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質問紙調査の回収率を上げるには

横断研究で頻繁に使用されるデータ収集方法に質問紙調査があります。英語ではquestionnaire、フランス語ではenquête(アンケート)と呼ばれます。

短期間に多くのデータを集めることができるため、手軽な研究手法の一つですが、データ収集前に十分な吟味を行わないと、真実からゆがんだ情報、ごみ箱に捨てるしかないデータを集めるだけに終わってしまいます。研究疑問に対して、質問紙調査が妥当と判断した場合、対象者を選定し、質問紙を作成します。そのとき、質問紙の構成、質問文の作成、回答方法、質問紙のレイアウトをどうするかなど、留意すべき点は多くあります。

これらの工夫は、回収率を上げるためにも役立ちます。回収率が低いと、未回収の対象者の意見が反映されていないため、データの信頼性が損なわれます。

ある調査では、郵送法の調査票回収率は、対象者の興味のある内容だと2.4倍、書留郵便だと2.2倍、謝金ありは2.0倍、調査票が短いと1.9倍、事前連絡があると1.5倍、カラーだと1.4倍、調査機関が大学だと1.3倍、高くなるという結果でした。(文献1)

近年はWebベースの調査も多く行われています。2015年にスイスとフランスで開業医を対象に行われた調査では、郵送群と比較してWeb群の参加率は4倍以上低い結果でした(10.7% vs 47.9%)。一方で、Web群の応答時間の中央値は郵送群に比べてはるかに短く(1日 vs 1~3時間)、調査票の回答が完全であった割合はほぼ2倍でした(63.8% vs 34.6%)。(文献2)

質問紙調査を行うときには、対象者の特徴や質問の内容を考慮して、実施方法を決め、高い回収率を目指したいですね。

文献1:Edwards P, et al. Increasing response rates to postal questionnaires: systematic review. BMJ. 2002; 324(7347): 1183. doi: 10.1136/bmj.324.7347.1183

文献2:Sebo P, et al. Rates, Delays, and Completeness of General Practitioners' Responses to a Postal Versus Web-Based Survey: A Randomized Trial. J Med Internet Res. 2017 Mar 22;19(3):e83.
doi: 10.2196/jmir.6308.

                             内海 桃絵

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