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医師が製薬会社を信用し過ぎている、という問題

 新薬開発状況や発売情報のみならず、製薬業界の思惑が透けて見えて、医師の立場から見ても非常に面白い、製薬業界専門のサイトAnswersNews。なかなか興味深い情報が多いので、度々考察のネタにさせていただいている。
 今回、個人的に結構衝撃的、いや分かってはいたけど、衝撃的な内容があった。それが下の表だ👇

下記の記事より👇
9割の医師がMRとの面会に価値を感じている、というのも個人的に信じ難いのだが・・・

これから読み取れる結論を先に言っておく。
・30代以上の医者は新たな薬剤を処方する際に、自ら文献を探したり医学書や医学雑誌を読むのではなく、製薬会社から提供される情報を最も頼りにしている。
・なんと添付文書やインタビューフォームよりも頼りにしている。
・しかも、この10年でその傾向は強くなっている。
・医師は経験年数を重ねるごとに、自分で勉強するのではなく、製薬会社から与えられる情報に頼るようになっていくのかもしれない。

ということだ。
 これこそが、最近3年間に見られた「煽り屋医師」大量出没の原因であり、未だに医療業界だけ思考停止から抜け出せない原因でもあるのだろうな、と感じる。
 私の「10年前」は経験年数には一般的30代医師と同じなので、2012年の30代の結果は私的にも非常にしっくりくる。自分はこの時から変わっていない(今は同僚医師よりも専門誌を頼りにしているが)が、そうではない医師が多いらしい。でも、何となく納得できる結果だ。

ちなみに、MRとは(MR認定センターHPより)👇

MR(Medical Representatives)は、医薬情報担当者の略称で、自社医薬品の適正使用ならびに薬物療法の向上に貢献するために、医薬品の品質・有効性・安全性等の情報を扱う医薬品情報の専門家です。専門家として業務を行える知識と資質を認められたMR認定証を保持しています。その多くは製薬企業の営業部門に所属し、一部は人材派遣会社に所属し、その業務を行っている人もいます。

講演会・研究会については
「講演会」は製薬会社主催なので100%「薬の宣伝」である。講演の内容も「薬」にフォーカスされているのでわかりやすい。内容は色々だが、露骨に宣伝するお抱え講演者(もちろん医師)もいる。MRが提供する情報と講演会が提供する情報はほぼ同じとしていい。
「研究会」は医師主導なので、製薬会社が全く関わっていないものから、それなりに関わっているものまである。私の知る限りでは、「研究会」は症例報告や特定の疾患に関する最新の知見が取り上げられることが多く、あまり個々の薬剤を取り上げたりはしない印象だ。ゆえに、製薬会社が関わっている(金を出している)場合は、最初にMRによる薬の宣伝が10分ほどあって、それから本題に入る流れが多い。
「新たな薬剤の処方時に参考にする」となると、圧倒的に「講演会」だろう。
ただ私は、子どもを育てる役割を担うようになってから、研究会や講演会にはほぼ参加しなくなった(そんなものに割く時間はない)ので、最近どうなっているのか詳細は知らない。ただ、配布される案内を見る限りでは大きく変わっていないように感じる。
ところで最近、講演会が以前よりも多い。リモート開催が根付いたからだろう。コロナ騒動によるMR面会制限もあって、むしろリモート講演会に力を入れているようだ。
広い会場を借りなくてもいいし、講演医師へのエサ(謝礼金)や出席医師へのエサ(弁当)をばらまく機会も増えるしな。一石二、三鳥だろう。

ちなみにこの記事の元ネタは👇だ。

 この調査結果によると、10年前でも40代以上はMRが最大の情報源だったようだ。

 そして、新たな処方時に頼りにしている情報もあった。もう少し詳しく見ておきたい。

「直接面会するMR」「web上だけで面会するMR」「研究会・講演会」を情報源とする医師を、MRや製薬会社から「受動的に」情報を得ている、と定義する。
これを年代別に並べると
20代 24%
30代 44%
40代 51%
50代 53%
60代 49%
70代 45%
と、40代、50代が半数を超えている、という・・・
全体集計でも49%とほぼ半数だ。

また、「医学書・専門書」「PMDAや日本医薬情報センターなどのHP」「添付文書・インタビューフォーム」を情報源にして医師を、「能動的に」情報を得ている、とする。
年代別では
20代 34%
30代 23%
40代 18%
50代 16%
60代 14%
70代 19%
と、60代までは年齢とともに、能動的に情報を取りに行かなくなるようだ。「PMDAや・・・」は一応第三者機関の情報なので能動的とした。最も、PMDAを第三者機関としていいのか、という問題はあるのだが。
 全体集計でもわずか18%だった。
 ちなみに、他の項目は受動的とも能動的ともどちらともいえない、とした。会員制サイトに関しては、ほぼ確実に製薬会社の息がかかっているので、受動的に近いとも思ったが、一応外した。

 40代以上になると、老眼が始まって字を読むのがめんどくさくなるのだろうか?医業以外の業務に手を取られて、調べている暇がないのだろうか?
 この結果についてMR認定センターは「医師経験を重ねる中でMRと の接点が増加し、次第にMRへの信頼が高まることが推察された。」とまとめている。が、そうなのか・・・???
 自身の経験からは、医師とMRの関係性には情や利害の入り混じった「何か」があるようには感じる。癒着というほどではないが、少なくとも「信頼」とは違う気がするが。
 結局、調べるのがめんどくさいんだろうな・・・バイアスがかかったものだろうが、姑息なデータ処置を行ったものであろうが、治験デザインに違和感があるものであろうが、MRは一応の答えをくれるからな。まあ、先生方お忙しいでしょうからね、わからんでもないよ。
 学生が以前ならWikipedia、最近なら生成系AIを使って課題を仕上げた気になっているのと同じだ。批判的に対応している気になっているが、実はMRの掌で転がされている滑稽な医師も多いだろう。

 ちなみに今回のアンケートに答えたのは👇に登録している医師2084人である。まあ、要は医師のポイ活サイトである。だから、どこまで信用していいのかわからない。
 でも、自身の実感とそんなにかけ離れていないように感じた。


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