バ先によく来るおじいさんの話。【日記】

 それは今年の6月ごろ、俺が某ドラッグストアでアルバイトを初めて一カ月が経った頃の話。閉店間際だったかな。
 段ボールを鞄の代わりにカートに乗せていて、見るからに浮浪者って感じのおじいさんが来店した。
 歯ブラシとか数点の商品を会計しているときに、「兄ちゃん、大学生かい?」って聞かれた。
 あぁはい、そうです。って答えて、シフトはどのくらい入れているのかとか、生まれはどこなのかとか、そういうやりとりをいくつかした。

 それからというもの、名前を覚えられ、レジ以外の品出し作業をしているときにも話しかけられるようになった。
 こっちとしては店員なので愛想よく話聞くしかないんだけど、近所にできたホームセンターの長靴がどうだとか、道の駅がどうだとか、しょーもない話ばかりで正直うざかった。

 今日もそのおじいさんは俺に話しかけてきたんだけど、なにやらわざわざ俺を探してきた様子。
 他の店員はみんなこのおじいさんを嫌っている(俺もだけど)のであんまりかまってもらえなかったっぽい。
 いつもと同じように、あはは、そうなんですか?すごいですね。なんて適当に愛想よく返しながら、あることを思った。

 この人、ほんとに一人ぼっちなのかな、って。

 だって考えてもみろよ。俺はただのドラッグストアのバイトだぞ?
 わざわざこんなところまで世間話しに来るか?
 この寒空の中大して買うものもないのにドラッグストアに来て、40以上は歳下のバイトのガキと世間話するなんて馬鹿な話があるか?
 俺だったら情けなくてとっとと死にたくなる。


 こっから完全に憶測だけど、定年してて暇だけどお金もないし友達もいない、そういう人なんだと思う。
 それと同時に、「これはその日暮らしで適当に生きた世界線の将来の俺の姿なのかもしれない」って思った。
 真面目に働いてコツコツ年金積み立てないとこうなるんだって嫌でも思い知らされた。

 俺、結構最近というか昨日まではずっと「真にやりたいことを見つけたらある程度キャリア投げ捨ててでもやろう」って思ってたんだけど、90度くらい捻じ曲げられた。
 ちゃんと将来まで含めて自分が生きていけるくらい稼いで、そのうえで初めて自由にやりたいことやんなきゃいけないんだなって強く思った。
 そういう意味で大学生ってしがらみなくやりたいことをやれる最後の期間だし、まじで貴重なんだなって思った。

 とにかく、あのおじいさんみたいにはならないぞって強く決意した。

 おわり。

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