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【自粛をチャンスに】0から始める「メンタルトレーニング」①

はじめに

今では聞きなじみのある「メンタルトレーニング」という言葉だが、実際にどのような手順・方法で行われるのか、またその効果というのは不透明で、中には「なんだか胡散臭い」という印象を抱く人もいるのではないだろうか。

それもそのはず、「メンタル」すなわち「心」というのは、実体を持たず、決して目に見えるような代物ではない(直接的には)。そのような観念的なものについて、それを鍛えようなんていうのは、なんだか虫が良いような気もする。

しかし、欧州をはじめ世界各国では、「メンタルトレーニング」は広く受け入れられており、監督個人にメンタルトレーナーがついている例もある。

かく言う私たち日本人も、一般的には「心が重要である」という意識を持ち合わせてはいるが、それを鍛える方法があるということに、どこか不信感を抱いていることが多い。それらは、何らかの苦労やツライ経験を通して、獲得されるものだという認識がどこかにある気がしないでもない。

しかし、諸科学研究において、メンタルトレーニングが「心」といわれる何らかに対して、ポジティブに寄与することは、明示されている。その客観的な事実は、心を「感情」や「情動」として扱い、生理的反応を媒介して間接的に、示される。(このことは後の記事の中で詳しく説明する)

心について、それを「鍛える」という語彙が適切かはわからないが、メンタルトレーニングが私たちの「心」に何らかの影響を及ぼすことに関しては、どうも確からしい。

本noteのシリーズでは、「心とは何か」から、具体的なメンタルトレーニングの実施方法まで、アスリート個人が自律的に行えるようまとめる。

全編無料で、自宅で出来る内容を扱う予定だ。

随時、参考書籍も紹介するので、より踏み込んだ内容、あるいは本noteよりもより平易な内容から入りたい方は、そちらを参考にしてほしい。

本シリーズに関しては、1日1~2記事ずつ更新していく。(気力が持つ限り)

大変なご時世ではあるが、多くのアスリートはエネルギーと時間を持て余しているだろうから、ぜひ本noteの内容を実践し、終息後の競技生活に生かして頂ければ、幸いである。

心の重要性

メンタルトレーニングを学ぶ上で、心の重要性を知ることは有意義だ。

また、心理面の充実は、高いパフォーマンスを発揮する上で、重要な因子の1つである。

これは試合局面のみならず、アスリート個々の練習においても同様だ。特に、メンタルトレーニングを通じて、練習に取り組む態度を変えることは、「その後の」パフォーマンスの向上の程度に大きく関係する。これは、練習に取り組む態度が変わることで、必然的に各々の「練習の質」を向上させることが出来るからだ。また、練習の質が試合中のパフォーマンスの向上に直結しているのは自明の理である。

(ここでいう改善されるべき「態度」とは、怠惰的で典型的な「やる気のない」状態のみを指しているのではなく、むしろ「やる気があって」真面目と評価されがちなアスリートが、自らのミスに対して叱責をする過度な責任感などの心的因子によって、プレーに悪影響を及ぼしているような状態も含んでいる。)

何らかの動作失調によって、従来のパフォーマンスが発揮できない場合も、心理面の強化を行うことで、自律的にそれを改善することは可能である。また、このような視座を持つことは、動作失調の原因を、身体のみに向ける一元的な視座によって生じるオーバートレーニングの防止にも直結する。

例えば、「狙ったコースにシュートが打てなくなった」という一種の動作失調について、その原因を身体因子にのみ向けたアスリートがいたと仮定すると、そのアスリートは、狙ったコースにシュートが打てるまで、単一で特定のシュート動作を繰り返すだろう。あるいは、下肢筋群の強化が足りていないと、短絡的に判断し、ひたすらレッグプレスやスクワットのような類のレジスタンストレーニングを、盲目的に行ってしまうかもしれない。

前者については、単一な動作の反復による特定の身体因子(骨格筋群や、関節包)に対してのメカニカルストレスが蓄積されることによる「スポーツ障害」のリスクが高まり、後者については、コオディネーションや、特異性の原則を無視したトレーニングによる、パフォーマンスの低下を招きかねない。

本質的な問題が、身体因子によるものなのか、あるいは心的因子によるものなのか、その判断をアスリート自身が行うことは簡単なことではないが、幸いなことに、心理面の強化(特に、セルフモニタリングなど)については、実践にあたって、それがネガティブな効果を生むことは殆どない為、前述したようなパフォーマンスの低下の心配はないと言っても良いだろう。(ただし、誤ったトレーニングの方法によってパフォーマンスの停滞を余儀なくされることはあるが)


メンタルトレーニングとは?

日本では古来より、「心技体」の重要性が説かれてきた。

「心の状態が良い時は、体もよく動いて、パフォーマンスを高いレベルで行えた。」という経験はアスリートなら誰しもがあるはずだ。ゴールを決めた直後の「なんでも出来そう」というノリにノッた状態、一種の万能感は「自信」に直結し、その後のパフォーマンスに対してポジティブな影響を与える。

反対に、「過度の」心の緊張(あがり)は、アスリートの意に反して肩をすくませ、呼吸を浅くし、思ったように体を動かせなくしてしまう。このような状態では、試合中の判断は消極的になり、練習では当たり前にできたことも、ミスしてしまう。また、ミスに対して悲観的になることで、心の状態はさらにネガティブな方向へ向かってしまい、挙句の果てにはネガティブな態度にチームメイトや監督からの罵声を浴びせられ、交代を余儀なくされるなんてこともあるかもしれない。

このような凄惨な状態に対処すべく「メンタルトレーニング」は実施される。

メンタルトレーニングの目的は、あくまで「予防と対処」である。これは、メンタルトレーニング自体が、ネガティブな感情や情動自体を自己の中から抹消しようという、傲慢なものではないということである。要するに、メンタルトレーニングは、人間ならば誰しもが抱くネガティブな感情や情動について、人間固有の高度な「認知」の力によって、いかに客観的な視座からそれをコントロールするか、という目的を掲げて、実施されるべきである。

また、メンタルトレーニングは臨床的なアプロ―チとは本質的に異なることを、明記したい。あくまでこれらのトレーニングは、健康なアスリートや指導者を対象にしたものであって、重篤なバーンアウトやうつ症状などの問題を抱えた人について、適応されるものではないということは、注意していただきたい。

次回

次回は、さらに踏み込んだメンタルトレーニングの概要や、方法について紹介する。

参考書籍(おすすめの書籍)

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