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ロボットと看護

 様々な領域で、ロボットが活躍しています。人が行うには危険な場所での作業や細かい作業など、ロボットに適した仕事、ロボットにしかできないことがありますね。また、最近では、人と会話ができたり、表情が豊かになってきたりと、びっくりするくらい人に近い形にも発展してきています。
 医療や介護の領域でも、このロボットの力は期待されています。一方で、ロボットが人に置き換わることが難しい仕事もあります。看護は、緊急時には特に臨機応変な対応が必要であることや、患者さんとの心の相互作用を大切にしていることから、ロボットに任せられることは現時点ではそれほど多くはないのかもしれません。しかし、医療の需要が増加する一方で、マンパワーが不足していくことが予測されている中で、また、ロボットの機能が著しく発展している中で、看護領域におけるロボットの導入は今後どのように進んでいくと予測されるのでしょうか。そして、ロボットを臨床に導入する前に検討しておかなければならないことは何でしょうか。
 看護領域におけるロボットの活用についてまとめられたScoping reviewから、世界でロボットの活用がどのように考えられているのかを見てみたいと思います。
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Gibelli F, et al. The increasing centrality of robotic technology in the context of nursing care: Bioethical implications analyzed through a scoping review approach. Hindawi Journal of Healthcare Engineering 2021, 1478025.https://doi.org/10.1155/2021/1478025
<論文の概要>
次の3つのreview questionsを検討するために、14本の論文がレビューに含められた。
(1) ロボットが提供する看護ケアにおいて、臨床実践に直接影響を与える倫理的問題は何か?
(2)従来の看護とロボットによる看護を組み合わせた看護師主導のケアモデルには、どのようなものがあるか?
(3)ロボットによる看護に起因する倫理的問題に関連する法的な意味合いは何か?

 ロボットは看護プロセスにおいて二次的な役割を果たすに過ぎず、人とロボットが効果的に協力できるシステムを提案するのは、看護の専門的知識を有する看護師である。看護師とロボットの協働についてのいくつかの理論モデルがあるが、それらに共通しているのは、ロボットは、看護師と患者の治療に対する協力関係を強固にするためのツールとしての活用が期待されている、ということである。しかし、現時点では、ロボットは単なるコミュニケーションツールとして、看護領域に導入されているのみである。
 看護の役割をロボットが担う場合の責任に関する法的枠組みは、明確に定義されていないため、実際にロボットを導入することは難しい状況にある。ロボットが看護の中でどのような役割を担うにせよ、ロボット時代の看護のあり方を真剣に考え、人とロボットが協働するためには,人とロボットの責任の所在をできるだけ明確にする規制の枠組みの構築が必要である。
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 長い論文ですので、ここでの紹介はほんの一部です。興味深いことに、Backgroundには日本のことが書かれています。日本政府は、看護ケアにおけるkey playerとしてロボットの活用を促進していく予定であり、医療分野におけるロボットの活用に関しては、日本が世界のforerunnerになるだろう、と。興味のある方は、一度読んでみてくださいね。
 マンパワーが不足していく時代にあっても看護の質を向上させるために、ロボットをうまく活用することは今後必要になってくるでしょう。患者さんの安全や安楽を守るための方法や枠組みを設計するのは看護師であり、導入後にマネジメントするのも看護師です。ロボットとどのように協働するのかを考えることは、看護を提供する上で私たちが大切にしたいことは何かを考える機会にもなるのかもしれませんね。
(文責 白石)

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