ぶよぶよになったサッポロ一番塩ラーメンは美味しかった

なんだかわからないが
つい最近、サッポロ一番塩ラーメンが
スーパーの前の方に出てきた。

なんだかすごく人気になっているようだった。
再度ブームが来たの?

このラーメンを見ると
必ず頭をよぎるのは
作ってから時間が経って汁を吸いきって
片手鍋の中でぶよぶよになった麺。

子供の頃、
このぶよぶよになったサッポロ一番塩ラーメンは
たまにしか食べられないおやつだった。

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最近の即席めんといえば
クォリティが高く本当に美味しいのがたくさんあるが
昭和も後半の私が子供の頃は
カップ麺はカップヌードルとカップスター、
味は醤油と味噌ぐらいしかなった。

残念ながらそれらはその頃、
まだ開発も発展途上で高いわりにそれほど美味しくなかった。

さて、そういうわけでクォリティも価格も
その頃一般市民の中で主流だった即席ラーメンといえば
「袋めん」なのだ。
うちではもっぱら醤油はチャルメラ、
焼きそば、味噌、塩といえばサッポロ一番だった。

病弱だった母は毎日満身創痍で3食作るのが精一杯で
夕方の小腹が空く時間は
兄がよく即席ラーメンを作って食べさせてくれたものだった。

学校から帰ってくると
たまにテーブルの上に片手鍋があり
上にはなぜか蓋ではなく広告がかけてあった。

公告を取ると大抵そこには
時間がたって冷え切った
ふやけて麺がぶよぶよになった
「サッポロ一番塩ラーメン」が入っていた。

母が昼間、簡単に済まそうと作ってはみたが
食が細い母は結局あまり食べられず残してしまったものだった。

今だったら「うへぇ、まさか後で食べるつもり?」と思うだろうが
そこは育ち盛り。
腹を減らし切った子供はふやけていようが構わない。

汁気がまったくなくなった麺は
巨大化した太麺となりぶよぶよしているが
最大限にスープの旨味がしみ込み
しっかりした濃い味である。

片手鍋から一口だけ、
もう一口だけ、と言っている間に
鍋の中身は空になる。

後から母や兄から
そんなの美味しくなかっただろう?
と言われるが
いやいや、けっこう好きだった。

普段自分が食べる時はわざわざ残さないし
もちろん母以外はいつも完食であるから
このぶよぶよに汁を吸いきったサッポロ一番塩ラーメンは
滅多に食べる機会がない。 

そのうち、世の企業の目覚ましい努力の成果もあり
袋麺の種類が豊富になり
さらにはカップ麺のクオリティが驚くものとなり
私は袋めんを買うことはあまりなくなってしまった。

そして、あれから40年。
今でもこのサッポロ一番塩ラーメンを見ると
病弱で帰ると寝ていた母
そっと静かに台所で鍋の上の広告を剥がし
「ぶよぶよに汁を吸いきったサッポロ一番塩ラーメン」を
1人で飲むように食すシーンをじんわりと思い出す。

そして今、家にある「サッポロ一番塩ラーメン」。
さて、どうやって食べようか。
あの「ぶよぶよに汁を吸いきったサッポロ一番塩ラーメン」を
今の自分が食べたら、、、
なんだか昔の淡い思い出が変わりそうだ。


きっと普通に食べてしまうのかもしれないな。
それもきっとアレンジまでしてしまうだろう。

そして年を重ねて食が細くなるころ
もしかしたら、またあの「ぶよぶよに汁を吸いきったサッポロ一番塩ラーメン」を食べることになるかもしれない。

それまで、販売されていることを切に願う。




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