見出し画像

海外動向 6/12〜6/18

当研究所では、ケーブル業界の独自の視点で放送・通信・メディア等に関する海外動向の調査・分析を行っております。このノートでは、おもに海外で一般に公開されたニュースや企業からの発信情報をもとに興味深いものをご紹介します。


◆ 今週の重要トピック

長い間、話題となっていたSkydanceによるParamountの買収交渉は、どうやら正式に破談となったようです。両社ともに破談となってからすぐに社内向けにレターを発信。スタッフに苦労を労い謝意を表明しています。そして注目を集めるのが今後の行方です。Paramount+を他社の配信サービスとマージすると言われていますが果たしてその行方は…。

◆ 業界再編(M&A)

ParamountとSkydanceの買収交渉が破談

当初、Paramountの売却先としてSkydanceは有力な候補とみなされ、4月から5月3日までの独占交渉期間に入っていましたが結局まとまらず。その後、ソニー・Apollo連合などいくつかの競合が現れたもののSkydanceとも継続協議を行い、6月早々には合意したと報じられていました。しかし、その後、Paramountを保有するNational Amusements(Shari Redstone氏の持ち株会社)と条件交渉に入り、最終的には合意できず、6月11日に破談となったようです。ただし、両社は今後も「協力関係は継続する」としています。

こちらはSkydance側の声明が書かれています。
Skydance CEO、社内にParamountとの協議終了を報告

CEOが社内チームに送ったメールには「今日、その幕は閉じた(today that chapter ended)」と書かれており、交渉が再開されることはないようです。

Skydanceとの買収交渉が破談したParamountの次ステップ

破談になったSkydanceからの提案はParamountを保有するNational Amusementsの買収に20億ドル、議決権を持たないクラスBの株式をプレミア価格で買い取るための45億ドル、負債への充当に15億ドル、合計80億ドル規模です。この経済条件で合意したものの、そのほかの諸条件の詰めで、最終的にオーナーであるShari Redstone氏の承認が得られなかったと言われています。あくまで憶測の域を出ませんが、クラスB株主への支払いを確保するためにNational Amusementsの買収額が引き下げられたこと、つまりRedstone氏の取り分が減ったことが原因だとも。

なお、Paramaountの買収に関してはソニー・Apollo連合がはるかに金額の大きい260億ドルで興味を示していましたが、ParamountはSkydanceの提案を支持、検討していました。その後、ソニー・Apolloは興味を失いつつあると言われています。

Paramountの今後ですが、Skydanceとの交渉が破談に終わった翌日、6月12日に共同CEOから従業員向けにメモが送られています。内容は以下の通り。

  • ストリーミング戦略を変革し収益化を加速する。これはParamount+の他社配信サービスとの合併を意図したものと言われています。

  • 組織のスリム化とコンテンツ以外のコスト削減。年間5億ドルの規模を計画しているようです。

  • 一部事業の売却、負債の削減。

こちらの記事には従業員に送ったメモの内容が書かれています。
共同CEO、破談後の戦略的プランは進行中と伝える

Paramountの買収に関するニュースは相変わらず溢れかえっていますが、こちらは過去の経緯が時系列で整理されており参考になります。
ParamountのM&A関連の噂など

2016年にはAT&TやVerizon、2017年にApple、2020年にはNetflixが興味を示していたようです。

◆ 新技術

光ファイバーをセンサーとして使い、新たな社会インフラ化

日本でも少し前にファイバーで地震を測定するといったニュースが報じられていましたが、それと似た米国発の内容です。ですが対象が幅広く、道路における車両の動きや工事の状況、ライフラインであれば液体やガス漏れ検知といった分野にまで及んでいます。例えば道路であれば、そこを走っている車の速度や事故の検知が可能で「分散型交通センサー」として利用できるようです。この技術をDFOS(Distributed Fiber Optic Sensing、分散型光ファイバーセンシング)と呼び、これを推進する協会(Fiber Optic Sensing Association)まであります。

◆ 規制・政策

米国、大手テック企業に対しユニバーサル基金への拠出を求める動き

AT&T、Verizon、CenturyLink/LumenなどがFCCへの働きかけを行なっています。大手テック企業がどこを指すかは書かれていませんが、おそらくAppleやGoogle、Metaなどが対象。つまり、ネットでビジネスを展開している企業もユニバーサル基金を負担すべきだという主張かと思われます。

◆ 業界動向

LGI、ワーナーが保有するFormula Eの株式を取得し支配株主へ

金額は書かれていませんが、取得後の保有比率は65%になります。Formula EはFIA(国際自動車連盟)公認の唯一の電気モーター(EV)レースです。なお、同じLiberty系列のLiberty Mediaは今年、Moto GPを買収しています。

LGI、英国でのAltnet事業者の買収を積極的に検討

CEOの発言です。LGIは、英国のISPであるVMO2(Virgin Media O2)をTelefonicaと共同保有しており、VMO2のファイバーインフラ構築・運用事業をFibreCoとしてスピンオフする計画です。このFibreCoと同業となる、つまり英国におけるAltnet事業者の買収を示唆した発言です。原文は「looking actively」です。

◆ メディア

配信サービス各社の解約率とバンドルの効果

調査会社Antennaのレポート「State of Subscriptions」によるもの。米国での2024年第1四半期は、総加入者数が前年同期比で920万人増の5520万人と大幅に増えました。しかし、解約はもっと増えており前年同期比1240万人増の5040万人。つまり純増数は減っていることになります。レポートでは、配信サービスごとの解約率の推移がグラフになっており、Netflix以外は軒並み4〜9%という水準。興味深いのはDisneyで、Disney+、Hulu、ESPN+単独だと4〜8%台なのに対し、この3つをバンドルすると2%台まで低下しています。バンドルによる解約防止効果を示した結果になっています。

ヨーロッパでは配信サービスに年平均696ユーロを支出

5000人を対象に配信サービスの利用習慣などを調査したBangoの「European Subscription Wars」によるものです。最も支出額が大きいのは英国で814ユーロ、続いてフランス780ユーロ、スペイン720ユーロ、ドイツ684ユーロ、イタリア600ユーロとなっています。

欧州、コンテンツへの投資額で配信事業者が放送事業者を上回ると予測

Ampere Analysisによるレポートです。配信事業者によるコンテンツへの投資額は2024年に100億ユーロに達し、これは既存の放送事業者を上回るというもの。放送事業者の投資額は2016年以降19%減少しており、2023年には80億ユーロ。欧州の主要5カ国、ドイツ、フランス、英国、スペイン、イタリアを対象にした調査です。

◆ インフラ

ニュージーランドで25ギガサービスを開始

ファイバーでのインフラ構築、運用を行うChorus、このインフラを使ったISP、2DegreesがNokiaの25G PONを使用して、法人向けに25ギガの固定ネットサービスを提供しています。料金や個人向け販売の有無は書かれていません。

◆ その他

スマートTVに搭載されるOS、シェア2位にHisenseのVIDAAがランクイン

CTVMA(Connected TV Marketing Association)によるレポートです。この協会は世界で使用されているスマートTVの追跡を行なっており、それをベースにOSシェアを出しています。算出手法、期間などは書かれていませんが、1位はSamsungのTizen(12.8%)、2位にはHisenseのVIDAA(7.8%)が入っています。FireTVは6.4%でAndroidTVの5.9%より上位に入りました。

米国、ファイバーブロードバンド協会の表彰候補にドコモ子会社がノミネート

FBA(Fiber Broadband Association)が、ファイバーブロードバンドを強化、発展させる個人、企業、技術を表彰する「Fiber Forward 2024 AMPLIFY Award」の最終候補者を発表しています。コミュニティ・インパクト賞にDOCOMO PACIFIC(ドコモの子会社)がノミネートされました。グアムでの活動が対象になっているようです。このほか新技術・技術革新分野では、Googleの20ギガ+Wi-Fi 7の固定ネットが入っています。ノミネートされるのは賞ごとに3つで、受賞者は7月28日に開催される「Fiber Connect 2024」で発表されます。

監修者・執筆者:J:COM あしたへつなぐ研究所 編集メンバー

記事のご利用について:当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、JCOM株式会社及びグループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!