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と亭槌太の塩辛評210822

 歳を重ねると、ある程度の暇ができるので、死ぬまでにいちおう読んでおきたい未読の書籍を読み始めた。
 もちろん、褒めても貶しても、誰も礼金も原稿料もくれないので、誰にも忖度(「そんたく」したことがないので漢字も知らないや)せずに、思ったことをズケズケと、シオヅケのように塩辛く感想を書いている。
 まず、チェックリストにはいつも挙げているのに、実際は読んでいなかったカート・クラークこと、ドナルド・E・ウェストレイクのSF小説 Anarchaos から。

ANARCHAOS, by Curt Clark (Donald E. Westlake) 
(copyright 1967 by Ace Books)
(collected in TOMORROW'S CRIMES: Anarchaos and Other Stories of Fantastic Suspense [Mysterious Press, 1989; as by Donald E. Westlake)
[あらすじ]
 「アナカオス(星)」(本当は「アナーケイオス」と発音。アナキー(無政府)とカオス(混沌、ケーオス)の合成語)というのは、「ヘル(地獄)」と呼ばれる赤い太陽のまわりを公転する惑星で、名前どおり、無政府状態の星である。つまり、無法地帯なので、自分の身は自分で守らないといけない。弱者は殺されるのだ。
 主人公のロルフ・マローンは地球人で、故殺(業務上過失致死)の罪で7年の懲役刑を受けた。「アナカオス星」で鉱業エンジニアをしている3歳上の兄ゲアの助手として働くつもりで出所したが、出所直前にゲアがアナカオス星で殺されたことを知る。ゲアの殺害された状況を知るためと、殺人犯に復讐をするために、ロルフは地球からアナカオス星に向かう。ゲアは賢くて冷静な男だったが、ロルフのほうは喧嘩っ早い。
 アナカオス星に到着すると、ゲアが働いていた「ウルマク企業」の上司だったホルベッド・ホイスラー大佐に会いに出かける。そして、大佐の個人秘書ジェナ・ギルドに接待を受け、一夜を共にする。
 ゲアが殺害された現場に行く途中で、二人組のガンマンに襲われ、つかまって、鉱山の奴隷にされてしまう。4年間も鉱山の鉱夫をしていたが、左手の指がばい菌のために膿んできて、左手首から先を切断される。そのため、奴隷として事務の仕事にまわされ、鉱石運搬トラックで脱出するチャンスを待っている。
 脱出に成功するが、見知らぬ道路でトラックからおりるが、失神する。気がつくと、トーグマンドという猟師に救出されている。トーグマンはロルフに食料を与え、ゆっくり休息させてくれるが、ロルフを自分の奴隷にするつもりらしい。ロルフはトーグマンをナイフで殺して、彼の馬を盗み、モロゲスの街へ向かう。その途中でマリクとローズというガンマンにつかまり、その上司のフェイルの前でこれまでの経緯を話す。
 話しているあいだに、フェイルが商売敵のゲアを殺害したということがわかってくる。「ウルマク企業」の商売敵の「ケミステク企業」の幹部であるインゴア将軍に自分の身の上を話して、そこのガンマンとフェイルとインゴア将軍を素手で殺し、やっと「ウルマク企業」のジェナ・ギルドに再会し、ホイスラー大佐に会う。
 大佐はゲアが残したノートブックを見せられ、「ストライク」という暗号の意味を問われるが、ロルフにはわからない。結局、ロルフは大佐を素手で扼殺し、ジェナと一緒に5つの都会をまわる。
 ロルフはジェナを車に残して、5つの都会に強力な爆弾を設置して、地球に向かう宇宙船に乗る。数時間後に強力爆弾は爆発して、5つの主要都市は滅びるはずだ。アナカオス星はアナカオス星として滅びるだろう。

[塩辛感想]
 ロルフはゲアの殺人犯に復讐するためにアナカオス星へ行ったのなら理解できるが、それと同時に、アナカオス星、もしくは5大主要都市を破壊する目的もあったのかどうかが不明瞭。
 ロルフが奴隷にされるところで、ペースがとまってしまうが、そのあと、ゲアの殺害された状況(とくに動機)が不明瞭。結局、「ストライク」の意味は何だったのか?
 評判ほど感銘を受けない。「SF版悪党パーカー」という印象はなかった。

[付記]
 ウェストレイクがペンネームで書いたSF中編(当時は長編と見なされた)。 
 ウェストレイクが当時のSF界の古臭い有名で有力な(有能とは限らない)長老たちに叛旗を翻して、SF界を長いあいだ離れる直前に書かれたという裏話のほうが面白いかもしれない。[2021-05-25読了]//

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