アルツハイマー治療薬の最新状況(2023年8月)
2023年8月21日にアルツハイマー病(AD)治療薬「レケンビ点滴静注」(一般名:レカネマブ〔遺伝子組み換え〕)がついに日本で承認されました。ADの情報についてまとめました。
日本のエーザイと米国のバイオジェンが共同開発した抗体薬です。薬価がいくらになるのが気になります。米国では、一人当たりで年2万6500ドル(約385万円)に設定されています。治療前に、事前に脳内のアミロイドβの蓄積を調べる検査が必要ですが、検査可能な医療機関は60か所程度で限られています。また、脳浮腫の副作用が報告されています。
イーライリリー社が開発中のドナネマブの大規模臨床試験の結果が発表されました。ドナネマブはアルツハイマー病の原因物質であるアミロイドベータ(Aβ)に結合する抗体です。早期症候性アルツハイマー病でアミロイドおよびタウ沈着の病理学的所見が認められる患者に対して、ドナネマブの効果をプラセボと比較した試験です。試験開始76週時点で臨床的進行を有意に症状を遅延させました。
イーライリリー社が開発中のソラネズマブは有効性を確認できませんでした。ソラネズマブは、Aβペプチドのミッドドメインに対する抗体であり、線維状ではなく可溶性の単量体Aβに結合します。アミロイドプラークは認められるが認知症の症状は発現していない、プレクリニカル期のアルツハイマー病患者(無症状の状態)を対象とした第3相試験で、ソラネズマブには認知機能の低下を遅らせる効果、および進行を低減する効果のいずれも見られなませんでした。
アルツハイマー病に対して高い効果をしました抗体医薬としてレカネマブとドナネマブがあります。二つの抗体の特性に違いがあります。ドナネマブは、脳アミロイド斑にのみ存在するN末端切断型の不溶性βアミロイドに対する抗体で、ミクログリアを介したプラークの除去を助けます。一方、レカネマブは可溶性Aβプロトフィブリルに高親和性で結合します。このプロトフィブリルは、単量体や不溶性フィブリルよりも神経細胞に対する毒性が強いことが示されている。ソラネズマブのように、単量体Aβと結合する抗体は治療効果がありません。抗体がどのような状態のAβと結合するかで、治療効果に大きな差がであることがわかっています。
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