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指す将順位戦6th A2-11 vs そうざいさん

 指す将順位戦の自戦記です。11回戦について書いていきます。

感謝

 やると決めたことを続けていくのは、とても難しいことです。ダイエットにせよ、筋トレにせよ、勉強にせよ、継続が大切だとわかっていながら、やってみるとなかなか続かないものです。
 指す将順位戦の関係でWebラジオなんかをされている方も、継続していることが本当に素晴らしいなと思います。
 そして何より指す将順位戦が今回で第6回とのことで、長く続いている素晴らしい企画だと思います。運営に関わる方々においてはきっといろいろな苦労があると思いますが、こうして企画を継続していただいたおかげで自分が参加することができ、たくさん楽しませていただき、twitter将棋界隈の人を知ることもできました。改めて感謝いたします。

最終局について

 私のほうは早いうちから昇級戦線とも残留争いとも離れてしまったのですが、お相手のそうざいさんは本局に勝てば昇級入れ替え戦の可能性が残っている状況でした。そうした関係上、メルモンさんから応援される立場になり……。
 負けて恨まれたくないというのもありますし、これまで上位陣に勝ててなかったので最後はなんとかという思いもあり、また勝ち越しで終わりたいという欲もあり、とにかく私のほうもかなり気合いを入れて臨みました。

 また、そうざいさんの将棋に「そうざいマジック」の名が定着したのは面妖流さんとの一局でしょうか。あれは衝撃的でした。10回戦もメルモンさんとの壮絶な将棋の末に逆転勝ちを決めていたりして、その終盤力に挑戦する気構えでもありました。

棋譜

 棋譜は将棋倶楽部24またはJavaScript将棋盤で。

4手目4四角

 本局は先手番となりました。
 いつものように飛車先を突いて様子を伺うと……なんと、4手目△4四角!

▲2六歩 △3四歩 ▲2五歩 △4四角(図1)

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 実はこの4手目△4四角については、朝日杯の予選でプロ棋士の黒田さんが似たような形を指したということで、研究会(ポラ研)のチャットで話題になっていました。
 具体的に解説しているVtuberさんの記事が以下です。

 ただ、研究会チャットで言及された時の趣旨は、坂田流向かい飛車を戦法に取り入れている私たちが△4四角とすることで相手の角交換を待たずに3三金型の向かい飛車に組めるのではないか、という話。
 そのとき書いた私の所感が以下です。

・対居飛車で自分の土俵に引きずり込める可能性が高いため、得意戦法にすると活躍の機会が多そう。
・通常の坂田流向かい飛車と比較したとき、居飛車に選択肢を多く与えている=指しこなすのが難しいと言えそう。
・4四角はクエストで時々見かける気がする。向かい飛車をされた記憶は無い。たぶん4四角に▲2四歩を突いてる。
・part2の記事が▲2四歩への対処だが、図2の△3三桂に対して▲4六歩で先手指せそうというのが私の感覚。(解説されていない)
・▲2四歩への対処に自身があれば、他は3三金型の向かい飛車にできそうなので、魅力的。

 それを踏まえて、本局の指し手は……

▲7六歩 △3二金 ▲6六歩(図2)

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 言ってることとやってることが全然違います。
 ……言い訳をさせていただくと、これはクエスト(2切れ/5切れ)と指す順(15分+60秒)の違いが大きいです。クエストなら負けてもなるほど勉強になったくらいで終わりますが、指す順は戦績が大きな意味を持つリーグ戦なので、不用意に相手の研究範囲に踏み込めないと感じています。持ち時間の違いもあり、「どうせ相手も間違えるさ」と考えてはいけない戦いです。
 こちらはこちらで自分の得意分野に持ち込みたいという意志が、7手目▲6六歩と角交換を拒否する一手になりました。

向かい飛車から中央の勝負に

△3三金 ▲3八銀 △2二飛 ▲4六歩 △5四歩 ▲4七銀
△6二玉 ▲6八玉 △7二玉 ▲4五歩(図3)

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 さて、▲6六歩は振り飛車の角の捌きを封じて4四の角を負担にしようという方針でした。早めに△2四歩を突かれると困っていた可能性もありますが、ともかく角を追う展開に持ち込めたのが図3です。少し先手が無理をして突っ張っています。

△6二角 ▲7八玉 △4二銀 ▲5六歩 △8二玉 ▲6五歩
△7二銀 ▲4六銀 △5三銀 ▲5八飛 △5二飛(図4)

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 さらに進んで、図4ではっきりと中央が争点になりました。こちらの狙い通りというところではありますが、先手の陣形が伸びすぎて不安定なため、形勢は後手のほうが良いような気もします。

▲3六歩 △7四歩 ▲4八金 △7三角 ▲5五歩 △4四歩
▲3七桂 △4三金 ▲4七金 △3三桂 ▲7五歩(図5)

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 このあたりで結構な長考をしています。△7四歩の瞬間に▲5五歩と突いて△同歩▲5五角から戦う順や、△7三角に▲4七金のほうがいいかとか、よくできる順を探していましたが、結論的にはよくわかりませんでした。
 図5に至ると歩が3か所でぶつかり、いわゆる「のっぴきならない」局面です。ここから戦いが激化します。

美濃囲いのコビン

△4五歩 ▲同桂 △同桂 ▲同銀 △5五角 ▲6六桂(図6)

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 先の▲7五歩は、角へのプレッシャーであると同時に△同歩なら将来7四に直接桂を打てる意味がありました。なので後手もこれ以上待機はできず、桂を交換して角を捌きにきた局面が図6。▲6六桂は後手からの△6六桂を防ぎつつ▲7四桂を狙った手です。
 先手玉は相変わらず不安定なため、ここでも形勢は不明、むしろ△1九角成として後手良しではないかというのが感想戦で話したことでした。

△4四歩 ▲5五飛 △同歩 ▲7四桂 △9二玉 ▲5四歩
△4五歩 ▲5五角(図7)

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 本譜は、△4四歩に飛車を切って、▲7四桂と▲5五角の美濃崩しのゴールデンコンビを実現しました。
 この詰めろ自体は厳しいですが、依然として先手の陣形があけっぴろげなので、決めきれずに反撃される展開になると負け戦でしょう。やはり形勢は不明です。

攻守交替

△7三歩 ▲2一角 △4二金 ▲5三歩成 △同飛 ▲5四歩
△5一飛 ▲4三歩 △4一金 ▲4二銀 △7一銀(図8)

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 途中、先手からは▲2一角に代えて▲5三歩成~▲6二銀とする手があったようです。▲7一角の打ち込みが含みになっており、厳しい攻めだったとのこと。
 図8では先手が決め手を逃した様相で、8二地点を補強されたため早い寄せはなくなっています。ここからはあきらめて飛車を取り、と金攻めを見せつつ後手の反撃に対処する展開となりました。

▲5一銀成 △同金左 ▲3二角成 △7六銀 ▲6六飛(図9)

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 後手の△7六銀という厳しい狙いを秘めた手に対し、▲6六飛を指せたのが本局の流れを引き寄せる手になった気がします。
 ずーののANNなどで「面妖流の受けを学びたい」と言っていた私ですが、この一手を指すときにそのことを思い出していました。果たしてこの一手、面妖さんはどう評価するでしょうか?

受け切る

△4九飛 ▲5七金 △7四歩 ▲7六飛 △7五歩 ▲同飛
△5六歩 ▲同金 △4七飛成 ▲6七銀 △7四歩 ▲同飛
△6二桂 ▲7七飛 △5四桂 ▲1一角成 △4六桂 ▲4二歩成
△6二金左 ▲5五馬 △4九龍 ▲5九歩 △1九龍 ▲3三馬引
△1八龍 ▲6八銀 △5三香 ▲4五馬 △5六香 ▲同馬
△1七龍 ▲8六香 △7四歩 ▲4六馬(図10)

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 7六の銀を取り切ってからは勝勢だと思いますが、そこから丁寧に手堅く指しています。
 最近では「焦らないほうが逆転されにくい」という面妖さんの言葉も聞きましたが、かく言う面妖さんでも「そうざいマジック」に逆転を許した経緯があるため、本局の私は執拗なまでに逆転の芽を摘みに行きました。

△7五桂 ▲7六銀 △1八龍 ▲6六桂 △6四歩 ▲7四桂
△7三金 ▲7五銀 △4八龍 ▲4七歩 △6五歩 ▲5五馬引
△5四歩 ▲6五馬 △5五金 ▲同馬寄 △同歩 ▲同馬
△3八角 ▲5八金打 △3九龍 ▲6五桂 △2七角成 ▲8五香打
△3六馬 ▲7三桂成 △同桂 ▲同馬 △4五馬 ▲6七歩
△7三銀 ▲8三香成 △8一玉 ▲8二金 △同銀上 ▲同成香
△同銀 ▲同桂成(図11)

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 最後は溜めに溜めての集中砲火で、141手で後手投了となりました。1時間半近い熱戦でした。

リーグ全局を終えて

 私自身、参加した当初は自分が最後まで対局をやりきれるか少し不安もあったのですが、無事最終局を終えることができました。たった11局とはいえ、5か月かけて指した11局と思うと、継続しただけの充実感があります。
 対局いただいた皆様にも感謝申し上げます。

 振り返りについては、ほかの方の結果も出てから改めて記事を書こうかなと思っています。参加者の多い指す順の中で、自分の所属するA2リーグはわりとしっかり追っていたつもりなので、簡単にでもA2全体の振り返りをしたいです。

 指す将順位戦の対局を終えて、これからの将棋ライフをどうするかについてはちょっとまだ迷っているところ。わりとこうした記事を書くのは好きですし、少しでも何かアウトプットをしたいなという気持ちはあります。

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