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Don’t Feel, Think! ~論文を読むということ~

ある街でコロナを広げたコウモリの正体

最近、American Journal of Biomedical Science & Researchというジャーナルで興味深いミニレビューが発表されました。
論文のタイトルは、“Cyllage City COVID-19 outbreak linked to Zubat consumption”で、世界的に流行しているCOVID-19に関するものです。

タイトルを読んで、「あれ?」っと思う人も多いかもしれませんが、
そうです
この論文、ズバットというポケモン(コウモリっぽい)がある街(ポケモンに出てくる街)でのCOVID-19流行に関係していると主張するものです。
もちろんこれはフェイク論文です。

公開されている論文だから正しいわけではない

この論文を書いた著者は、先日「Predatory journals are especially dangerous during the COVID-19 pandemic」という記事でこの論文を投稿した意図を説明しています。

著者はこの論文を通して、ピアレビューもなく、編集もなく、事実確認もせずなんでもかんでも採択する、いわゆるハゲタカジャーナルの問題提起と注意喚起をしたかったとのです。
この論文ようにすべてがフェイクというものはなくとも、
COVID-19関連の論文でも、これまで公表された後に撤回されているものがいくつもあるようです。
「公開された論文だからといって正しいわけではない」
当たり前のことを言っているようですが、その判断は簡単ではありません。
実際に、この論文はある物理学者に引用されてしまったようで、研究者であってもそのような判断になってしまうことがある例だと思います。

批判的に読む

論文を理解し、それをエビデンスとして実践で活用するためには、    どうすればいいでしょうか。
それには、批判的に読むことが必要になります。
すごいジャーナルに載ってるから                   とか
大規模な調査だから
という何となくの感覚で判断するのではなく、
自分自身で考え、判断することが大切になってくるのだと思います。

この論文の良いところはどこか、欠点限界はどこか、どんなことが言えて、何が言えないのか、論文の主張に対する対象や方法は適切か・・・などなど色々な視点で考えることが必要です。

そうはいっても論文ってどうやって判断すればいいの?という方には、この本がおすすめです。

よくわかる看護研究論文のクリティーク 第2版: 研究手法別のチェックシートで学ぶ

この本では、研究の種類別にクリティーク(批判的に読み吟味すること)の方法を具体例を交えながら解説してくれています。

論文を読み、理解することは簡単なことではありませんが、
JCEBPのnoteが、エビデンスを臨床で使うための参考になるものにしていければ良いなと思います。

余談・・・

どうでもいいことですが、
ここで紹介したニセ論文の第1著者の所属は日本のニューバークタウン大学
(どこ?)となってます。
また、第3著者は
大人気海外ドラマ「ドクターハウス」の主人公グレゴリー・ハウス診断医で
所属もドラマで出てくる病院になってますね。
ハウスの口癖は「人は嘘をつく」なので、これも著者のユーモアでしょうか。
芸が細かいなぁと感心して読んでしまいました。

(文責:的場)

#エビデンス #EBP #JCEP #コロナ #covid -19 #ポケモン

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