見出し画像

カジノ規制機関に、カジノコンサルからの出向者【塩川鉄也の国会質問ピックアップ】

カジノ管理委員会事務局にカジノ・IRコンサル企業からの出向者がいる―

2018年のカジノ実施法質疑の際に、当時の石井啓一カジノIR担当大臣は、カジノ管理委員会事務局の職員としてカジノ事業者を任用することもありうると答えました。この答弁で委員会室は騒然としました。

その後、2020年に発足したカジノ管理委員会事務局の職員を調べると…。
世界最高水準のカジノ規制を謳うカジノ管理委員会の実態は如何に。

<カジノ管理委員会とは>
カジノ規制のルール策定、カジノ事業免許等の審査、カジノ事業者、関連機器等の監督などを行う規制機関。政府が言う「世界最高水準のカジノ規制」の中核を担う。カジノ事業者を規制、監督する立場であり、カジノ事業者からの独立が求められる。

<2020年1月31日衆院予算委員会から抜粋>
◆カジノ管理委員会事務局にいる民間企業出身者について
【塩川議員】
政府のカジノ管理委員会事務局及びその前身であるカジノ管理委員会設立準備室に民間事業者が入っています。民間事業者は全体で何人入っているのか。

【武田良太大臣】
有限会社あずさ監査法人
PwCあらた有限責任監査法人、西村あさひ法律事務所、森・濱田松本法律事務所、日本政策投資銀行であると承知しております。計6名であります。あずさ監査法人が二名ということです。

監査法人を含め、計6名とのこと。
この監査法人がどのような業務を行っているのか、それがこの質問のポイントの一つです。
しかし、ひとまずそのことは置いておいて、職員の雇用形態と賃金について質します。

◆公認会計士が年収280万円で
【塩川議員】
この監査法人からの出向者の方は非常勤国家公務員であります。年収ベースで給与は幾らぐらいになるんでしょうか。

【内閣府並木稔政府参考人】
課長補佐級でございます上席政策調査員にあっては約281万円となっているところでございます。

【塩川議員】
公認会計士の人ですよ。大手監査法人の公認会計士の年収の平均は幾らか。賃金構造基本統計調査によると、年収1200万円とされております。
年収1200万円の大手監査法人からの出向者の人が、カジノ管理委員会事務局で年収280万円で働いている。

平均年収1200万円の公認会計士が、年収280万円の職場で働くというのは、なかなか考えにくいことです。差額分はどうしているのでしょうか。

◆出向元企業から給与補てんを受けているのではないか
【塩川議員】
疑念が湧く
わけです。非常勤国家公務員の監査法人の出向者の人は、出向ですから、所属する監査法人に在籍をしたままカジノ管理委員会で勤務をしているということですよね。

【並木政府参考人】
それぞれの出向元の企業に在籍したまま非常勤の一般職国家公務員としてカジノ管理委員会事務局に勤務している
ものでございます。

政府も出向元の企業に籍を置いたまま勤務していることを認めます。


【塩川議員】
ですから、出向元の監査法人に身分を置いたまま働いているんですよ。そうなると、当然、給与の補填を受けているんじゃないかと。
年収1200万円のうち、国からもらうのは281万円、残りの1000万円近くは出向元の監査法人からもらっている。そうなったら、どっちに顔を向けた仕事をしているのか。公平公正が問われる事態なんじゃないですか。大臣、どうですか。

【武田大臣】
非常勤職員についても、国家公務員法、国家公務員倫理法等の規定が適用されるほか、IR整備法において、事務局職員として一般の国家公務員よりも厳格な守秘義務というものが課せられておりますので、その点は心配ないと思います。

【塩川議員】
給与の大半は出向元の監査法人からもらっているような時点で、否定できないわけです。

武田大臣は、厳格な守秘義務が課せられているので心配ない、との答弁。
しかし、国からもらうのは281万円、残りの1000万円近くは出向元の監査法人からもらっている状況で、本当にそうなのでしょうか。
では、そもそも、あずさ監査法人やPwCあらた監査法人はどのような業務を行っているの企業なのでしょうか。問題の核心に迫ります。

【塩川議員】
このあずさとPwCの二つの監査法人は、IR、カジノ事業について、事業者や誘致自治体にアドバイスをするコンサルティング業務を行っているんじゃないですか。

【武田大臣】
御指摘の監査法人につきましてですが、具体的な事業内容の詳細というものまでは政府として承知しておりませんが、これらの法人ないし関連会社がIRに関するコンサルティング業務も手がけているということは承知をいたしております。

そうなのです。あずさ監査法人とPwCあらた監査法人はカジノ・IRのコンサル業務を行っています。武田大臣もそのことは認めます。

【塩川議員】
それで、パネルの方の左下を見てほしいんですけれども…

20200131-パネル・配付資料-1

◆あずさ監査法人の業務について
【塩川議員】
カジノ管理委員会に2名が出向している有限責任あずさ監査法人は、統合型リゾート、IR誘致支援を業務の一つにしています。あずさ監査法人がメンバーとなっているKPMGジャパングループのウエブサイトを見ると、「統合型リゾート(IR)支援、あずさ監査法人は豊富な知見と実績をベースに、IR誘致に向けた地方自治体の検討を支援いたします」とカジノ関連業務をPRをしています。

監査法人というと、いかにも規制側という印象を受けますが、あずさ監査法人はカジノ・IRのコンサル業務を行うという推進側の立場にあるわけです。
実際にカジノ・IRに関する業務も受託しています。

【塩川議員】
あずさ監査法人は、長崎県、佐世保市のIR、カジノの実施方針検討作成業務を受託をしている
んですけれども、特定の自治体、事業者に肩入れをしているんじゃないのか、こういう疑念が生じるんですが、答えられますか。

【武田大臣】
公認会計士等の資格を有する者を含むなど、会計監査やコンプライアンス等の厳正なカジノ規制の立案を行う上で必要な能力、経験というものが我々は求められておる、その上で採用しておるということです。

【塩川議員】
IR、カジノの専門の知見というんですけれども、コンサル業務をやっているということは、IR、カジノを推進する立場でのコンサル業務じゃないですか。

◆PwCあらた有限責任監査法人も…。
【塩川議員】
カジノコンサルティング業務を行っているのはあずさ監査法人だけではありません。パネルの右下にありますが、カジノ管理委員会事務局に出向しているPwCあらた有限責任監査法人はPwCジャパングループの一員であります。
PwCジャパングループのウエブサイトには、「統合型リゾート(IR)事業参入支援 PwCはラスベガスやシンガポールなどの海外IR事業者への業務提供経験を活用し、IR市場の創造を支援します」と、地方自治体への支援や民間企業への支援のメニューを並べています。

PwCあらた監査法人も、所属するPwCジャパングループがカジノ・IRのコンサル業務を行っています。

【塩川議員】
パネルの二枚目を見ていただきたいんですが…。

20200131-パネル・配付資料-2

【塩川議員】
大阪府と大阪市がIR、カジノ事業者審査のために設置をした大阪府市IR事業者選定委員会のメンバーにPwCあらた監査法人が入っているということは承知していますか。


【並木政府参考人】
地方公共団体の話でございまして、我々として認識しているところではございません。

大阪府・大阪市のカジノ・IR事業者を選ぶための選定委員会に、PwCあらた監査法人が入っている。
そのPwCあらた監査法人が、カジノを規制する立場であるカジノ管理委員会事務局にも入っている。
しかし、政府は大阪の件は認識していないという答弁。

【塩川議員】
カジノを監督するこういったカジノ管理委員会の事務局に、特定の事業者、特定の自治体に肩入れするような立場の法人が入っている。
こんなことがどうして認められるんですか。公平公正、おかしいんじゃないですか。行政をゆがめるものじゃないですか。

【武田大臣】
これは大手の監査法人だと思うんですね。その監査法人がほかでどういう仕事を、つまびらかに調べろといっても、それは無理なことだと思うんですよ、私は。そこまでは承知していない。ただし、そうしたIRに関するノウハウを持っているということは承知しておるということです。

武田大臣は、つまびらかに調べるのは無理だと答弁。カジノ管理委員会は政府が言う「世界最高水準のカジノ規制」の中核ではないのか。

【塩川議員】
こんなのはウエブサイトを見ればすぐわかる話なんですよ。
大体、どういう人物がカジノ管理委員会の事務局で働いているのか、こういったことについてきちっと把握しないで働かせているんですか。そっちの方が問題じゃないですか。 
PwCは、ゲンティンとかギャラクシーとか、カジノ企業の会計検査を受任している法人だと報道されています。PwCジャパングループは、2018年に大阪府市の大阪IRの事業化に関するアドバイザリー業務を3億7720万円で受託をしている、ここに書いているとおりであります。特定のカジノ事業者、誘致自治体とかかわりが深い事業者だ。 こういった実態で、カジノ管理委員会が特定のカジノ事業者、誘致自治体に有利な対応が行われないと言えるのか、この点について、安倍総理、いかがですか。

カジノ規制の中核を担うカジノ管理委員会事務局に
・カジノ・IRのコンサル業務を行う民間事業者からの出向者を
・非常勤職員という身分で、出向元から多額の給与補てんを受けることも否定せず、受け入れれば、
 特定のカジノ企業や誘致自治体に有利なルール作りが行われるのではないかー
 カジノ・IRを推進してきた安倍総理に突きつけますが…

(安倍総理答弁に立たず)
【武田大臣】
厳格な守秘義務を縛っておりますし、そもそも、我々管理委員会は事業者を選ぶ権利なんてないんです。正しく選んでいるか、正しいものかどうかというのを監督するのが立場なんです。

武田大臣は、カジノ管理委員会に事業者を選ぶ権限はない、という答弁。
事業者の選定について質しているのではありません。カジノ規制機関に、カジノ推進側であるカジノコンサルからの出向者がいるような状況で、カジノ規制が骨抜きになりはしないのか。特定のカジノ企業や誘致自治体に有利な仕組みづくりが行われるのではないか、ということです。

【塩川議員】
そもそも、制度設計そのものに、カジノ事業者の都合でつくられているんじゃないのか
と。これまでにも、公営ギャンブルでは認めていない顧客への貸付業務をカジノでは解禁をしたり1万5000㎡というカジノ面積の上限規制が外されるなど、カジノ企業の要求に沿った仕組みがつくられてきた

【棚橋委員長】
塩川委員、恐縮ですが、申合せの時間が来ております。

【塩川議員】
きっぱりと、カジノは要らない、野党のカジノ法廃止法案の審議、可決を求めて、質問を終わります。

まとめ

政府は、この質問を受けて、非常勤職員として雇っていた職員を、出向元からの給与補てんが禁止されている特定任期付き職員に変更しました。
その理由について武田大臣は「国民の疑念を払しょくしていかなければならない」と答えました。
事実上、これまでの措置が国民の疑念を招く行為だったと認めたものです。

しかし、これで問題が解消されたわけではありません。
特定任期付き職員は給与補てんが禁止されただけで、退職後に元の企業に戻ることが可能です。カジノ事業者にとって有利なルール作りが行われる懸念があります。

カジノ管理委員会には、規制側と推進側の役所間の人事交流を規制する「ノーリターンルール」もありません。

カジノ管理委員会がカジノ推進機関になってしまう懸念は払しょくできていません。
<スタッフ>

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?