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医薬部外品と浴用化粧料

 入浴剤を調べていくと、浴用化粧料と医薬部外品の2つが出てきます。この違いは何かについて、簡単に解説します。

薬機法による規制

 入浴剤は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(通称:薬機法)により規制されます。薬機法は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行うとともに、指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ることを目的とする法律です(法1条)。
 以前は、薬事法とも呼ばれていましたが、2014年に法改正があり、薬機法と呼ばれるようになりました。

 一般入浴剤は薬機法の医薬部外品化粧品に分類されます。

医薬部外品

 医薬部外品とは、次に掲げる物であって人体に対する作用が緩和なものをいいます(法2条2項柱書)。
1号は、吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止、あせも、ただれ等の防止、脱毛の防止、育毛又は除毛の目的に使用される物
2号は、ねずみ、はえ、蚊、のみなどの防除の目的のために使用される物
3号は、医薬品に該当する疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物や、身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物のうち、厚生労働大臣が指定するもの
 この3号の厚生労働大臣が指定するものとして、平成21年2月6日「薬機法2条2項3号の規定に基づき厚生労働大臣が指定する医薬部外品」(厚生労働省告示25号、平成26年11月21日改正439号)では27号まで指定されており、26号に「浴用剤」が指定されています。他にも13号には「滋養強壮、虚弱体質の改善及び栄養補給が目的とされている物」や、19号には「肉体疲労時、中高年期等のビタミン又はカルシウムの補給が目的とされている物」が指定されています。
 これで、医薬部外品としての入浴剤(浴用剤)は、薬機法2条2項3号から、疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物や、身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物で、厚生労働大臣の指定された26号に該当するものになります。

 医薬部外品として認められている入浴剤の効能又は効果は、平成27年3月25日「浴用剤製造販売承認基準について」(厚生労働省医薬食品局長・薬食発0325第39号)にて、
(1)あせも
(2)荒れ性
(3)打ち身(うちみ)
(4)くじき
(5)肩の凝り(肩のこり)
(6)神経痛
(7)湿しん(しっしん)
(8)しもやけ
(9)痔
(10)冷え症
(11)腰痛
(12)リウマチ
(13)疲労回復
(14)ひび
(15)あかぎれ
(16)産前産後の冷え症
(17)にきび
とされています。

 剤形は、粉末状、粒状、打型状、カプセル、液状等とされており、浴槽の湯100L当たりの投入量は10.0~50.0g又はmLとし、用法や容量は、誤用される余地のないよう明確な表現で具体的に記載することが求められています。

 また、薬用化粧品化粧品的医薬部外品(平成29年9月29日「医薬品等適正広告基準の改正について」(厚生労働省医薬・生活衛生局長、薬生発0929第4号)及び平成29年9月29日「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」(厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課長、薬生監麻発0929第5号))のことであり、品目ごとに成分分量を審査のうえ承認されたものであるので、承認された範囲内で表示することできます。ただし、医薬部外品本来の目的が隠ぺいされて化粧品であるかのような誤解を与えないことや、化粧品的な使用目的、用法で使用された場合に保健衛生上問題となるおそれのあるものではないこと、効能効果が医薬部外品の効能効果として承認を受けたものであるかのような誤解を与えないことに配慮すれば、一定の範囲内での効能表現の記載が認められます。
 薬用入浴剤医薬部外品です。

浴用化粧料

 浴用化粧料とは、化粧品のことであり、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいいます(法2条3項本文)。そして、ただし書きでは「医薬部外品を除く。」とありますので、医薬部外品に該当するものは化粧品ではないことになります。
 化粧品の効能は厚生労働省からの通知に記載されており、平成23年7月21日「化粧品の効能の範囲の改正について」(厚生労働省医薬食品局長・薬食発0721第1号)では56の効能が記載されています。

 このうち、入浴剤は、(17)(よごれをおとすことにより)皮膚を清浄にする、(21)皮膚をすこやかに保つ、(24)皮膚にうるおいを与える、(28)皮膚の乾燥を防ぐなどが該当すると思います。

 バスクリンのFAQではこのようなことが書かれています。

Q なぜ医薬部外品ではなく浴用化粧品なのですか。
A 「大人のバスクリン」は、上質な香りと優雅な湯色でリラックスタイムを演出し、年齢に応じた保湿ケア(エイジングケア)を目的とし、より目的に合った処方設計に改良したため、浴用化粧料としております。

 目的を保湿ケアにしたから、浴用化粧料としています。法律上の定義では、化粧品から医薬部外品は除かれているため、疾病の診断、治療又は予防に使用されることを目的とする場合や、身体の構造又は機能に影響を及ぼすことを目的とする場合には医薬部外品になるため、上記のような目的で開発されているということでしょう。

医薬部外品の表示・広告の自主基準

 浴用剤の医薬部外品や浴用化粧料は、直接の容器に記載する項目が義務付けられています(法59条、61条)。さらに、自主基準として日本浴用剤工業会が平成25年6月10日「浴用剤(医薬部外品)の表示、広告についての自主基準」を厚生労働省に提出し、事務連絡として都道府県薬務主管課に送付されています。
 効能・効果関係の留意点として以下を挙げています。
①温浴効果による承認された効能効果の諸症状の緩解の範囲をこえて、治療、予防できる旨の表現は行わないこと
②鎮静効果がある旨の表現は行わないこと
③具体的な図表を用いて、効能効果を保証するような表現は行わないこと
④効能効果が有効成分の直接作用であるとする表現は行わないこと
⑤製品表示における効能の特記表現として、製品への表示において効能を特記する場合、特定効能の専用であるかのような誤認を与える表現及び容器に記載されている他の表示に比べて文字ポイントを過大に大きく記載するなど特定の効能を強調する表現は行わないこと

 温泉に関する表現として以下を挙げています。
①温泉の湯が再現できるかの表現は行わないこと
②販売名として温泉地名で承認を得たもの、又は愛称として温泉地名を標榜したものについては、温泉の湯の再現ではない旨のデメリット表示を行うこと
③温泉地名を付したシリーズ申請で承認を得た浴用剤に関し、浴用剤毎に効能効果の一部を表示し、浴用剤毎に効能効果が異なるような認識を与える表現は行わないこと
④温泉の泉質を示す表現は行わないこと

 森林浴に関する表現として、森林浴が再現できるかの表現は行わないことが挙げられています。

化粧品としての56個の効能

(1)頭皮、毛髪を清浄にする。
(2)香りにより毛髪、頭皮の不快臭を抑える。
(3)頭皮、毛髪をすこやかに保つ。
(4)毛髪にはり、こしを与える。
(5)頭皮、毛髪にうるおいを与える。
(6)頭皮、毛髪のうるおいを保つ。
(7)毛髪をしなやかにする。
(8)クシどおりをよくする。
(9)毛髪のつやを保つ。
(10)毛髪につやを与える。
(11)フケ、カユミがとれる。
(12)フケ、カユミを抑える。
(13)毛髪の水分、油分を補い保つ。
(14)裂毛、切毛、枝毛を防ぐ。
(15)髪型を整え、保持する。
(16)毛髪の帯電を防止する。
(17)(汚れをおとすことにより)皮膚を清浄にする。
(18)(洗浄により)ニキビ、アセモを防ぐ(洗顔料)。
(19)肌を整える。
(20)肌のキメを整える。
(21)皮膚をすこやかに保つ。
(22)肌荒れを防ぐ。
(23)肌をひきしめる。
(24)皮膚にうるおいを与える。
(25)皮膚の水分、油分を補い保つ。
(26)皮膚の柔軟性を保つ。
(27)皮膚を保護する。
(28)皮膚の乾燥を防ぐ。
(29)肌を柔らげる。
(30)肌にはりを与える。
(31)肌にツヤを与える。
(32)肌を滑らかにする。
(33)ひげを剃りやすくする。
(34)ひがそり後の肌を整える。
(35)あせもを防ぐ(打粉)。
(36)日やけを防ぐ。
(37)日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ。
(38)芳香を与える。
(39)爪を保護する。
(40)爪をすこやかに保つ。
(41)爪にうるおいを与える。
(42)口唇の荒れを防ぐ。
(43)口唇のキメを整える。
(44)口唇にうるおいを与える。
(45)口唇をすこやかにする。
(46)口唇を保護する。口唇の乾燥を防ぐ。
(47)口唇の乾燥によるカサツキを防ぐ。
(48)口唇を滑らかにする。
(49)ムシ歯を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(50)歯を白くする(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(51)歯垢を除去する(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(52)口中を浄化する(歯みがき類)。
(53)口臭を防ぐ(歯みがき類)。
(54)歯のやにを取る(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(55)歯石の沈着を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(56)乾燥による小ジワを目立たなくする。

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