北海道新聞記者の逮捕に抗議声明

日本ジャーナリススト会議広島支部は7月18日に広島市内で開いた総会で、北海道新聞記者が旭川医大取材中に逮捕されたことに抗議する声明を発表しました。同大や北海道警、北海道新聞社に送付します。

旭川医大で取材中の北海道新聞記者の不当逮捕に断固抗議する

国立大学法人旭川医科大学で学長解任問題を取材中の北海道新聞の記者が建造物侵入容疑で大学職員によって現行犯逮捕され、北海道旭川東警察署に48時間身柄を拘束されるという事件が起きた。国立大学法人である同大は公共の施設であり、研究・教育活動の妨害や器物損壊の恐れがあるといった明白な理由がない限りいたずらに市民の出入りを規制すべきではなく、取材記者の出入りも認められて当然である。ましてや、地元に限らず広く重大な関心事となっていた問題について取材活動中の記者を逮捕・拘束するというのは不当極まりなく、報道の自由、国民の知る権利を侵害するもので断じて容認できない。

同大では昨年12月以降、各種メディアで報じられてきたように吉田晃敏学長による数々の不祥事が発覚した。そうした中で今年6月22日、学長解任の是非を協議する会議が非公開で開催された。その際、大学当局が事前に新型コロナウイルス感染対策を理由に記者を含めた学外者の立ち入り禁止を通知していたことをもって、取材目的で構内に入り実際に取材活動をしていた記者の行為を「不法侵入」と主張することは筋違いも甚だしい。これは、大学側が一方的に「取材拒否」をしたものであって、むしろこうした取材拒否やそれまでも情報公開に消極的対応を取り続けてきた大学当局や、大学の求めに応じて不必要な拘束を行った警察の姿勢こそが問われるべきである。

一方で、当該記者の所属する北海道新聞社の対応にも納得できない点が多々ある。逮捕翌日の朝刊で「容疑者」呼称を付けて実名で報じ、「事実を調査し、読者に説明します」とコメントしただけで、ただちに大学と警察に抗議し、記者の釈放を求めなかったのはいかなる理由があれ信じ難い。逮捕から2週間後の7月7日にようやく公表された社内調査結果の報告でも、当該記者が社に届いていた立ち入り禁止通知を知らされないまま上司や先輩の指示のもとに現場で取材に当たっていたことを明らかにしながら、「記者教育に問題があった」「情報共有や指示の不徹底」などと釈明に終始し、取材で発生する問題の責任を3カ月の新人記者に負わせて会社としての責任を棚上げするありさまには憤りすら覚える。加えて、大学や警察の対応の問題点に何ら触れないというのでは、報道機関としての存在意義を自ら投げ捨てるものと言わざるを得ない。

今回の事件はマスメディアの取材現場が置かれている厳しい現実を浮き彫りにした。このまま看過すればジャーナリズムをめぐる危機的状況はさらに深刻さを増すだろう。この流れに抗していくことは我々一人一人に突き付けられた緊要な課題として受け止めなければならない。その決意のもと、我々は日本ジャーナリスト会議(JCJ)広島支部2021年度総会の場において今回の事件における旭川医大と道警、そして道新の一連の対応に強く抗議する。
        2021年7月18日JCJ広島支部2021年度総会参加者一同

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