著作権法の「利用」と「使用」

 著作権法を調べていたが、「利用」と「使用」について、文化庁からの解説に記載があり、これまでとは異なる見解となっていたことが分かった。

従前の区別

 従来は、以下の意味として扱われていたようである。

本中間まとめにおける用語の意味は、以下のとおりである。
(略)
「利用」とは、複製や公衆送信等著作権等の支分権に基づく行為を指す。
「使用」とは、著作物を見る,聞く等のような単なる著作物等の享受を指す。
参照元:著作権審議会マルチメディア小委員会ワーキング・グループ(技術的保護・管理関係)中間まとめ(コピープロテクション等技術的保護手段の回避について)(平成10年2月20日 文化庁)

平成30年改正著作権法の解説による区別

 しかし、平成30年に著作権法が改正され、文化庁から解説が公開された。その35条関係の解説では以下のように記載されている。

② 「使用」を「利用」に変更した理由
 今回の改正に伴い,以下の理由から,現行法第35条第1項で「その授業の過程における使用に供することを目的とする場合には」という規定中の「使用」を「利用」に変更することとした。

 一般に,現行法においては,何かを用いることを規定する際,「使用」は,「使用料」を除いて原則として有体物のみの利用を想定して用いられている一方,無体物の利用も想定される場合は「利用」が用いられている。現行法第35条第1項は著作物を有体物(複製物)として用いる場面に関する権利制限規定であるため,「使用」の語を用いていたが,今般の改正により,権利制限の対象を複製のみならず公衆送信,公の伝達に拡大することとしており,無体物の利用も想定されることとなる。このため,今般の改正に伴い,「使用」を「利用」に改めることとしたものである。
参照元:著作権法の一部を改正する法律(平成30年改正)について(解説)

 このように有体物として用いる場面に関する権利制限規定は「使用」の語を用いていたが、無体物の利用も想定されることとなるため、「利用」に改めるとしており、有体物無体物かで法文上区別していたものと考えられる。

 しかし、ソフトウェアのライセンス条項等のEULAは「ソフトウェア利用許諾契約又はソフトウェア使用許諾契約」と説明されるなど、混乱が見られる。上記の文化庁解説からすれば、ソフトウェア利用許諾契約になるのだろう。

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