神様はどこにいった?

最近、カラマーゾフの兄弟という本を読んだ。ドストエフスキー作の、世界的に有名な作品だ。実はこの本を読んだのは2回目だ。前に読んだのは10年くらい前だろうか、いや、もっと前か。
今回読んでみて思ったのは、最初に読んだ時よりも、だいぶ面白いなと感じたことだった。なんというか、純粋にサスペンスとして楽しめた。同じサスペンスものを2回も楽しめるとは思わなんだ。しかも驚いたことに、自分が思ってた真犯人と今回読んだときの真犯人が違っていた。これは一体どういうことだろうか。前回も今回も、私はカラマーゾフの兄弟という本を読んでいるはずで、それは間違いない(私がよほどあわてんぼさんでない限り)。

さて、ここからはだいぶ本編のネタバレになっていくが、





私はカラマーゾフの兄弟における真犯人は、今までずっと長兄のミーチャだと思っていた(実際に有罪判決を受けるのもミーチャだ)しかし、今回読んだときは、次男のイワンが犯人だった。(イワンは有罪判決は受けてない)
何故こんなことになってしまったんだろうか。そういえば今回読んだ訳は、亀山郁夫訳の光文社古典新訳文庫のものだった。前回は新潮文庫で、原卓也訳のものだった。その違いだろうか、いや、そんなわけはない、訳によって犯人が変わるなんて、そんなことはありえないだろう。(そうだとするとどちらかの本が発禁になるはずだ)

それとも私が前回、寝ながらでも読んでいたのだろうか。(多少はそうだったかもしれない)
理由を考えてみたところ、思い当たる節が一つ出てきた。確かにあの頃、よくわからず読んでいる部分が結構(むしろ多量に?)あった気がする。まだ高校生だった私は、とにかく難しそうな本を読んでみたいという思いから、身の丈に合ってない本を読んでいる側面があった。それは否めない。
 あれから15年くらい経って、もしかしたらようやく私の中で、カラマーゾフの兄弟が消化できるようになってきたのかもしれない。そして、消化できる準備ができてきたからこそ、何故かふと、もう一度読みたくなったのかもしれない。


さて、ようやくここから本題。神様はどこにいった?という話なのだが、前回読んだ時には全くといっていいほど印象に残らなかった場面に、イワンが悪魔と会話する場面がある。ここが分からなかったがために、前回はイワンが犯人という考えが、全くもって頭をよぎらなかったのだ。(今回は逆に、最も印象に残ったといってもいい。分かりきったわけではないが)神様は居ないという無神論者のイワンが、悪魔(幻覚)と対話する場面だ。ここはイワンが、潜在意識では父親殺しをしたと自覚していると思われる場面だ。
ここでまず私はふと疑問に思った。神様を信じないのに、何故悪魔が出てくるのかと。私の中では神と悪魔は2つで1つ、対になっている存在だと思うのだ。どちらか一方だけの世界なんて、想像できないだろう?

そういうふうに思って読むと、イワンはちょっとおかしいではないか、神様がいないんだったら、何故悪魔もいないと思えないんだ?そもそも何故無神論者なのか?いや、違う、彼は無神論者ではない、彼は神様はいることは認めるが、神様がつくったこの世界は認めない、という。(大審問官のくだり)つまりどういうことかというと、神の否定である。神様がいるんだとしたら、この世界はもっと素晴らしいものであるはずだ、と。
私にはこの考えこそが神様を信じている何よりの証拠ではないか、と思った。信じているというか、神にすがっている。いや、拗ねているといってもいい。「神様、あなたがこんな世界を作るのであれば私はあなたのこと、信じませんよ」と。

ここで私が言いたいのは、このような考えを持った人が現代の日本にいるだろうか?ということだ、つまりつまり、どういうことかというと、神様を本当に信じている人が今の日本にどのくらいいるのか?ということだ。
もし「神様はいると思いますか?」と聞かれたら、それに「はい」と答える人はたくさんいるだろう。ただ、その質問をされることがない場合でも、神様のことを考える人がいるだろうか?いたとしてもせいぜい、何かをお願いしたいときではないだろうか?
そういう観点からいくと、現代日本には、もはや神様はいなくなったとは言えないか?今、我々がカミサマと呼んでいるのは、自分にご利益(得)をくれるものだ、それを我々はカミサマと呼んでしまっている。

「ご利益をくれるならそれでいいじゃないか。」って?馬鹿を言ってはいけない。ただただ自分にとって都合のいい存在、それはつまるところ、悪魔である。そうだろう?甘言をいうのは、常に悪魔だと相場が決まっている。それは神を騙るものだ。そんなものをありがたがるのが人間か?苦労に自ら進んでいくのが人間なんじゃないのか?楽が出来ればそれでいいって、それはもうもはや人間ではない、ニンゲンという発声で呼ばれているものではないか?そうだ、もはや人間も消えた。神は死んだし忘れ去られた。そして(神を知っている)人間も居なくなった。それが現代日本の現実だ。

神は死んだと誰かが(ニーチェが)言ったが、我々は神が死んだ後に生まれてしまったのだ。そうだ、私はイワンのような無神論者が出てくる理由すらも分からない。そんなことをする理由が…私は「イワンが言う」神様という概念すらも理解できないのだ……

……なんだこの話は。
終わり

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