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【自粛をチャンスに】0から始める「メンタルトレーニング」④
前回の記事では、アスリートが個人的にメンタルトレーニングを行う際に重要となる二つのことについて学んだ。とくに、「自己客観視(セルフモニタリング)」については、メンタルトレーニングを学ぶ上で頻出の語彙になるので、イマイチその概要をつかめていない場合は、適宜前回の記事を見直しながら、読み進めてほしい。
↓前回の記事↓
では、いよいよ実践的な内容に移る。紹介するメンタルトレーニングは「リラクセーション技法」である。このメンタルトレーニングは、主に「緊張」と密接に関係したものである。
具体的な実施方法については、次回、もしくはその次の記事で紹介をする。というのも、リラクセーション技法は、「腹式呼吸」や「自律訓練法」「筋弛緩法」など様々な形式で行われる上に、そもそもアプロ―チをかける「緊張」や「不安」について、前提として必要な知識が多く存在するからである。
もし、実践的なトレーニング内容のみを知りたい場合は、後の「腹式呼吸」の記事へ進んでほしい。ただし、先の記事でも述べたように、本シリーズの目的は、アスリート個人が自律的にメンタルトレーニングを行えるようになることであり、そのためにはメンタルトレーニングや、緊張、不安の「原理」やメカニズムを知る必要がある。繰り返しになるが、効果的なメンタルトレーニングを行うためには、自らの心理状態についての理解と、それに適当な方法を引き出すだけのレパートリーを持つ必要がある。
これらを踏まえて、本noteでは「あがり」「緊張」「不安」について体系的にまとめた。
メンタルトレーニングで「緊張」に対処するというが、そもそも「緊張とは何か?」を考えていく。
あがりとは
「あがり」とは、試合等で緊張や不安が強い場合に経験される競技遂行の困難性や成績の低下、競技場面への不適応などをともなったさまざまな心理的・生理的現象である。
つまり、不安や緊張と密接に関係した心と身体の問題が「あがり」であり、「不安」と「緊張」は「あがり」の構成要素とも言えるだろう。
では、緊張とは何か。本noteでは次のように定義する。
「緊張とは、思考や運動をつかさどる大脳皮質の興奮の強さである」
世間一般的に、緊張というと負の心理状態として認識されているが、スポーツ心理学においては、心というよりも「身体」の反応(生理的現象)として定義されている。例えば、心拍数の増加や、不眠、手先が冷たくなることなども、これにあたる。生理的現象であるがゆえに、緊張は間接的に観測可能である。
(余談ではあるが、生理的な反応を伴う心のことを「情動」ということがあり、またこれに含まれないものを、「感情」という。「情動」と「感情」については、後の記事で触れていくこととする。)
あがりを構成するもう一つの要素「不安」について、本noteでは次のように定義する。
「不安とは、身体の活性化や覚醒(緊張)と関連した負の情緒的状態である」
生理的現象である緊張に相対して、不安とは「心の反応」である。例えば、あせりや心配、気分の落ち込みなどがこれにあたる。これらは、世間一般でいう「緊張」に近いイメージである。
リラクセーション技法とは、不安や緊張とパフォーマンスの関係をしめした「逆U字仮説」に基づいて行われるメンタルトレーニングである。具体的には「強すぎる緊張を、弱める」方法である。
参考文献
『スポーツメンタルトレーニング教本 三訂版 』 日本スポーツ心理学会編 pp.109-113 大修館書店(2016)
上の図が、「逆U字仮説」を表したものである。
曲線の頂点付近がアスリートの「フロー状態(ゾーン)」で、そこに適切な緊張の強さ(横軸)を目指す。
また、「緊張を弱める」リラクセーション技法に併せて、「サイキングアップ」というメンタルトレーニングも学ぶ必要がある。これは、相反して「弱すぎる緊張を、強める」メンタルトレーニングである。
つまり、「リラクセーションとサイキングアップ」二つの技法を、バランスよく実施することで、適当な緊張(フロー状態)が成り立ち、結果的にパフォーマンスが向上するというわけだ。
「緊張」とは、一方的に排斥されるべき存在だと考えられがちであるが、「良い緊張」という感覚はアスリートの多くが経験したことのあるものだろう。「逆U字仮説」の曲線をイメージすることで、自己客観視を促し、随意的に「良い緊張」の状態を獲得目指すことが出来る。もちろん、リラクセーション技法とサイキングアップについては、それを行うことで即自的に効果を得ることが出来るというわけではなく、継続的なメンタルトレーニングが実施されていることが前提である。
まとめ
・「あがり」は「緊張」と「不安」によって構成される。
・リラクセーション「強すぎる緊張を弱める」
・サイキングアップ「弱すぎる緊張を強める」
・適当な緊張により「フロー状態(ゾーン)」となり、パフォーマンスが向上する。
次回は、より踏み込んだ「競技不安とパフォーマンスの関係性」について考える。
参考書籍
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