予測されたように、本編は忘れられないので締め括られた。思い出について歌った曲で幕を閉じるのは、手垢のついた演出ではあるけれど、だからこその感動があった。また、ライブ前に読んだ文章で「サカナクションのライブは徹底した予定調和があり、だからこそサプライズが際立つ。」という趣旨の主張がされていたが、その意味も何となく分かった気がした。
 「永遠にしたいこの夜を そう今も想ってるよ」とあまりにもピッタリすぎるフレーズを完璧に歌いきり、万雷の拍手を背に本編は終了した。

 アンコール。周りに立ってる人はそんなにいなかったけど、私は今座ったら立てなくなる自信があったので、立ちっぱなしで手拍子に加わる。いくらか時間があって、手がだんだん痺れてくる頃に、メンバーが再登場。
 1曲目は夜の踊り子。私の大学院入試をとにかく支えてくれた曲。就活も支えてもらうかも。私もしんどい日々が続いているねぇ。一度逃げても良いけど、諦めずにどこかでは向き合おうね、という気持ちになれる。

 ここでようやくMCが入る。そういえば本編は、ちょくちょく声かけとかがあったけど、ちゃんと話すタームはなかったっけ。やっぱりライブのMCは少ければ少ないほど好みかも。あればあるで良いんだけど、どちらか選べるなら、という話で。
 ただこのMCは聴いておきたいものだと思う。特に活動休止(ではないけど)前からサカナクションのファンの人は。もう元には戻れないけど、新しいサカナクションになっていく。そして皆さんにより一層の感動を届ける。キッチリ準備された文章じゃなくて、やっぱり生の声で、言葉を都度選びながら話してくれると、説得力もあるしグッとくるものがあるね。
 これの話と一纏めにして良いのか分からないけれど、このツアーはかなりしっかりめのスポンサーがいるみたいで、その話もしていた。今までそういう「大人の」MCは無かった。ここまで大きいアーティストになると、そういう支援と責任があるんだね。そういうのってカッコいい。そういうキャリア歩めたら良いなぁ。

 MCに区切りをつけると、懐かしい曲を、というアナウンス。なんだろう。セントレイかな。白波トップウォーターかな。サンプルかな。
 なんとなんと選ばれたのは三日月サンセット。嬉しい〜!以前の日記にも書いたんだけど、大好きなんだよこの曲!情景描写がすばらしい!アンコール、それも2曲目のタイミングでこれを差し込んでくるなんて、サプライズが上手すぎるよ……。照明の綺麗なオレンジも良いし、何よりサビ前の高音のシンセ(キーボード?)が音響パワーでクリアに聴こえる。全編通して言えることだけど、凄まじいまでの没入感がある。

 そんな音響パワーはspeaker+というものが導入されているおかげだということが、再びのMCで説明される。「お金の力だ!」なんて言っていた。聴覚的な死角が減るということは、色んな人に届くということでもあるし、元々聴こえていた人に対してもさらに全方位からのアプローチが可能になってるということでもある気がする。持論。違ってたらすみません。
 それゆえなのか、今夜はとにかく音に包まれている感覚がする。いつもより大人しめの曲のはずなのに、トリップしているのはそのせいなのか。
 そのspeaker+の力をしっかり感じるべく、新宝島がワンコーラスだけ演奏された。途中から音響が切り替わったんだけど、案外分かるものだな〜と思った。いやでも、私だけ全然違う部分でしたり顔して「やっぱり違うな〜」とか言ってたらどうしよう。まぁ学生だし、違いが分かんなくても許してよ。

 そしていよいよ最後の曲。アダプトからシャンディガフ。個人的に1番意外というか、予想外の選曲だった。軽快さや明るさすら感じる、ピアノやアコギによる旋律をベースに、背景にはエンドロールが流れていた。少し気だるさを帯びたような軽妙な雰囲気が好き。そこまで深いメッセージ性は、個人的には感じないんだけど、そうだからこそ〆の曲として相応しい気がした。
 そして最後の最後、全員で肩を組んで「ありがとうございました!」と叫んで、サカナクションは袖に消えていった。

 素晴らしかった。例によって全部出し切ってヘトヘトで汗もかいてて、帰りの電車では座るのも立つのも嫌という。
 終わってから感じた、今までのライブと違った点は、終わった瞬間から既に「次に行きたい!」という気持ちがあること。他のは「よかった!明日から頑張ろう!そんでまた来よう!」という気持ちになるんだけど、今日は「もう既に次が待ち遠しい!」という気持ち。私史上最速。
 なかなか当たらないだろうし、そんなにずっとライブばかりやるわけにももう行かないだろう。それでも、私はもうサカナクションに飢えています。今年はさすがに難しい (時間も金銭も余裕ナシ) と思うけど、来年またライブをやってくれるなら、絶対行きたい!セントレイにエンドレスにシーラカンスと僕に多分、風。まだまだ聴きたい曲がたくさんある。

 またライブに足を運ぶアーティストが増えてしまった。色々と工面するのは大変だけど、好きなものや楽しみが増えるのは良いことだよね。ファン歴3ヶ月だけど、とても楽しい夜になりました!サカナクション大好きになったので、これからも追いかけていこうかな。

終演後に撮影
とにかく舞い踊っていた良い夜だった

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