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誰のためのカジノ・IR? 人の不幸の上に成り立つカジノが成長戦略なのか【塩川鉄也の国会質問ピックアップ】

人の不幸の上に成り立つカジノが成長戦略なのか

<2020年1月31日衆院予算委員会より抜粋>
【塩川議員】
刑法が禁じている賭博について、公設、公営、公益の場合に限って認めていたものを、民間企業に初めて認めたのがこのカジノ法であります。安倍総理が成長戦略と言うIRの収益の八割はカジノの上がりであります。賭博で負けるという人の不幸を成長戦略と言うのは余りにも情けない話じゃないでしょうか
 今でさえ重大なパチンコや公営ギャンブルによるギャンブル依存症を更に深刻にするものであり、多重債務を拡大し、治安の悪化や犯罪組織の関与などの負の影響を押し切ってまで推進する必要はない、このことを申し上げておきたい。

市民の声とともに

カジノ実施法が審議された2018年当時、世論調査ではカジノ解禁に反対が6割から7割でした。2021年8月に行われた横浜市長選でも、カジノを含むIR誘致に反対が7割以上でした。こうした市民の声に正面から向き合うべきだー石井啓一カジノ・IR担当大臣(当時)に迫りました。少し長いですが、政府の姿勢がよく表れている質疑です。

◆カジノによる負の影響、市民の心配に答えない大臣

202190530石井大臣

<衆院内閣委員会2018年5月30日から抜粋>
【塩川議員】
カジノ解禁について国民世論は反対が多数であります。その理由は何だとお考えでしょうか

【石井啓一IR担当大臣(当時)】
IRにつきましては、カジノばかりに焦点が当たりがちなことから、さまざまな弊害を心配する声が世論調査に反映されているのではないかと思われます。

【塩川議員】
IRにカジノが含まれるのははっきりしているんですよ。そのカジノの解禁に反対だという声が多数なんだから、カジノ解禁反対というその国民多数の理由は何だと考えているんですかということをお聞きしているんです。

【石井大臣】
ですから、カジノを単体で解禁するのではなくて、IRの一部として実施をするということが十分に知られていないのではないかと思っております。

【塩川議員】
いや、ですから、答えていないんですよ。そもそもカジノ解禁について反対が多数だということは出ているわけですから、その理由を端的に聞いているんですよ。もう一回。

【石井大臣】
これまで答弁してきたとおりであります。

【塩川議員】
説明になっていないですよ。ギャンブル依存の問題とか、治安の悪化の問題とか、青少年の健全育成の心配だとか、結局、こういうところがあるから反対の声が多数であるわけで、国民の中には、カジノ、ギャンブルは依存症経済破綻地域社会の荒廃をもたらすことへの懸念がある、それが反対が多数の理由であるわけです。

IR・カジノ反対が多数の声なのはなぜかー。
何度聞いても、石井大臣は「カジノばかりに焦点があたっているため」と答えるのみでした。
カジノがIRの中核であることは政府も認めていることです。依存症、多重債務、治安の悪化、犯罪組織の関与など、カジノの負の影響について正面から答えることができなかったのではないでしょうか。
質疑は続きます。

◆賭博を推奨するのか
【塩川議員】
大臣に重ねてお尋ねしますけれども、そもそもギャンブルというのは、抑止、抑制すべきものじゃないでしょうか。

●石井大臣答弁に立たず

【内閣府中川政府参考人】
今、国会を挙げて、それから政府も含めて、ギャンブル等による悪影響に対して真っ正面から向かって抜本的な対策を強化しなければいけない、そういう流れにあるということは重々理解してございます。

【塩川議員】
大臣にもう一回聞きますよ。
そもそもギャンブルは、抑止、抑制すべきものじゃないんですか。

●石井大臣答弁に立たず

【中川政府参考人】
これまでも議員立法などにより各種公営競技法がつくられてきて、その法制のもとで公営競技などが行われているというふうに理解をしているところでございます。

【塩川議員】
ギャンブルそのものについて、抑止、抑制すべきものというのは当然じゃないですか。大臣、お答えください。

【石井大臣】
現行法上、カジノ行為については刑法等で禁止をされている
ということかと存じます。

ようやく答えました…。
「ギャンブルは抑止するべきものではないか」と何度聞いても答えようとしない石井大臣でしたが、刑法等で禁止されているとの答弁。

【塩川議員】
IRは、その中核にカジノがエンジンとしてあるわけですから、抑止すべきギャンブルというのを奨励することになってしまうんじゃないのかと思うんですが、率直にどうですか。

●石井大臣答弁に立たず

また答弁に立たなくなってしまいました…。

【塩川議員】
IRを推進するということは、抑止すべきギャンブルというのを結果として収益源として奨励することになるんじゃないですかということを聞いているんですけれども、大臣、いかがですか。

●石井大臣答弁に立たず

【中川政府参考人】
IR制度の究極の目的は日本を観光先進国に引き上げていくということでございまして、そこでさまざまな事業を展開していく際の民間事業資金を獲得する一つの方法としてカジノも位置づけられている、そういう形でございます。

【塩川議員】
今回のIRにおいては、公共政策としてのIRとして、MICEビジネスや滞在型観光モデルや日本の魅力発信、こういうものが政策目的に合致をしているということで、賭博も合法化できるというスキームになるわけです。これは、その解釈ですと、どんどんどんどん広がっていくんじゃないのかなという懸念がするわけであります。

「カジノと一体となったIRの推進は、抑止するべきギャンブルを推進することになるのではないか」
こう質問すると石井大臣はまた答弁に立たなくなってしまいました。
カジノ・IRを推進するのならば、その負の影響に向き合うのが責任ではないでしょうか。

ギャンブル依存症増加の懸念

◆深刻なギャンブル依存症の実態 
国内において、すでに公営競技やパチンコなど既存ギャンブルによる依存症の疑いのある人は320万人と、世界で最も深刻です。
依存症の治療に取り組む久里浜医療センターの樋口院長から、国内における依存症の実態について答弁がありました。

<衆院内閣委員会2018年5月23日から抜粋>
【塩川議員】
最初に久里浜医療センターの樋口院長にお尋ねをいたしますが、厚生労働省として、ギャンブル依存症者と疑われる、そういう人の割合についての調査をしていると承知をしております。生涯を通じたギャンブル等の経験等を評価した場合にギャンブル依存症者と疑われる者の割合は、日本においてどうなっているのでしょうか。

【樋口進参考人(久里浜医療センター院長)】「私たちの研究班が行った全国調査において、SOGSというスクリーニングテストを用いてギャンブル等依存が疑われる人の割合を推計いたしました。その結果は、生涯の経験等による評価でギャンブル等依存が疑われる人の割合は3.6%。これは、生涯の過去のどこかでSOGSを満たす期間があった、そういうふうな理解でございます。それが3.6%。

◆依存症や多重債務問題に取り組む弁護士から
このような実態の中でさらにカジノが実施されれば、ギャンブル依存症や多重債務者が増加し、生活破綻や治安悪化が懸念されます。
参考人質疑の中で、多重債務問題に長年取り組んできた新里宏二弁護士から、ご自身の実体験に基づく意見がありましたのでご紹介いたします。

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<衆院内閣委員会2018年5月31日から抜粋>
【塩川議員】
公営ギャンブルやまたパチンコなどの既存のギャンブル、その害悪、弊害、これはどのようなものか。いろいろ御体験を通じてお考えのところをお聞かせいただけないでしょうか。

【新里宏二弁護士(日弁連のカジノ・ギャンブル問題検討ワーキングチーム座長)】
36年弁護士をし、ほとんど多重債務の問題に取り組んできた中で、何度も何度も借金をつくって、整理をするんだけれども、結局、僕らも叱っていたんです、どうしてこんなばかなことをするんだ、家族が泣くじゃないかといって。だんだん家族がなくなっていき、そして会社もなくなっていく、その中で自殺した人も体験しました。まさしくギャンブル依存症による借金で自殺につながる。
実は私、江原ランド、韓国の唯一の自国民が入るところにも行きましたけれども、そこで、一番近くの駅のところにワゴンカーがあって、どうもそこに女の子のポスターがあって、お父さん、お母さん、自殺しないでくださいと書いていました。まさしく江原ランドの中で、数年間で四十八名の方が自殺をする。まさしく借金をつくって自殺をしていくということ、それが大変な悲劇。
そして、日本が非常に今、320万人というギャンブル依存症が疑われる方、3.6%程度ですけれども、これは諸外国と比べて大変多い数字でございます。

【塩川議員】
その他の海外の事例、例えばシンガポールですとか、カジノの害悪、社会的弊害などについて、お聞きになっているようなことがありましたら御紹介いただけないでしょうか。

【新里参考人】
私は、江原ランドだけじゃなくて、シンガポールの方にもお邪魔してきました。二カ所のカジノのところに行ってきましたけれども、やはり高齢者の方が非常に多くて、中国系の方が非常に多いなという印象を持ったところでした。
市民グループの方と、大変相談が多くなってきているということで、牧師さんがやっている市民グループのところに相談に行きましたけれども、牧師の中まで、やはり借金をつくってしまって、仲間で一回お金を出してやったんだけれども、その後、また船上カジノをやって、結局、もう協力しないと言って投身自殺をされたということで、反対運動もされたということを聞きました。
そこで出てきたのは、やはり日本で言う闇金が大変ばっこしているということを聞きました。韓国でもサチェという私金融、闇金がばっこしているとも聞きましたし、それから、シンガポールではローンシャークという闇金がばっこしているということも聞いております。そのように、正規のところから借りられなくて闇金まで追われていく、そういう状況がシンガポールでも出てきているということを聞いてまいりました。

まとめ

博打・賭博は刑法で禁止されています。その理由は、言葉に出さなくても、多くの方が、肌感覚で実感していることではないでしょうか。賭博にのめりこみ身を崩す。本人も、周りの人も不幸になる。引いては社会全体に深刻な悪影響を及ぼす。過去の歴史の中で、多くの失敗があったわけです。
その賭博を、営利目的の民間事業者に開放するのがカジノ実施法です。
「IR」という綺麗な言葉で隠しても、カジノの本質は変わりません。カジノの利益はカジノ利用者の負けであり、人の不幸で成り立つビジネスです。依存症、治安悪化や犯罪組織の関与など、負の影響は避けられません。大臣の答弁からは、こうした負の影響に真剣に向き合う姿勢は感じられませんでした。

実際に、カジノ実施法を巡っては、見過ごすことのできない深刻な汚職事件も発生しています。
2019年の12月にはカジノ・IR担当副大臣であった秋元司衆議院議員(自民党を離党)が収賄容疑で逮捕されました。20年1月には、収賄額がおよそ倍に膨れ上がり再逮捕。さらに8月には秋元氏が贈賄側の中国企業に裁判で虚偽証言をするようもちかけていたとして、証人買収の疑いで再び逮捕されるという異例の事態となっています。
贈賄側の中国企業は、カジノ推進派の自民党4人、日本維新の会1人の衆議院議員にも賄賂を送っていたと供述しており、巨大利権であるカジノの汚い実態が浮かび上がっています。
秋元氏は、IR担当副大臣として、カジノIRの制度設計を行う立場にあった人です。
この事件は、カジノ参入をもくろむ企業が、カジノIR担当副大臣やカジノ議連の幹部などの推進派議員に賄賂を贈り、その見返りとしてIR設置数を増やすよう求めていたとされているものであり、カジノ解禁の根拠となるカジノ実施法の根幹にかかわる、深刻な政策買収疑惑です。

この一件を見るだけでも、いかにカジノが汚職にまみれ、莫大な利権が絡むゆえに癒着が避けられないか明らかです。

日本共産党、立憲民主党、国民民主党などの共同会派は、2020年の通常国会の冒頭、カジノ廃止法案を衆議院に共同提出しました。法案は、カジノを中核とするIRを推進し整備を進める二法を廃止するものです。
カジノはきっぱり廃止を!

こんなカジノ実施を要求しているのは誰なのかー。
それは、別のまとめにて。
<スタッフ>

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