夜中に空き巣に入られた話

空き巣に入られた。東京で彼氏と半同棲していた頃だ。

下高井戸駅から徒歩１５分ほどの立地のその場所は、確かに治安が良いとは言えない場所だったのかもしれない。

でも別に、さして悪い雰囲気もしていなかった。

それは彼氏と眠りについて数分後のことだった。

当時家の中はこんな感じの配置になっていて、私はその時窓側で寝ていたので、玄関が視界に入った状態でスマホをいじっていた。

するとスマホの視界からそれたところで、真っ暗なはずの部屋にうすい明かりの線がちらつく。

私は視線をそちらへ動かした。

スマホはそっと閉じた。

視界の端にあった焦点を、正面に持ってくる。

（表現あってるのかこれ）

つまりまっすぐ玄関を見る。

少しずつ光が差し込み始める。

このフレーズ、登山で登頂しましたって記事で書いたなら、感動的なシーンなんだけど。

残念ながらそこは世田谷区の１R賃貸アパート。

差し込んだ光はだんだんと厚みを増してきて、

そこには人影も見えだした。

　　　　戦　　慄

「ねぇねぇ玄関が開いてる！人がいるよ！起きて！」

必死で彼氏を起こす。

「え？は？」

もう寝落ちていた彼氏は寝ぼけている。

どうしよう殺人的空き巣犯だったら！！！

という恐怖に、とにかく私は声を出した。

すると犯人は「見つかった！！」とばかりにすぐに引っ込んだ。

面白いと言うか怖いと言うか、展開はまだ終わらない。

当時の部屋は角部屋ではなく両サイドが在宅の状況だったのだが、

ドアが閉まってすぐ、隣の部屋がバタバタと騒がしくなったのである。

なんなら私は耳が良いので、自分たちが寝る準備を整えたタイミングで、隣人が玄関に向かって歩いていく気配も感じていた。

それから玄関が静かに開き、

私が気付いて玄関は閉まり、

直後、

隣の部屋のドアが勢いよくバタン！と閉まったのだ。

警察を呼んだ。

事情を説明した。

さすがにいきなり隣人を事情聴取とまではいかない。

なんせ隣人は愛するものだとどっかの神様がおっしゃってる。

警察も当然、証拠がなければそういうことはできないと言う。

ひとまずその日はひととおり事情聴取してもらい、

深夜の警備を強化しますってことでおまわりさんは帰っていった。

実はもうひとつ続き、ではなく、前編がある。

私が気付いてしまった空き巣事件の数日前だ。

その日私の誕生日が近いということで、彼氏がパンプスを買ってくれた。

白い花のレースを基調としたシンプルなデザインのパンプスだった。

私は次の日そのパンプスを履こうとウキウキして眠りについた。

翌日。

んれ？

「ダーリン昨日買ってもらったパンプスってどうしたっけ？」

「え？玄関に置いとったんちゃうん？」

「そうやんなぁ。置いといたと思うねんけど……ないねん。」

ほら。

とその１Rの小さな玄関を見回す。

断わっておくが私は大のきれい好きだ。

掃除も整理整頓も大得意。

玄関にないから部屋も探してみたけど、やっぱり見つからない。

「せっかく買ってもらったのに(;_;)」

「またこうたるよ〜^^;」

ということがあった。

そしてそのパンプスがなくなった前日も、夜中に隣人がバタバタしたり私達が寝静まった頃に玄関が開く音を私は聞いていた。

ただその日は部屋とキッチン水回りのスペースとの間のドアを閉めていた。

玄関は締まっていなかったんだねきっと。

私は当時都会に住んでまだ半年ほどで、東京に対してそれほど警戒心を持っていなかった。

だから戸締まりに甘かったのは確かだ。

部屋にいる状態で空き巣。

これって空き巣って言わない？

正しい呼び方があったら教えてください。笑

以上夜中に空き巣に入られた話でした〜。