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詩集

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2019年9月の記事一覧

ハレルヤ

仲良くなった人たちは
僕の前から去ってゆく
僕はただひとり
荒野をさまよい歩く羊のように
群れに背を向ける
あと、どのくらい
別れを経験しなければならないのだろう
『最後まで耐え忍ぶ者は救われる』
聖書の一説を思い出し
僕は静かに靴紐を結び直す

サボテンの花

あのトゲトゲしい風貌からは
想像もつかないくらいの
綺麗な花が咲いていた
もしかしたら
おれの嫌いなあの人にも
きらりと光る何かが
あるのかもしれない

最初の詩人

そこに名前なんてものは無く
ただ男と女が愛し合っていた
日が昇れば人々は歓喜し
太陽が沈むまでダンスした
そこにいる人々に所有という概念はなく
全ての人が愛の対象だった
雨が降っても雷が鳴っても
宴は続いた
あきれた神様は
彼らに名前を与えた
やがて人々は個に目覚め
境界線が引かれ
「寂しい」という感情を手にした
最初の詩人はこのようにして生まれた

スロウレイン

嫌いになれたら楽なのにね
最後に君は言った
そうだね
ぼくは君のことが大嫌いになったから
いまは楽な気持ちで生きている
誰も悪くない
選んだ相手を間違えただけ
雨は嫌いだ
あの日を思い出してしまうから