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20歳樹木オタクの、ひとり演習林

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執筆者 三浦夕昇 樹木がとにかく好きな20歳。 日本の樹木や、森のことを、写真と共にゆる〜く解説。森の中を散歩するような気持ちで、お気軽にお立ち寄りください。個性豊かな樹木達が、… もっと読む
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#照葉樹林

春日山のナギ 〜文化的価値が高い外来種をどうすべきか〜

2022年の三が日、奈良県の春日大社を訪ねました。初詣のため……ではありません。春日山に広がる照葉樹林で、樹木の観察をするためです。(そこで観察した樹木たちは、樹種ごとの図鑑に掲載しています) イチイガシ、ケヤキなどの大木が林立する春日大社境内は、関西でも随一の樹木ウォッチングスポット。なんせ三が日だったので、春日大社本殿付近は尋常じゃないレベルの混雑ぶりでしたが、幸いにも境内の外れにある巨木林は人も少なく、のびのびと樹木観察を楽しめました。ひさしぶりに青森から関西に帰省した

樹冠は、アートだ 〜クラウンシャイネスを追いかけて〜

奥入瀬で樹木ツアーをしていたころ、お客さまからこんな言葉をいただいたことがあります。 「植物たちは、人間が抱えているようなしがらみ無しに、自由に生きられて羨ましいですね」 なるほど、おっしゃる通りでございます。人間として生きていれば、次々と面倒くさいタスクが発生します。気遣いだったり、対人トラブルへの対処だったり……。 こういうの、絶対必要だけど気にしすぎると心を病むのもまた事実。 対人(?)関係のモヤモヤに気を揉むことなく悠々と生きる奥入瀬の森の樹木たちを、羨ましく思

樹木図鑑 その⑥ スダジイ 〜宅地の隙間の、深い森〜

高畑勲監督が1994年に製作したジブリ映画「平成たぬき合戦ぽんぽこ」は、東京都西部・多摩地域の開発がテーマになっています。作中に森林破壊の描写があることから分かる通り、かつて多摩丘陵には緑濃い広葉樹林が広がっていたのですが、1950年代〜1970年代にかけての宅地開発で森は激減。現在の多摩丘陵には住宅地が延々と広がっていて、以前存在していた森は”都市公園”という形で断片的にその姿を留めているにすぎません。 こういった諸々の経緯・地域特性を以前から知っていた僕は、”多摩地域は