木枯らし

寂しい季節に、風が泣いていた。
空には真昼の月、儚く笑んで。
泳ぐように遊ぶ前髪。
そっと片手で押さえる。
白い息が、か細く揺れていた。

荒れた手がちりちり痛い。
昨日喧嘩した心がイタイ。
太陽が逃げて月が追い掛ける。
今日もゆるやかに終えていくのに。

どうして。
欠けた感情が軋んで、解けぬ糸をそのままに。
いつかの指切りが、時効を迎えてしまった。
どうして、どうしてと、首を振る。
まるで、幼子のようだと嗤う。
要らない表情を、さりさりと斬るのに。
どうして、消えてくれないのだろう。
どうして、この心は。

風に舞い上がる、木の葉。
揺れて揺れて、消えていく。
行かないでと、手を伸ばしても、
置き去りにしていく、貴方の様に。


(2021/01/19)

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