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ソフトバンク 非上場になるとどうなる?

みなさん、こんにちは。今日もお読み頂きありがとうございます。今日は、ソフトバンクGが非公開化するとかいった噂があるという事で、非上場会社になるとどうなるのか、そもそも上場することのPros/Consは何なのかについて触れていきたいと思います。

1.上場のメリット

1-(1)資金調達がしやすくなる

上場する主な目的は資金調達です。自社の発行する株式が市場(東証等)で取引されるようになります。業績が良くなれば通常は株価が上がります。株価は需給で決まるので、業績が良くなることで将来を期待する投資家がより株式を買いたいと思うようになるという事です。株価が上がれば、同じ株数を発行しても以前よりたくさんの資金を調達することが出来ます。ちなみに、一株の価格(株価)×発行済株式総数(流通している株数)=株式時価総額になります。

1-(2)知名度が上がる  

テレビ、新聞、雑誌、ネット等で会社名が取り上げられることにより会社の知名度が上がり、商品やサービスの認知度が高まります。結果として売上向上にもつながることがあります。さらには、売上の向上のみならず、人材獲得においても有利になります。上場企業は安定性や待遇、ガバナンス等について一定水準を維持していると捉えられます。そのため優秀な人材を確保することが出来るようになります。

1-(3)取引先や金融機関からの信用が上がる

基本的に四半期に一度は財務情報を開示する義務があるため、その会社の財務状況が外部から明らかになります。つまり、透明性が高まります。これによって経営成績や財政状態を取引先や金融機関に知らせることが出来て、信頼度がぐっと増します

1-(4)従業員のモチベーションアップにつながる

一般的には大手の企業というイメージがあるため、社会的信用も高まり従業員のモチベーションアップにもつながります。

1-(5)ガバナンスが強化される

企業における「ガバナンス」とは「健全な企業経営を目指す、企業自身による管理体制」を指します。かつて大企業による不祥事が相次いだことから、注目されるようになりました。上場企業には一定水準のガバナンスのレベルが求められます。

2.上場のデメリット

2-(1)上場維持コストがかかる

上場するには証券取引所に年間上場料を支払う必要があります。また、それだけではなく、透明性確保のために財務情報その他の開示義務が課されるので、それらを準備する人員も抱えておく必要があります。これらのコストは相当高くつきます。具体的には連結財務諸表や有価証券報告書を作成するには経理部、株式の管理を行うには財務部、投資家に説明をするのはIR部等の大きな関与が不可欠です。

2-(2)株主の意向に配慮する必要がある

上場すると経営者や一部の株主の意向で迅速に経営を行う事が一部難しくなる側面があります。経営方針は株主の賛同を得る必要がありますし、場合によっては短期的に株価を上げて、株価が上昇したタイミングで株式を売却しようという株主も存在します。経営者がこれに応えようとすると、長期的な観点からは投資すべき案件を避け、目先の短期的な利益を追求するようになるかもしれません。そういった意味で、中長期的な戦略を立てにくいというデメリットがあります。また、一方でその企業を応援しようと長期で株式を保有することを意図する株主もいます。これらの株主からの要求事項をある程度コントロールしつつ自社の経営戦略を練り実行していくことは至難の業です。

2-(3)買収の脅威にさらされる

上場すると株式が公開され、市場で誰でも自由に取引できるようになるので、競合他社やファンド等から買収されるかもしれません。買収されると企業文化が大きく変わったり従業員のモチベーションに大きな影響を与えたりします。敵対的買収をされると、買収された企業の経営陣は交代させられたりします。
※敵対的買収・・・買収対象会社の正式な同意を得ずに市場外で株式の取得を進める事です。金融商品取引法では1/3以上の株式を取得する場合には買付の意思を公表する必要があると定められており、TOB(株式公開買付)によって世間に広く知らせて行います。ただし、敵対的買収は一般的には成功率が低いとされています。そもそも既存株主が株式の売却に応じないという事もあります。そして、たとえ買収に成功して買収対象会社の経営陣を刷新しても、買収対象会社の従業員の理解を得られず、なかなか指示に従ってもらえない、モチベーション・パフォーマンスが低下してしまう、退職してしまうなどの事象も起こりえます。なので、通常は友好的買収をした際にはキーパーソンに対して、「このくらいの期間働いてくれたらこのくらいボーナス出すよ」というリテンションの特約を付けることが多いです。

3.ソフトバンクグループは?

さて、ソフトバンクグループがもし非公開化するとどうなるのでしょうか。皆さんご存じかもしれませんが、「ソフトバンク」と言っても「ソフトバンクグループ株式会社」と「ソフトバンク株式会社」は全く別の会社です。前者は持株会社、後者は国内の移動通信サービスを提供する子会社です。これは大きな違いです。詳細はこちらのWebサイトをご覧いただくと分かると思います。そして、実はこの2社は親会社である「ソフトバンクグループ株式会社」のみならず、子会社である「ソフトバンク株式会社」も上場しています。このようにある会社の支配権を持つ親会社と、その親会社に支配される子会社が同時に上場していることを親子上場といいます。

今年の1月、ソフトバンクグループ(SBG)は傘下の携帯事業会社ソフトバンク(SBKK)を東証一部に上場させる方針発表し、現在、年内の上場に向け、東証などと近く本格的な調整に入った。資金調達額は2兆円程度で、過去最大規模の新規株式公開(IPO)になる見込みといわれる。財務体質の悪化を避けつつ、調達した資金を新たな成長分野へ投資するのが目的らしいが、今回は親子上場の論点と取引所規則について、考えてみたい。
(Source. 現代ビジネス

親子上場をすると、資金調達しやすくなる点や子会社の経営の裁量が増える等良い点もありますが、コストがかかったりグループのコントロールが難しくなったりします。また、親会社が自社グループの利益を最優先して、子会社の株主(親会社自身も当然その子会社の株主ですが、ここでは親会社以外の株主を指します)の利益を不当に阻害する可能性もあります。これらの観点から、親子上場をしているグループは多くは無く、一時期親子上場していたグループも廃止していることが多いです。
そして、今回の非公開化の噂は、ソフトバンクグループ株式会社が非公開化するかもしれない、という話です。直近の動きではこちらのニュースを見ると分かりやすいのですが、ソフトバンクグループ株式会社は子会社であるソフトバンクグループ株式会社の株を大量に売り出すとの発表を行いました(売却内容詳細はこちら)。以下、Bloombergの記事です。

国内通信大手のソフトバンクの株価が約2カ月ぶりの安値を付けた。親会社のソフトバンクグループが最大22%の保有株式を売り出すと発表し、需給悪化を嫌気する売りが先行した。株価は31日の取引で一時、前週末比3.4%安の1382.5円と3営業日続落し、7月9日以来の安値水準となった。対照的に、ソフトバンクG株は一時3.5%高の6622円と上昇。ソフトバンクGは28日、ソフトバンクの株式最大約10億2800万株(28日終値換算で1兆4700億円規模)を国内外で売り出すと発表した。売出価格は9月14日にも決定し、受け渡しは9月23-25日のいずれかの日となる。
(Source. Bloomberg website

じゃあ、本当にソフトバンクグループが非公開化したらどんな影響があるのでしょうか。上場維持コストが削減できるという話もありますが、それはソフトバンクグループにとっては小さな話だと思います。
一番のポイントは孫さんが株主からの評価を気にせずに本業に集中できるようになる点だと思います。WeWorkへの投資から多額の損失を出して色々と言われたものの、「ユニコーンがコロナの谷に落ちている」と形容するほどスタートアップ企業への投資は孫さんにとって魅力的に映っているのだと思います。それとは対照的に株主はこのコロナ禍でリスクオフとなり(リスク回避的になり)ストップがかかる。そういった事にフラストレーションに感じ、もっと自由に経営がしたいと思っているのかもしれません。もちろん、株主は会社の出資者であり、株主の意向を無視できませんので、こういった事態を避けるために株式の多くを買い取って非上場化したいという事動機も推察できます。
一方で、当事者以外に関しては直接的な影響が直ちに出てくるという事はあまり考えづらく、最初はソフトバンクグループのニュースを見ることが少なくなる程度の影響かと思います。
そして、日経新聞に以下のような記事もありました。

アーム売却に先立ち、SBGは子会社だった米通信大手スプリントを同業の米TモバイルUSと合併させ、経営から手を引いた。8月にはソフトバンク株の一部売却を決め、SBGの出資比率は62%から40%に下がる。SBGの孫正義会長兼社長はソフトバンクの取締役会長を兼務し、同社は引き続きSBGの子会社だ。SBGは追加売却の意向はないと説明するが「いずれ子会社ではなくなるかもしれない」(ソフトバンク幹部)。
(Source. 日経新聞

ソフトバンクグループのソフトバンク株式会社に対する出資比率はすでに40%となっています。孫さんが取締役会長を兼務するので連結子会社という事になっているのだと思いますが、形式的に見れば子会社の一つの判断基準である出資比率50%を下回っています。これは結構衝撃です。正直個人的には将来子会社ではなくすと言ってるようなものだと思います。子会社ではなくなった後にどうなるか、ここからは完全に推測の域を出ませんが、WeWorkや他の出資先と同じようにMinority投資の銘柄の一つとなるのではないかと思います。そしてその頃には孫さんは本格的にソフトバンク株式会社の事業経営からは完全に離れ、株主としての影響力も限定的になり、どこかのタイミングで売却をするのではないか、そんな風に考えています。それが何年後なのかは分かりませんが、菅内閣誕生も受けて日本のキャリア間での競争は激化する(薄利になっていく)事が想定されるため、現在のソフトバンク株式会社は他の将来有望なスタートアップ企業よりも孫さんにとっての魅力度が高くないのかもしれません。

今日もお読み頂きありがとうございました。m(_ _)m



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