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投稿 日本はアジアを侵略し、米国は人類に初めて原爆を投下した 両国は過ちを認めていない

敗戦から77年後の全国戦没者追悼式で、岸田文雄首相は日本人への追悼は述べたが、アジア諸国の人々への言葉はなかった。中国新聞の記事によると、2012年に故安倍晋三氏が首相に復帰してから、それまでの首相式辞(談話)にはあった「アジア諸国の人々に多大な損害と苦痛を与えた」「深い反省」「不戦の誓い」などの言葉が途絶え、岸田首相も復活させなかった。天皇の言葉には、「深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返さぬことを切に願い」という文言が今年も入っている。

岸田首相式辞より
先の大戦では、300万余の同胞の命が失われました。
祖国の行く末を案じ、家族の幸せを願いながら、戦場に斃(たお)れた方々。戦後、遠い異郷の地で亡くなられた方々。広島や長崎での原爆投下、各都市での爆撃、沖縄における地上戦など、戦乱の渦に巻き込まれ犠牲となられた方々。今、すべての御霊(みたま)の御前(おんまえ)にあって、御霊安かれと、心より、お祈り申し上げます。

天皇の言葉より
ここに、戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ、過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、全国民と共に、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。

アジア諸国にとって日本は侵略国であることは歴史の真実だ。安倍氏たちが歴史を修正しようと試みても、他国へ軍隊を派兵し、平和に暮らしていた人たちから土地や財産を奪い、逆らう者には過酷な仕打ちをしてきたことは、さまざまな証言によって明らかだ。安倍氏らも「そんなにはひどくなかった」と言っているだけで、日本軍の行為そのものは否定できない。日本軍性奴隷(従軍慰安婦)問題にしても「軍の関与を示す証拠はない」と繰り返すが、性奴隷の存在は否定できないのだ。普通の人間なら、相手が許してくれるまで謝罪し続けるのが当然の生き方だろう。

ウクライナに侵略したロシアのプーチン大統領のことを悪魔のようにいう人が多いが、かつての日本の指導者も同じ悪魔だったのだ。わたしたち日本国民は二度と悪魔を出現させないようにする責務がある。そのためには、敗戦記念日や原爆の日には、きちんと過去に向き合い勉強することが大切である。

ことしの8月6日に、私は「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)」の一員として元広島市長の平岡敬さんの講演会を主催した。ウクライナ戦争によって核戦争が本当に起こるかもしれない危機感が高まっている。平岡さんは朝鮮半島からの引き揚げ者であり、中国新聞や中国放送でジャーナリストとしての経験もある。90歳を超えた今も講演などで発信を続けておられ、今年は、ぜひこの人の言葉を聞きたいと思った。

共感したのは、「世界で最初に核兵器を使ったのはアメリカであり、人類を攻撃対象にしたのはアメリカが最初でいまのところ最後の国である」との趣旨の発言だ。プーチンが核兵器使用を示唆したことで、世界は驚き、とんでもない奴だという批判が巻き起こったが、プーチンにしてみれば最初に原爆を投下したアメリカは、そのことを過ちと認めていない。自分は核兵器を使うこともあると正直に言っただけで、使ってもいないのに、現実に使ったアメリカなどからなぜ非難されるのか。これがプーチンの本音だろうし、ロシアの世論にもそういう考えはあるのだろう。

ではどうすれば核戦争の危機を防げるのか。平岡さんは米国に広島、長崎への原爆投下は過ちであったと認めさせることだと力説する。核兵器禁止条約は核兵器を必要悪でなく絶対悪として、使用、保有、開発や、自国領土に持ち込むことを禁止した。アメリカが執拗に条約に反対するのは、原爆投下が過ちであったと認めることにつながるからなのだろう。原爆によって戦争終結が早まり多くの人命が救われたという核兵器肯定論者には受け入れられない条約なのだろう。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000433139.pdf

だからこそアメリカが原爆は過ちだったと認めさえすれば廃絶は一気に可能になる。人類で初めて核兵器の犠牲になった日本人がいま相手にするのは、ロシアでも中国でもましてや北朝鮮でもなく、核兵器を使った唯一の国であるアメリカなのである。平岡さんによるとアメリカの若者たちの間に過ちを認める声も出始めており、核戦争が現実の危機となった今こそ、岸田首相たち日本政府と私たち日本人は、原爆投下の過ちを認めるようにアメリカに訴えなければならない。

夢物語と笑っていては、人類は核戦争によって絶滅するかもしれない。気候変動、核戦争、感染症パンデミックという3つの危機が私たちを襲っている。一番解決しやすいのが、核戦争ではないだろうか。核兵器廃絶という合意ができれば明日からでも危機は取り除かれるのだ。

日本の役割として平岡さんは、核兵器だけでなく原発やウラン鉱山など世界の核被害者の医療センターを日本政府の責任でつくる。世界の核被害者救援基金をつくる。原爆展を国家事業として世界で開催する。原子力の平和利用をやめる。以上のことを、著書を読み上げながら述べた。今こそ実現が求められる課題ばかりである。

8月6日に広島市長が世界に訴える平和宣言。平岡さんは市長になって最初の1991年宣言にアジアへの謝罪の言葉を入れた。

日本はかつての植民地支配や戦争で、アジア・太平洋地域の人びとに、大きな苦しみと悲しみを与えた。私たちはそのことを申し訳なく思う

各方面に配慮した言葉だったというが、国が表明したのは平和宣言に遅れること4年後の1995年、社会党の村山富市首相である。しかし第2次安倍政権になってから、この言葉を戦没者追悼式で首相が述べることはなくなり、天皇だけが言い続けているのだ。なんか変な国である。変どころか、自らアジアに謝罪し戦争の過ちを認めない限り、アメリカに原爆投下の過ちを認めよと迫ることはできない。

核兵器禁止条約を無視しながら、核兵器保有国と非保有国の橋渡しをすると言い続ける岸田首相に要望する。アジア諸国への過ちを日本が認めた上でアメリカに原爆投下の過ちを認めさせる交渉を直ちに始めてほしい。それこそが、人類が生き延びる道である。(藤元康之)




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