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【活動報告】デザインワークにおける生成AI活用(ヒューマンインタフェースデザイン委員会)

今回は、JEITAデザイン部会の中にある「ヒューマンインタフェースデザイン委員会」の活動で実施した、デザインワークにおける生成AI活用のインタビューについてご紹介します。


1. JEITAデザイン部会 「ヒューマンインタフェースデザイン委員会」とは?

ヒューマンインタフェースデザイン委員会は、デザイン部会の傘下にある、テーマ別の委員会の一つです。

UIデザインを軸とした最先端デザインの調査研究を行うことで、各社・社会への貢献を目指しています。

2023年度は、「AIとインタフェースデザイン」を共通テーマとし、4つのタスクグループ(以下TG)に分かれ、AIやデジタル技術がインタフェイスにもたらす新しい変化を多角的に見つめることで、インタフェースデザインが直面する今日的課題の発見と最新情報の探究に取り組み、業界共通テーマに対する新価値について検討を行っています。

2023年度も「AIとインタフェースデザイン」をテーマに活動

2. インタビューに至る経緯

今回インタビューを実施したのは、ヒューマンインタフェースデザイン委員会の中で、パブリック&プロフェッショナル事例を調査するタスクグループ(TG1-2)のメンバーです。

社会課題に対して、AIが活用されている先進事例を調査し、AIをどのように取り込み、課題解決しようとしているかについて研究を行ってきました。

その中で、実際のデザインワークにおいて、既に生成AIを実務活用されている企業があると聞き、インタビューをご依頼させていただきました。

3. Human Horizons社とは

今回お話をしてくださったのは、中国の高級電気自動車メーカーHuman Horizons(華人運通)でデザインをされているSamさん、Maxさん、Duaさんです。

中国・上海に本社があり、ハイエンドの純電気自動車を打ち出すブランド「HiPhi(高合)」を展開。今までになかった新しい発想のクルマをドイツ、ノルウェー、中国で販売されています。

HiPhiトップページ(Web

4. 日本スタジオの役割

本社・中国のデザイン部隊はプロダクションのものづくりを行うため、開発者とミリ単位でデザインの調整を行うことが主なタスクです。

一方、Samさん、Maxさん、Duaさんは日本のスタジオに所属し、アドバンスデザインを担当しています。

右からSamさん、Maxさん、Duaさん

日本スタジオのメンバーは総勢6名。本社に比べて少人数ながらも多くのタスクを持って活動しています。

「以前は本社と比べて、人数分の差があったが、小さいチームとして、生成AIを活用しながら、アイディアの幅を短い時間で広げることができている」とSamさんは語ります。

5. 生成AIを活用したデザインプロセス

カーデザイナーといえば、Photoshopが日常ツール。しかし、現在ではPhotoshopよりもMidjourneyやStable Diffusionといった生成AIツールを使う機会の方が多いそうです。

例えば、Duaさんは、オフィスを出る前にStable Diffusionに200枚の指示を出し、帰宅。夜の間に画像生成が実行され、翌朝、出社したメンバーでそれらを見てディスカッションをすると言います。

徹夜でアイディア出しをしていた時代との違いを感じます。

夜の間にAIが画像を生成(写真はイメージです)

Samさんたち日本スタジオが先行し、2年程前から本格的に色々な生成AIツールを活用してみて、今では本社デザイナーのみなさんも使っているとのこと。

僕らはIdeationとInspirationのために使っている」とSamさんもMaxさんも口を揃えます。特に、ムードボードやコンセプト説明用のイメージ作成など、アドバンスステージでは生成AIを活用しやすいと言います。

「生成AIの結果は多様で、プロンプトの入れ方もクリエイティブのうち」と語るのはDuaさん。

生成AIのアウトプットはアイディアを広げるためのものであり、圧倒的なスピードと量でプロセスを前に進められるといいます。

生成AIのアウトプットはIdeationとInspirationのため(写真はイメージです)

設立7年目にして、既に3車種を販売されている開発スピードの秘訣の一つはこれに違いありません。

現在は2Dスケッチを3Dにするところは人間の手で行っているそうで、今後はそこを自動化できるAIが期待されます。

6. メッセージ

最後に、今後デザイナーに求められることをお聞きすると、「とにかく使ってみること、良いプロンプトを書くこと、そしてコーディングが大事」という回答をいただきました。

生成AIに対して躊躇せず、プライベートでもいいので、スキルアップを兼ねて使ってみること。

絵を描くデザインはコーディングとはかけ離れているが、コーディングを理解していれば、AIの仕組みも分かるし、良いプロンプトにも繋がること。

日本の会社ももっと生成AIを活用していくことを期待されました。

7. インタビューを振り返って

実際のデザインプロセスの中で、何年も前から生成AIを実用的に使われているお話を伺い、対応の早さに驚くとともに、今後こうなるのだろうというイメージを持てました。

予測不可能な時代においては、プロセスや考え方の転換がとても重要になると思います。

今回のインタビューにご協力いただいたSamさん、Maxさん、Duaさん。貴重なお話をいただきありがとうございました。


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