NISAのわかりやすい説明

■対象読者と目的
この記事は、株式売買の経験や知識がほぼ無い方々を対象に、NISAを表面的に説明するものです。

この記事を読むことで、以下のことができます。
 ・NISAに関連する用語をなんとなく把握できる
 ・ネットやメディアで見かける誤った言説にある程度気づけるようになる
 ・自分でさらに詳しく調べるためのとっかかりを作れる


1. NISAとは

「NISA」とは、株式売買などの利益が非課税になる口座(またはその制度)です。

NISA口座は、自身の選択する場所(証券会社や銀行など)で、1人につき1口座だけ開設できます。
この口座で株式などを取引きするこで、その利益を非課税で得ることができます。

2. 利益とは

株式などの取引によって生まれる利益は、売買差益配当利益に大別されます。

■ 売買差益
株式の値動きによって得られる利益を、売買差益と言います。
<例>:40万円で買った株を50万円で売った = 10 万円の売買差益

■ 配当利益(注:一部企業のみ実施)
一部の企業は年に数回、事業から得た利益を配当金として株主に還元します。これによって得られる利益を配当利益と言います。
<例>:三菱商事から合計10万円の配当金を受け取った = 10 万円の配当利益

3. 非課税とは

本来、株式の売買は特定口座と呼ばれる口座で行います。
そして、特定口座で得た利益には、約20%の税金が課されます。

一方、NISA口座で得た利益には、この約20%の税金がかかりません。

株式取引で得られる利益はときに大きくなることがあり、この非課税効果がNISAのメリットです。

<例>:40万円で買った株を100万円で売った場合(額面の利益は60万円)
・特定口座:手取りの利益は48万(約20%課税:60万 × 80% = 48万)
・NISA口座:手取りの利益は60万(非課税)

<例>:10万円の配当金を受け取った場合(額面の利益は10万円)
・特定口座:手取りの利益は8万(約20%課税:10万 × 80% = 8 万)
・NISA口座:手取りの利益は10万(非課税)

4. 購入できるもの(個別株と投資信託)

NISA口座では、個別株投資信託を購入することができます。

※補足:NISAの文脈では、投資信託を念頭に置いて議論されることが多いようです。しかし、実際には個別株を買うこともできます。


■ 個別株
各企業が発行している株を、個別株と言います。
<例>:三菱商事の個別株を100株買う。

■ 投資信託
運用のプロにお金を渡して代わりに運用してもらうという商品を投資信託と言います。
<例>:「eMAXIS Slim全世界株」という投資信託を1,000円買う(※)。

※ 「投資信託を1,000円買う」とは、要するに運用のプロに1,000円を渡して代わりに運用してもらうことです。

5. 個別株と投資信託の特徴

以下に、トピック別に個別株と投資信託の特徴を紹介します。

■ 投資金額
個別株への投資は、一般にある程度まとまった金額が必要となります。
これは、個別株の売買は原則として100株単位で行う必要がある(※)ためです。
<例>:1株2,000円の株を買う場合は、20万円が必要(2,000円 × 100株)

投資信託への投資は、一般に少額から行えます(数百円から可能)。
ある程度まとまった金額を一度に投資することもできる一方で、毎月少額を投資していく「つみたて投資」も可能です。
<例>:投資信託に100万円を投資する。/ 毎月、投資信託に1万円ずつ投資していく。

※ 2024年7月、売買の最小単位を100株から1株に変更することを検討するというニュースが出ました。

■ 銘柄選定
個別株は、自分で銘柄(企業)を選んで投資します。
一般に、業績などをある程度理解したうえで投資する必要があると言われます。

投資信託は、自分で銘柄(企業)を選ぶ必要がありません。一度お金を投資すれば、あとは運用のプロが運用します。
ただし、投資信託にはさまざまなもの(※)があり、どの投資信託に投資するかは自分で選ぶ必要があります。

※ 運用方針の異なるさまざまな投資信託があります。たとえば、日本株だけで運用するもの、インド株だけで運用するもの、平均的な利益を狙うもの(インデックス型)、平均以上の利益を狙うもの(アクティブ型)などです。2024年8月時点では、米国株の平均的な利益を狙うもの(S&P 500)や、全世界の株の平均的な利益を狙うもの(オール・カントリー、通称「オルカン」)が人気なようです。

6. 投資限度

NISAは、用途に応じて2つの枠を区別しており、下記のように合計投資限度額や年間の限度額が設定されています。

2つの枠は、両方利用することも、片方だけ利用することもできます。

■ NISA全体
次の2つの枠を合わせて、合計で1,800万円まで投資できます。

■ つみたて投資枠
毎月の投資額を設定して、投資信託につみたて投資する枠です。
年間120万円まで、合計で1,800万円まで投資できます。

■ 成長投資枠
個別株や投資信託に自由に投資する枠です。
年間240万円まで、合計で1,200万円まで投資できます。
※投資信託に投資する場合は、つみたて投資枠とは異なり、枠の限度額の範囲で、自分の好きなタイミングで、好きな金額を投資できます。

<例1>:
毎年120万円(月10万円)を投資信託につみたて投資していけば、15年でNISA口座の限度額になります(120万 × 15年 = 1,800万)。

<例2>:
毎年120万円(月10万円)を投資信託につみたて投資していくと同時に、毎年240万円の投資信託や個別株を購入していけば、5年でNISA口座の限度額になります(360万 × 5年 = 1,800万)。

7. 購入枠の復活

購入したものを売却することで、翌年に購入枠が復活します。

<例>:
成長投資枠で1,200万円の個別株を購入している場合、成長投資枠の限度額に達しているため、それ以上個別株をNISA口座で買うことができません。
しかし、300万円分の個別株を売却(※)すれば、翌年以降に300万円分の成長投資枠が復活し、さらに個別株や投資信託を購入できるようになります。

※ 現在の評価額ではなく、購入時の金額が復活します。たとえば、300万円で購入した個別株を500万円になった時点で売却した場合、300万円分の購入枠が翌年に復活します。なおこのとき、売買差益の200万円は非課税で得ることができます。


<確認問題>
2024年8月時点で、「新NISAで1000万円の損を出した」と主張する人がいたとする。この主張の真偽を述べよ。


■参考情報
・金融庁によるわかりやすい解説

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?