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ウーユリーフの処方箋 (5章後半)

こちらの続きです。
ガッツリネタバレしているためご注意下さい!

ヒロインの表札がかかった扉を開く。
中には、無数の少女の人形がいた。文字通りヒロインの部屋というわけか…。

先ほどの扉に続き、リアル脱出ゲームさながらの仕掛けだ。ノゾミはヒロインが帰ってこないか見張りをすると言うので、マツリは一人で解いていく。すると、あるカセットテープを入手した。再生すると、音楽がかかる。

この音楽は…。

「…さん、マツ……マツリさん?」
「っ!ああ、すまない…少し、驚いただけだ」

(前の就活のこともそうだったけど、マツリくんてところどころ記憶操作されてるよね。やっぱりゲームの世界に長くいることで薄れていくのか、VRの中の人が自我を取り戻し始めてるのか…VR説は本当にやめてほしいけどなあ…)

そしてとうとう、ヒロインの手帳を見つけた。中には、ヒロインの行動パターンが細かく書かれている。そしてもう一つ、重要なことがわかった。

最後の歯車の在処。
そう、それは…

「首飾り…」

ヒロインが、首にかけているのだ。

帰ってから、二人は得た情報をミトに共有しすぐに作戦会議を始めた。

マツリ「他のロボットたちを巻き込むわけにはいかない。やるなら他に人がいない夜だ。」

ノゾミ「万一のときはヒロインから逃げられるよう、開けた場所がいいですね」

ミト「ロビーなら、広い」

ノゾミ「決まりですね。夜のロビーで、ヒロインと対峙します」

マツリ「問題は、どうやってヒロインをおびき出すか…」

ノゾミ「誰かが囮になるしかないですね。誰か脚力に自信のある人は…」

キリオ「はーい」

マツリ「いや、キリオはヒロインの対象外だから追いかけられない…」

って、キリオ…?声がした方を振り返る。

「!」

そこにいるキリオは、女装をしていなかった。

一同がどうしたのか聞くと、もう意味がなくなったから、と。見ると、キリオの腕輪にはもう宝石が、2つまで埋まっていた。こないだカナタを助けようとしたときにやられたらしい。つまり、もう女装していても効果がないということだ。

キリオ「俺の足なら、ヒロインに捕まらずおびき出すことができる」

いつもなら態度も声もでかいのに、今ここにいるのはただのイケメン。まるで別人だ。

(ここのキリオかっこいい!やっぱりかっこいい!!復活してくれて嬉しいよーー)

マツリ「…大丈夫なのか?」
キリオ「うん。心配かけてごめん」

緩くキリオが微笑む。その様子を見て、一同は必要なものを集めることにした。元リストラロボも、無償で二人分のスピアガンを作ってくれた。

「俺とノゾミはスピアガン、ミトは弓矢、キリオは…」
「俺には脚がある。」

安心して、と微笑むキリオにマツリも頷き返した。

(何度も言うけどキリオが格好よすぎる。もうめちゃくちゃ好き。でも、好感度が上がるほど…ね。怖いよ…😭)

順調に武器が揃い、作戦当日。モニターではラストレジェンドがやっている。円果の歌が始まるとともに、ヒロインが現れた。

キリオがヒロインをまき、マツリとノゾミが布をくくりつけた銛を放った。布は上手くヒロインを覆い、そしてミトが火矢を撃つ。作戦どおりにヒロインは燃え上がった。しかし。

「キーーリーオーくうううううん」

まずい。ヒロインの前に好感度選択肢が現れた。このままではキリオが食われてしまう!!マツリは、咄嗟にヒロインの上にあったモニターにスピアガンを放った。

大きなモニターがヒロインの上に落下し、選択肢が消失した。ヒロインは気絶しているようだ。

「トドメをさしましよう」

ノゾミが、自身の銛をマツリに投げ渡す。しかしマツリはそれを床に置いて、ヒロインのーー正確には男たちの顔や腕をかき分けた。

「俺は、殺したくない。」

そうして、一つの歯車を見つけた。
ピロリン、ゲット時の音が鳴る。

しかし、待てど暮せど、歯車は一つしか現れない。
すると、突如モニターが点きカップケーキがマツリ達を見た。

「勝ち残るのはただ一人。だから勝負は面白い!」

ブツッとモニターか消える。全てを理解したノゾミは暗く嗤い、キリオはしゃがみ込む。マツリはわけがわらないと、ノゾミに説明を求めた。

「このゲームでは3つの物語が連動していたんですよ。ラストレジェンド、10階の乙女ゲーム部、そして俺達」

(これはわりと初期で気づいていた点だよね。ラストレジェンドは絶対に一人しか優勝できない=マツリ達も一人しか帰れない。でも、そんなわかりきった前提を覆して全員でハッピーエンドを迎えるんだと…思ってたよ、この章が終わるまでは。)

「つまり、初めから全員で生き残る道なんてなかったんです。生き残れるのは、ただ一人。」

「それは…誰?」

キリオがしゃがみこんだまま尋ねる。

「一体誰が生き残る?」

「決まってるじゃないですか。主人公ですよ。」

「そっか…」

キリオは力なく微笑んだ。…そう思ったとき、

「…え?」

ノゾミの顎から脳天までを、銛が貫く。

バタリ。

命を失ったノゾミが倒れ、キリオはいつもと何ら変わらない口調でノゾミに近づき、

「チャンノゾ、歯車ちょーだいね。」

そしてノゾミの歯車を、自身の腕輪にはめた。いつの間にか、キリオの腕輪には歯車が3つ揃っていた。カナタの腕輪からも取っていたのだろう。

後退るマツリ。それに対しキリオはやはりいつも通りで、なんの躊躇いもなくノゾミに刺さった銛を抜こうとする。しかし思った以上にそれは固く、仕方がないと頭をかいたキリオは、ヒロインに呼びかけた。

キリオ「おい、早く起きろよ。その銛を寄越せ。」

するとヒロインは呻きながら起き上がり、自身に刺さっていた銛を恭しくキリオに渡すと、従者のように侍った。

マツリ「どうして…」

キリオ「乙女ゲームでは、ただの卑近な人殺しは攻略対象にならないんだよ」

キリオが自嘲して嗤う。

しかし、マツリが聞きたいのはそうではない。目の前の現実が受け入れられない。

「そうじゃなくて…!」

「さあ、マッツン。歯車ちょーだい。」

マツリが動かずにいると、キリオが仕方がないと言ったようにスピアガンを構えた。その針先は、少しの躊躇もなくマツリに向けられる。

「どうして…」

恐怖よりも、ただただ哀しかった。
そんなマツリに、キリオはハッキリと言い放った。

「そんなの、決まってるだろ。」

「今度こそ、俺が主人公になるために。」

.

.

いやーーーー😭😭

キリオ!キリオは闇落ちしないでほしかったよ!!!
ノゾミ、どうして…って言って死んだけど、ゲーオタなら薄々気づいてなかったの?!キリオポジは終盤で敵になるんだよ😭😭😭

いやね、最近のゲームとか漫画とかって、そんなに明らかな悪役出てこないじゃん??こいつも実はいいやつだよねみたいのが多くて、なんやかんやハッピーエンドになるのが多いじゃん。ハッピーとまでは行かなくてもトゥルーエンドというかさ。だからすっかり平和ボケしてた…。

「俺が主人公」ってキリオのセリフかーい!って感じ。てっきり、「生き残れるのは一人だけ。それは主人公…そう、あなたですよ、マツリさん」みたいなさ。で、他のみんなが自分はNPCだと明かして、マツリが困惑しながら「俺が主人公…?」ってなって他のみんなが死んでしまった悲しみに暮れるみたいなそんなストーリー想像してたわ!!!

そういうとこがハマったんだけどね、ウーユリーフ!

てか、今章終始キリオがかっこよすぎて無理だった…。ノゾミ殺してからもずーーと悲しそうな笑顔なのがまたしんどい。ノゾミに刺さった銛平然と抜こうとしたとこはちょっと怖かったけど、「卑近な殺人者」じゃないよね、キリオは。ヒロインはそう判断したらしいけど…。ノゾミの方がよっぽど卑近な笑顔だったよね笑

このシーン、ガチで息が詰まったよ…。

きっとマッツンもそうだよね。
マツリくんならきっと、キリオも救ってくれるって信じてる!だって、ヒロインを殺さない選択をしたんだから…(いや選択したのお前だろとか言わない約束)

次章も楽しみ!

(ウーユリーフの処方箋 5章 完)

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