若き詩人への手紙

リルケというオーストリアの作家が書いた『若き詩人への手紙』という本を知っているでしょうか?

リルケが一人の若い詩人に送った手紙のやり取りを集約した本です。僕が個人的に気に入っている部分を引用させていただきます


『あなたはご自分の詩がいいかどうかをお尋ねになる。あなたは私にお尋ねになる。
前には他の人にお尋ねになった。
あなたは雑誌に詩をお送りになる。ほかの詩と比べてごらんになる、そしてどこかの編集部があなたの試作を返してきたからといって、自身をぐらつかせる。

では私がお願いしましょう。そんなことは一切おやめなさい。

あなたは外へ眼を向けていらっしゃる。だが、何よりも今、あなたのなさってはいけないことがそれなのです。
誰もあなたに助言したり手助けしたりすることはできません。誰も。
ただひとつの手段があるきりです。自らの内にお入りなさい。
あなたが書かずにいられない根拠を深くさぐってください。それがあなたの心の最も深いところに根を張っているかどうかを調べてごらんなさい。もしもあなたが書くことを止めたら、死ななければならないかどうか、自分自身に告白してください。
何よりもまず、あなたの夜の最も静かな時刻に自分自身に尋ねてごらんなさい。私は書かねばならないかと。深い答えを求めて自己の内へ内へと掘り下げてごらんなさい。
それから今度は自然に近づいて下さい。それから人類の最初の人間であるかのように、あなたが見、体験し、愛し、また失うものを言うように努めてごらんなさい。』


リルケの『若き詩人への手紙』は世界中のアーティストや表現者たちに愛され、今も廃れることなく書店に並んでいます。あのマリリン・モンローもリルケに影響を受けた一人で「もしも私が若き詩人への手紙を読まなかったら頭がおかしくなっていただろう」とインタビューで答えています

レディー・ガガの左腕に彫ってあるタトゥーもリルケの言葉です。この本は全ての芸術家、詩人、表現者、そして何よりも苦しんでいる人達へ送られたギフトなのかもしれません

詩のテクニックではなく表現者としての心の在り方を示唆している内容になっています。僕もこの本から詩人としての姿勢を学ばせてもらいました。もしも、この本に出会わなければ僕は外に発信することばかりを考えて、自分自身の内側に響かせることを忘れていたかもしれません

実際のところ、この本は出版することを前提にしたものではなく極めて私的な手紙です。それも無名の若者に、リルケがとことん真剣に向き合っている姿は尊敬に値します

100人のファンを集めるよりも、たった1人に全てを伝えるほうが遥かに難しく、そして遥かに大切なことなのだということを詩人リルケは僕に語りかけているような気がします。



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