【将棋】後手4手目問題

何の話題?

 居飛車党とか振飛車党とか、自分のことをそのように表現できる人をうらやましく思うことがあります。私は定跡形でやられすぎた結果として序盤をこじらせている消極的な非定跡党なので、序盤の悩みが尽きません。
 とはいえただ定跡を避けているだけではなくて、それなりに序盤の一手一手の意味とか価値とかを考えています。今回はそんな、結論は無いけどみんなで語りたいよねという最序盤の話題です。

 先日、後手番の坂田流向飛車を指して負けた後に私はこんなツイートをしました。

 その局面というのが、次の図になります。

ここで後手が何を指すか

 2手目△8四歩の居飛車党や相当特殊な作戦を除いて、多くの将棋プレーヤーが日々向き合っているはずの局面です。皆さんはここでの指し手は決まっていますか?

振飛車党の問題

 定跡形に強い居飛車党であれば、△8四歩や△3二金が普通の手に見えるでしょう。無理やり矢倉or雁木の△4四歩もあるかもしれません。それらは指したい戦型から逆算される順当な一手のように感じます。
 気になるのは、振飛車党の対応です。

 角道を止めるノーマル振飛車を志す場合、△4四歩が必須になります。しかし△4四歩と指した場合に、ノーマル振飛車の基本形になるでしょうか?
 ここで言う「ノーマル振飛車の基本形」とは、次の図になります。

ノーマル振飛車の基本形

 たしかに先手が5手目に▲2五歩と突いてくればこうなるわけですが、4手目に△4四歩と突いた時点ではそれは確約されません。4手目△4四歩と突くということは、先手が▲2五歩を保留した場合の駒組みに対して用意がなければいけないということになります。

4手目△4四歩に対する疑義の詳解

 ここで、もう少し「ノーマル振飛車の基本形」について私見を語っておきます。

 近年はソフトの評価値的に冷遇されているノーマル振飛車ですが、将棋の歴史の中でもずっと指され続けてきた形であり、決してはっきり悪いわけではありません。
 しかし、基本形の図を見ると、先手が飛車と角を存分に活用して後手陣の左辺を攻めようとしているのに対し、後手は自ら角道を止めて、駒の活用ができていないように見えます。これでは、先手に分のある形と言われても仕方がないような気もします。
 にもかかわらず、なぜノーマル振飛車はそれほど悪くないのでしょうか?

 私の回答は、「角1枚で先手の飛車と角の両方を受けているから」となります。
 つまり、一見よく働いているように見える先手の飛車と角ですが、その両方を後手の角が1枚で相手にしていると考えれば、3三の角の働きがとても大きいと言うことができると思うのです。

 3三の角は、ただ受け止めているだけではなくて「桂の紐がついているためいつでも角交換で捌くことができる」というのも重要なポイントです。
 先手が棒銀で角銀交換を狙うような攻め筋をするならば、振飛車はさっと角道を開けて角交換に持ち込み、銀をかわしつつ捌いてしまうのです。

 この3三の角の働きの良さ、柔軟性がノーマル振飛車を完成された戦法として実現し、一大勢力にしているのだと思います。
 3三の角の価値が高いということは、当然△3三角と上がる一手の価値も高いはずです。2四を受けつつ桂の紐をつけているからです。

 ここで、話は4手目問題に戻ります。
 △3三角の価値が高いのであれば、4手目に△4四歩と角道を止めた場合、▲2五歩△3三角の交換は後手の得になるのではないか? という懸念が出てきます。これを正と仮定しましょう。
 そして、ノーマル振飛車の基本形が互角である、というのも仮定してみましょう。すると……。

  • ▲2五歩と突くのは先手の損である

  • ▲2五歩と突いたあとの局面は互角である

  • ということは、▲2五歩と突く前の局面は先手有利である

この局面は先手有利では?

 というわけで、△4四歩に疑問が出てくるわけです。

 一応、自分でツッコミを入れるとすると、▲2五歩と指さない場合は▲2六歩が緩手になり活かしにくいので、▲2五歩もかなり価値の高い手で3三角と釣り合うのかもしれません。
 それでも▲2五歩と突くかどうかは先手の権利という意味はあります。
 また、突かれてもいない▲2五歩を警戒して△4四歩と突いているのがシャクだとか、右四間などをされたときに▲2五歩を突かれてない状態で△3三角とするのはシャクだから▲2五歩を突かせたいとか、4四歩を突いてしまうと戦型の幅がかなり狭くなるのでなるべく遅らせたいとか、いろんな意味がごちゃまぜになった結果として気持ちの面で受け入れにくい感じというのが実際のところです。

△4四歩以外の候補手を挙げてみる

 さて、ぶっちゃけると△4四歩を指してもいいのですが、それ以外の候補手を検討しておきましょう。

4手目△3二金

4手目△3二金

 一見居飛車に見える手で、しかし実際は△3二金型の振飛車を目指しているという曲者戦法です。現在の私はこれを採用しています。
 とはいえ、▲2五歩△3三角▲同角成△同金と進んだ局面は、3三金型の角換わりか坂田流向飛車くらいしかなさそうで、どちらかをちゃんと履修しておく必要がありそうです。今は坂田流をやっていますが、わりと真剣に居飛車も視野に入れています。
 途中、▲3三角成に△同桂とか、▲2五歩に△4四歩とかはやりにくいなあという印象。あと横歩取りの後手側とか絶対勉強したくないです。
 あと、▲2五歩に△5二飛でパワー中飛車?的なのもあるかもしれないけど、駒組みがちゃんとできるのかよくわからない。

4手目△5四歩

4手目△5四歩

 いわゆるゴキゲン中飛車というやつで、後手番の特性を活かして「▲2六歩突いてあるから▲5三角の打ち込みがないでしょ」とドヤる戦法です。
 これはかなりプロが指しているので定跡が整備されていて、スペシャリストでなければやってられません。定跡の勉強が嫌いな私には無理。

4手目△3五歩

4手目△3五歩

 いわゆる早石田というやつで、後手番のくせにそんな奇襲が成立すると思ってるのかと嫌われる戦法です。
 有力だとは思いますが、激しい変化が多いので研究必須ですし、先手の対応も多岐に渡るためこれもやはりスペシャリスト向けといった印象。

4手目△4二飛

4手目△4二飛

 いわゆるダイレクト四間飛車というやつで、△4四歩は指したくないけど振飛車で戦いますよという頑固者戦法。
 有力ですし、穴熊と組み合わせたレグスペは特に狙いがわかりやすいのが良いです。定跡をしらない私でもやってみるとそれなりに戦えたりします。
 ただ、穴熊とかそうでなくても低い陣形で軽く捌いて攻めるような戦法なので、玉頭戦が好きな私としては棋風に合う感じはしません。

結局どうしよう

 結局、△3二金型の振飛車をやりたければ△4四歩を突いたらいいじゃんという話なんだろうなぁ。でも4手目△4四歩が突きにくい……。右四間されるのも嫌だしなぁ……。でも他の手も難しい……。
 と堂々巡りでまだ私は決心がついていません。ここ1週間ほど、△3二金から△3三金型角換わりの居飛車を試してみたところ、経験知が少ないながらも棋風的な相性は悪くない気がしています。
 後手4手目に悩む人がいたら悩みを共有していただけると嬉しいです。

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